民医連新聞

2023年6月20日

診察室から 耳を傾け、いっしょにすすむ人に

 日々、小児科外来をしていると、いろいろなことを感じます。
 特に感心するのは、土曜日午前外来の最初の患者の付き添いが父親のときです。まだ午前9時前。この時間に病院に子どもと来ているって、すごいなぁと思います。近年は、父親と子どもの受診だけでなく、祖母・祖父との受診も多いです。ひとり親家庭も増えており、子どもには「何かあったらおうちの人に言ってね」と言うようにしています。ママがいない家庭もあります。両親ともいなくて祖父母が保護者の家庭もあります。だから、「おうちの人」と言うようにしています。
 私は一般外来中心に担当していますが、不登校や心身症の診療もしています。専属の臨床心理士はいませんが、専門医に比べれば比較的時間がとれる外来で、ゆっくり話を聞きます。
 ある父子家庭の男子A君。高校に行けなくなり、留年、中退。父親には怒鳴られるばかりで、ついには引きこもってしまいました。通院の時が唯一の外出、そして、私との会話が唯一の人とのつながりでした。時間をかけて話を聞き、徐々に外に出られるようになり、通信制高校卒業、自動車免許取得、就職にまでたどりつきました。この間、学校選びの相談にのったり、ときには箸の持ち方を教えてほしいと頼まれ、診察室で箸を持ったりしたこともありました。
 高度な専門的なことはできませんが、子どもの声に耳を傾け、ひとつひとつ受け止めていくことで、前にすすんでいけるのだと感じたケースでした。
 最近、通院を始めた中学生のお母さん。子どものことだけでなく、いろいろな話が出ます。先日、「この時間、いいですね! 聞いてもらってすっきりします」と言ってくれました。心配事や悩みなどを話せる場があり、いっしょに解決しようとしてくれる人がいることは大切なのだと、あらためて感じました。慌ただしい日々の外来ですが、ちょっとしたことに耳を傾けていこうと思います。(三上真理子、石川・城北病院)

(民医連新聞 第1785号 2023年6月19日)

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