副作用モニター情報〈595〉 新型コロナウイルス感染症治療薬レムデシビルによる薬剤性肝障害の副作用
レムデシビル(ベクルリー点滴静注用100mg®)は、入院が必要な新型コロナウイルス感染症の患者に対する抗ウイルス薬です。抗体医薬品がオミクロン株以降耐性を持たれてしまったため、ほぼ使えなくなっています。一方、本薬はウイルスRNA鎖の伸長を停止させる機序により、ウイルス増殖を防ぐため、BA2やXBBなどの亜型にも有効性を保持していると考えられています。そのため、入院患者の抗ウイルス注射剤として唯一の選択肢になっている薬剤です(内服薬は別にありますが)。
症例)50代 男性
COVID-19にて入院。レムデシビル投与2日前から、ベタメタゾン6mg/日を開始している。
投与1日前から、ワーファリン錠2.5mgを再開した(肺炎、酸素投与などの記載はなし)。
投与2日前のASTは57、ALTは28で、若干高値であるが、投与に問題のあるほどではなかった。
レムデシビル投与開始。初日200mg、2日目は100mg(標準用量)。
開始して2日後にAST270、ALT310に上昇。レムデシビル投与による肝障害を疑い、3日目以降の投与を中止した。ベクルリー投与中止後、INRが高値であったため、ワーファリンを中止し、ケイツーを使用していた。
投与中止5日後、AST61、ALT197に改善していた。
その後、ワーファリンも再開し、その他定期服用薬剤も再開したが、肝機能障害は現れなかった。そのため、レムデシビルを被疑薬とした。
* * *
レムデシビルの国際共同試験(第3相)のうち、AST増加3.4%、ALT増加2.3%が確認されています(トータル症例数1062例)。DDW-J2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリングでは、今回の症例は肝障害型に分類されています。全日本民医連に報告されているレムデシビルの副作用は合計11例ですが、そのうち9例が肝機能障害でした。レムデシビルの添付文書には「肝機能障害があらわれることがあるので、投与前及び投与開始後は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること」と記載されています。実際に肝機能障害を起こすケースが報告されていますので、定期的な血液検査を行いましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1783号 2023年5月22日)
- 記事関連ワード
- 副作用副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)検査