民医連新聞

2014年1月20日

被災地発 南相馬の市立病院へ週1回のリハ支援 長町病院(宮城)

 宮城厚生協会リハビリテーション科は東日本大震災後、日本リハビリテーション医学会東北地方会による南相馬市立総合病院(福島) への支援活動に参加。東北大学病院リハビリ科肢体不自由学分野、いわてリハビリテーションセンターと三施設共同でリハビリ科医師のボランティア診療を毎週 一回実施しています。長町病院リハビリテーション科の金成(かなり)建太郎医師の報告です。

 南相馬市立総合病院は同市中心部にあり、福島第一原発から二三km、沿岸から三kmの場所 にあります。近隣の介護施設は津波にのまれ、多数の職員と利用者が亡くなりました。地域が地震、津波に加えて原発事故に襲われる中、震災直後から多大な苦 労をしながら中核病院の機能を担ってきました。
 南相馬市の中心部は、二〇一一年九月まで緊急時避難準備区域でした。避難指示区域の再編で大半の地域で制限はなくなりましたが、小高区はいまだに避難指示解除準備区域で一時的な立ち入りしか認められていません。
 昨年一二月の調査で放射線量は〇・一~〇・三マイクロシーベルト/時(〇・八八~二・六ミリシーベルト/年)でした。線量は下がっていますが、年間一ミリシーベルト以下にはなっていません。
 同市の震災前の人口は七万人を超えていましたが、震災直後に約一万人まで減少。徐々に回復していますが、若年人口の流出が大きく、高齢化率は震災前の二五・九%から震災後は三二・二%へ急上昇しています。
 放射線への不安や利便性の点で、県外に避難した子育て世代が戻っていないことが大きく影響していると推測されます。医療と介護の職員も流出して入院病床 や介護入所定員も減少する一方、相対的に高齢者の医療・介護のニーズは増えるという大変な状況です。病院では、特に脳卒中や誤嚥性肺炎で入院が必要な患者 さんの割合が増えているそうです。

困窮する医療と介護

 南相馬市を通るJR常磐線は現在も分断されています。長町病院のある仙台市と南相馬市は約八〇km離れており、車で片道二時間かけて診療に通っています。
 リハビリ科医師の診療業務として、主に入院リハビリ治療施行患者の併診を行ってきました。具体的には、脳卒中患者の病態評価・予後と方針の提言、嚥下機 能障害の評価(嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査)と方針の提言、装具の適応についての評価などです。
 入院している患者さんに家族状況をうかがうと、「震災前は三世代で同居していたのに、震災後に子どもや孫は県外に避難したまま」ということが多々あり、高齢者だけがとり残されている状況を実感させられます。
 もともと医療体制が脆弱な地域で、回復期リハビリテーション病棟はなく、介護施設でリハビリ治療が行われていました。その介護施設も被災して受け入れが 厳しい状況です。回復期リハが必要な患者さんは遠方への紹介となり、当院でも転院を受け入れて対応しています。
 また、医療後の転院や施設入所ができないため、やむを得ず自宅退院となるケースが増えています。市内の各病院では、急きょ在宅医療チームを立ち上げて対 応しています。リハビリ医として在宅医療まで介入したいところですが、週一回のボランティア診療ではなかなか困難です。
 今回の震災では、ただでさえ医療崩壊の危機に瀕していた東北地方の沿岸部が津波に襲われました。特に福島県では原発事故の影響による若年人口の流出が大きく、医療と介護の体制はいまだ困窮しています。
 震災後、多くの団体・個人が診療支援を行っています。民医連では、岡山協立病院からも言語聴覚士が来ていました。今後も所属組織の枠を超えて、多面的なサポートが必要になると思われます。

(民医連新聞 第1564号 2014年1月20日)

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