いつでも元気

2023年5月31日

きらきら発電

文・安長建児(編集部)
写真・五味明憲

太陽光発電1号機ときらきら発電のメンバー。左端が水戸部医師、右端が広幡事務局長、右から3人目が髙山さん

太陽光発電1号機ときらきら発電のメンバー。左端が水戸部医師、右端が広幡事務局長、右から3人目が髙山さん

 宮城民医連の泉病院(仙台市)では、来年5月のリニューアルに向け建て替え工事が始まっています。
 その屋上に、NPO法人「きらきら発電・市民共同発電所」が太陽光発電の設置を計画中で、全国からの寄付を呼びかけています。

 きらきら発電は、若林クリニック(仙台市)前所長の水戸部秀利医師と泉病院の退職者を中心に、2015年に立ち上げた市民電力です。
 発端は2011年の東日本大震災で起きた福島第一原発事故。女川原発のある宮城県でも脱原発の声が大きくなり、翌年7月から宮城金曜デモがスタート、水戸部医師も「女川原発を再稼働するな」とデモへの参加を続けました。
 そんな中、「原発に頼らず自分たちの手で電気を作ろう」と思い立った水戸部医師は、市民レベルでも事業が可能な太陽光発電を民医連の元職員に呼びかけました。
 水戸部医師、泉病院元事務長の髙山摩耶子さん、元医事課職員の広幡文さんの3人が発起人となり、15年にNPO法人「きらきら発電・市民共同発電所」が発足。理事長を水戸部医師、事務局長を広幡さんが務めます。きらきら発電のネーミングは、広幡事務局長のお孫さん(当時7歳)のアイデアです。

市民の力で発電

 きらきら発電の設立には大勢の人が賛同、約3000万円の建設基金が集まりました。「銀行に預けると、場合によっては原発や石炭火力発電の関連企業などに融資されるかもしれない。でも、私たちに貸していただければ自然エネルギーで発電し、役割が終わったらお返しする。その趣旨に快く協力していただきました」と広幡事務局長。
 集まった基金を使い、15年9月に1号機となる出力50 kWの太陽光発電を設置。場所は震災で津波の被害を受けた仙台市若林区の海岸地帯(井土浜)で、解体住宅の一角を借りています。
 以降ほぼ毎年、仙台市や塩竈市の保育園をはじめ、亘理町、多賀城市の震災被災地や、若林区の個人住宅の屋根を借り、8号機まで設置。水戸部医師は「1号機が一番思い入れがあります。立ち上げた当初は、こんなに順調にいくとは思いませんでした。今度は新しい泉病院に、30 kW規模の太陽光発電を設置したい」と言います。

震災で遅れた建て替え

 築40年の泉病院はリニューアルに向け、今年1月から建て替え工事を開始。建て替えは震災前から法人の宮城厚生協会が検討していました。法人の理事長(当時)だった水戸部医師が中心となり、新病院の青写真まで描けていたところに震災が。同じ法人の長町病院(仙台市)が損壊し、その建て替えを優先せざるを得なくなりました。
 泉病院の長谷部誠院長は「東日本大震災の経験から、災害時の停電への備えとして住民は太陽光発電の有用性を認識しています。私も病院の屋上で太陽光発電ができないかという思いはずっとありました」と話します。
 「しかし、建物の構造上の問題で設置できるかどうか分からない状況でした。また、せっかく設置しても建て替えとなれば無駄になる。そのような理由で、なかなか実現できませんでした」と振り返ります。
 広幡事務局長は「自家消費型太陽光発電」※1 を設置し、最近の電気代高騰に悩む病院などを支援できたらと考えていました。「泉病院の建て替えが始まったので、今度こそ設置しようと決まりました」と言います。

目標額は500万円

 仙台港には、地球温暖化の原因となる石炭火力発電所「仙台パワーステーション」が17年から稼働しています。
 50年前の研修医時代から、周辺地域の環境問題に取り組んできた水戸部医師は、パワーステーション稼働差し止め訴訟の副団長として裁判も闘ってきました。
 「仙台港にはさらに2つの発電所が建つ予定です。そちらは石炭ではなくバイオマス※2 を使いますが、大量の木材をカナダや北米など海外から持ち込み燃やす仕組み。地域の自然エネルギーで発電する世界の流れに逆行する事態が仙台市で進んでいます」と指摘します。
 昨年から家庭用発電以外の固定価格買取制度※3 がなくなりました。水戸部医師は「市民電力の事業は難しい局面にありますが、工夫しながら続けていきたい」と語ります。
 きらきら発電は泉病院屋上に設置する太陽光発電への寄付を呼びかけています。広幡事務局長は「目標額は500万円で、期限は今年9月。3月末で191人の方から370万円のご協力をいただいていますが、頭打ちになっています。全国のご支援をよろしくお願いします」と訴えます。

※1 自家消費型太陽光発電 太陽光発電した電気を自社内や家庭内で優先的に使用する方式
※2 バイオマス 動植物から生まれた再利用可能な有機性の資源。主に木材、生ゴミ、紙、動物の糞尿、プランクトンなど
※3 固定価格買取制度 再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。


泉病院屋上に太陽光発電を

・寄付の振込先
郵便振替の口座記号番号
02270-9-138855
特定非営利活動法人きらきら発電
※ ゆうちょ銀行以外からは
ゆうちょ銀行 店番 818 普通
口座番号 0267527
・問い合わせ 
広幡さん(℡070・2010・3777)
メール hirohata3888@outlook.jp

いつでも元気 2023.6 No.379

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