民医連新聞

2023年7月4日

診察室から きっかけとかかわりが生んだ変化

 30代の女性Aさん。糖尿病で10年前から当診療所に通院。金銭面など、以前から気になる患者として、診療所としてもフォローしていました。別の医師とトラブルになり、数年前から私が診察でかかわるようになりました。
 外来通院やインスリンの自己注射も中断しがちで、最高でHbA1c15%台まで上がることもありました。外来での表情を見ていると、世の中の不条理に対して嫌気がさしているような印象でした。
 そんななか、不正出血や生理不順の精査のため婦人科に紹介したところ、妊娠が判明したとの返書が届き、とても驚きました。未婚で1人で育てるということで、大丈夫なのか本当に心配でした。
 早産で出産、赤ちゃんは長めに入院しましたが、母子ともに元気に退院。そのまま2人とも病院へ通院となり、当診の定期通院はなくなったものの、かかわり続けることができました。診療所で職員といっしょに赤ちゃんの沐浴(もくよく)をしたり、離乳食の相談にのったりして、頼りにしてもらいました。
 出産後、私が久しぶりに診療所で顔を合わせた時には、Aさんがつき物が取れたようにすがすがしい顔をしていたのが印象的で、大きな変化に勇気をもらいました。これまで自分自身をなかなか大切にできず、セルフネグレクト状態だったのだと思います。大切な子どもと元気に過ごせるように、自身の治療もがんばり、前向きに変化したことに感動しました。
 また、医療のみの支援に限界を感じるとともに、民医連では単に医療機関というだけでなく、共同組織など、いっしょに患者や地域の人びととかかわることができること、困ったらみんなで考えて、何とかしようと行動できることのありがたさを感じました。
 現在Aさんは他県に引っ越し、直接会う機会はなかなかありませんが、時々元気な連絡が入るとうれしく、励まされています。人は何かのきっかけで大きく変わることもあるので、我慢強くかかわりを続けることが大切だと感じた事例でした。(西澤寛貴、滋賀・こびらい生協診療所)

(民医連新聞 第1786号 2023年7月3日)

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