民医連新聞

2022年2月22日

相談室日誌 連載513 身寄りなくても排除されない 本人らしく生きる支援(新潟)

 地域包括支援センターにいるとさまざまな相談を受けますが、最近特に多いのが「身寄り」問題です。身寄りがないのでアパートの契約ができない、就職ができない、施設に入所できない、手術のときに立ち会い人を求められた、孤独死が怖い、などです。
 そして、ケアマネジャーや生活保護ケースワーカーなどの支援者たちが、シャドーワーク(業務外の仕事)をして、身寄りのない人を支援しているのが現状です。また高齢になると「身寄り」問題が顕在化してきますが、若者にも「身寄り」問題はあります。虐待やネグレクトなどはもちろん、さまざまな理由で家族と疎遠になっている人が多いのです。
 そうなると、就職時の身元保証や家族からの経済的な支援が得られない若者は、職業選択をしていく時間的、精神的な余裕がありません。大学時代に奨学金制度を利用していると、卒業後は数百万円という多額な借金を背負って、職業生活のスタートラインに立たざるを得なくなります。結果、「夜のしごと」を現実的に選択肢として想定するのです。
 われわれ民医連の倫理綱領をひと言で表せば「無差別・平等」です。はたして現場レベルでそれを実現できているのでしょうか。身元保証人がいなくても、入院や入所できる体制が整っているのでしょうか。医療同意をケアマネや民生委員に求めることはないでしょうか。
 「身寄り」問題は、すでに社会的な問題です。民医連が先頭をきって「身寄り」問題にとりくみ、他の病院や施設のロールモデルになるべきだと思います。
 「身寄り」がないことは、もはや「例外」ではなく、「第2のスタンダード」であるとの考えのもと、地域全体で「身寄り」問題を直視し、解決に向けて行動する必要があります。そして「身寄り」問題は、排除の問題であり、権利擁護の問題です。
 まず、「身寄り」がなくても居住・医療・介護・就労などから排除されないような支援や仕組みが必要とされます。「身寄り」がなくても「本人らしく生きる」をささえていきたいと考えます。

(民医連新聞 第1754号 2022年2月21日)

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