副作用モニター情報〈588〉 ジャディアンスによる亀頭炎について
ジャディアンスは、SGLT-2阻害薬に分類される2型糖尿病治療薬です。最近では慢性心不全の適応承認されたことから、その使用機会が増えています。
今回は、ジャディアンスに起因すると推察される亀頭炎の副作用を紹介します。
症例)40代男性 身長162cm・体重80kg
糖尿病(DM)の疾患あり。血糖値196mg/dl・HbA1c7.4%でジャディアンス10mgを開始。
服用開始56日後:血糖値150mg/dl・HbA1c7.0%で副作用は見られず。
服用開始119日後:血糖値134mg/dl・HbA1c6.8%でDMは改善傾向だったが、陰茎が膿(うみ)で癒着していたため、ジャディアンスは中止。DPP-4阻害薬のトラゼンタへ変更となる。
中止70日後:症状は改善傾向。その後も副作用の訴えはなかった。
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ジャディアンスの性器感染症の発生頻度は女性の方が多く報告されていますが、男性の例も一定数報告されています。使用頻度も増えており、男女問わず注意が必要となってきました。発生時期は幅ひろく、服用後数週間で出ることもあれば、数カ月先で発生するケースもあります。また、再発率が高く、くり返し発症しやすいと言われています。
ジャディアンスは腎臓においてグルコース再吸収の約90%を担っているSGLT-2を阻害することにより、近位尿細管からのグルコース再吸収が減少し、尿中へのグルコース排せつが促進され、血糖値を低下させます。糖が尿中に排せつされることから陰部での細菌が増え、感染症を起こしやすくなっているものと考えられます。
副作用の対策としては、尿量を増やすために十分に水分をとることが大切です。また、陰部を清潔に保つことです。できればトイレの後は陰部を洗浄することを勧めます。また、入浴の際は湯船につかることも効果が高いと言われています。
今回はジャディアンスの症例を報告しましたが、他のSGLT-2阻害薬とも発生頻度に差はないので、同じような注意が必要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1776号 2023年2月6日)
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