副作用モニター情報〈408〉 ペラミビル水和物注射液による重篤な副作用症例
ペラミビル水和物注射液(商品名:ラピアクタ点滴静注液バッグ)は、他の抗インフルエンザウイルス剤と同様に、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害、感染細胞の表面から子孫ウイルスが遊離する過程を抑制して、ウイルスの増殖を抑えます。
内服や吸入が困難な状態の症例にも投与が可能な製剤として、2010年1月に販売が開始されました。
海外では、米国において「緊急時使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)」が2009年10月に発行されました が、2010年6月に終了しており、その後は販売されていません。現在、ラピアクタ点滴静注液バッグが販売されているのは日本と台湾だけです。
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過去1年間で、当副作用モニターには2例の白血球減少が報告されています。
症例I)80代、女性。クレアチニンクリアランス:96ml/min
数日の経口摂取困難での脱水・意識障害のため、他院より搬送、入院となる。体温38.0℃。インフルエンザA(+)。認知症があり、吸入・内服継続が困難と判断され、ペラミビル300mgを投与。投与翌日;白血球3870。投与3日後;白血球7720と回復。
症例II)幼児、男性。(因果関係:不明)
投与前日)38.6℃の発熱・嘔吐2回あり。他院にて、タミフル・フロモックス処方。
投与日)体温38.0℃。嘔吐繰り返し脱水。胸部XP所見より肺炎合併を疑い入院となる。
前医処方薬中止。白血球6080。ペラミビル170mgを2日間投与。
投与2日後)ミノペン点滴静注開始
投与4日後)ミノペン点滴静注からセフィローム点滴へ変更。白血球2040。
投与12日後)回復し退院。白血球5420。
一般に、インフルエンザ等のウイルス性疾患では白血球が減少する傾向がみられますが、臨床試験において、1~5%未満の頻度で、多くはペラミビル水和物注射液投与2日後(小児では投与1日後)に白血球減少(多くはクレード3)が報告されています。
今回は、当モニターに報告された2症例とも入院中に投与されていますが、今後外来で投与される可能性を考えると、肝機能検査値の著しい上昇や黄疸を伴う肝機能障害がペラミビル水和物注射液投与の翌日に報告されている点も含め、充分な注意が必要です。
また、高齢者や腎機能低下患者への投与量の調整にも注意しましょう。
(民医連新聞 第1564号 2014年1月20日)
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