副作用モニター情報〈570〉 SGLT2阻害薬の副作用のまとめ(第2報)
SGLT2阻害薬は、尿中に糖を排出して血糖値を下げる薬です。日本で最初のSGLT2阻害薬は、2014年4月に発売され、現在は6成分7製剤が使用されています。発売から約8年が経過、当モニターにも副作用情報が集積されてきました。
そこで、今回は当モニターに寄せられた副作用情報を紹介します。なお、副作用モニター情報〈470〉(2016年12月5日付)で第1報が出されています。
発売から2022年2月現在までに214件の副作用報告が寄せられています。主なものとして、性器感染症(陰部掻痒(そうよう)感、陰部カンジダなど)53件、皮膚症状(湿疹・痒みなど)43件、尿路感染症(頻尿・排尿痛など)37件、脱水・脳梗塞など10件、そのほか嘔気(おうき)・悪心(おしん)などの消化器症状も報告されています。多くは非重篤ですが、脳梗塞など重篤な例も報告されています。
脱水にともない脳梗塞を発症したと考えられる症例を紹介します。
症例)60代女性
開始日:DPP-IV阻害薬服用中、血糖コントロール不良でダパグリフロジン5mg(被疑薬)開始
開始約6カ月後:BUN/Cr=12.7/0.56=22.7、Ht39.5、UA3.5
開始約7カ月後(中止日):左半身麻痺(まひ)症状あり受診しラクナ梗塞と診断。BUN/Cr=15.6/0.52=30、Ht41.6、UA3.2、脱水にともなう脳梗塞発症を考え被疑薬中止。1週間後に退院、退院後目立った麻痺はなし
中止約1カ月後:BUN/Cr=12.2/0.43=28.4、Ht33.7
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SGLT2阻害薬が脳梗塞の発症数を増加させるエビデンスはありません。しかし、利尿作用にともなう脱水により、脳梗塞など血栓・塞栓症の発現に至る可能性を念頭におく必要があります。また、一部のSGLT2阻害薬は、大規模臨床試験で慢性心不全や慢性腎臓病の予後改善効果が認められました。そのため、今後は糖尿病患者だけではなく、慢性心不全や慢性腎臓病といった、利尿剤を併用し体液量減少を起こしやすい患者への処方が、増加する可能性も考えられます。特に高齢者や老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合への投与は、より慎重になる必要があるでしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1757号 2022年4月4日)
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