民医連新聞

2014年1月6日

60周年記念事業 海外視察報告 ヒトを大切に教育と医療で独自に発展 キューバ

 全日本民医連は昨年、創立六〇周年記念事業の一つとして、デンマーク、韓国、キューバの三カ国を視察しました。海外で見えてきたものは―。各コース参加者のリポートです。

医療視察と革命の歴史を訪ねる旅

 「キューバ? そんな危ないトコ行って大丈夫ですか?」―。後輩の懸念にも、視察後の今ならこう答える。「大丈夫、安全だよ。モノはないけど、とてもユニークな国。ぜひ行ってみて!」。

低コストでも良質の医療

 キューバはカリブ海の真珠にも例えられる東西に長い美しい島国。もとはスペイン領で、その後独立するも米国の支配下にあった。一九五九年の革命後は社会主義化し、以来半世紀、米国の経済制裁を受け続けている。
 幾度もの経済・軍事危機をくぐり抜け、独自の進化を遂げた結果、近年は特に教育と医療に活路を見出す異色の国となった。マイケル・ムーア監督の映画 「シッコ」でも有名だが、実際のところ、医療の質はどうか? 今回は複数の施設を見学したが、特に印象的だったのはクリニックだ。
 医師と看護師の二人以外には、カルテと診察台しかないが、一〇〇〇人ほどの地域の患者を担っている。クリニックは全土に配置され、予防と医療教育、慢性 疾患管理を行う。これは低コストで比較的良質の医療を実現する政策上、重要な起点であった。
 家庭医が多く、ハイチなど近隣諸国の医療過疎地域へも派遣している。休暇や疾病などクリニックの医師が不在時の「代診専門医」までおり、層の厚さとその 発想に、藤末衛会長や本田宏医師(済生会栗橋病院)も驚いていた。医療処置を必要とする場合は、複数の科があるポリクリニコへ送られる。ポリクリニコは六 時間までの経過観察や小手術も可能で、歯科やリハ、また代替医療としての鍼灸やハーブ療法まであった。
 さらに高度な医療が必要な場合は、総合病院や専門病院へ送られる。キューバ国民であれば、全て無料で必要な医療を受けられる。

医薬品を開発し輸出

 近年、キューバは医薬品を開発して輸出し、また人材教育を有料で他国へ提供するようになっ たという。連帯しながらも自国を養いかつ発展する、その逞しさに感心した。キューバには不必要なモノはない。しかしヒトを大切にし、教育を受けた国民と医 療で国土を彩り、今も一〇〇〇万人以上が住む革命の国である。
 民医連にも六〇年の歴史があり、今までの良き伝統がある。引き継いで、大事なところを変えずにおくためには、戦略的に日々変わっていかなければならな い。キューバの柔軟性と生命力こそ、現代の日本、そして民医連が見習うべき点だと思う。末筆ながら、私のような若手の視察参加を許して下さった先輩医師、 そして職員の皆様に深謝する。

(村上純一、京都民医連中央病院・医師)


 

日程…11月2~9日
参加人数…19人
コース…診療所、総合病院、ワクチン研究所、バイオテクノロジーセンター、ラテンアメリカ医科大学、チェ・ゲバラゆかりの地など

(民医連新聞 第1563号 2014年1月6日)

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