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民医連新聞

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屋上に教習所!? 「自動車運転評価」を病院で 長野・健和会病院

 2021年10月、当院の屋上に、電動カートを用いた自動車教習所が完成しました。自動車の運転再開をめざす、高次脳機能障害の患者が主に利用しています。コロナ禍で外出が難しい入院患者も安心して利用できます。

 当院のリハビリセンターでは、コロナ禍以前から自動車運転評価を年間約60件、自動車教習所と協力して行っています。
 自動車教習所は大学生の長期休暇の期間は予約がいっぱいで、評価が受けられないことがありました。さらに教習所には新型コロナウイルスの感染拡大地域から来る学生もいて、感染のリスクも。入院患者の外出も制限されるなか、「院内で教習所のような運転評価ができないか」という医師の福村直毅さんの言葉がきっかけで、屋上に電動カートの教習所を設置することになりました。

図面の作成からスタート!

 「以前から院内で実際に運転ができる設備をつくれないかと考えていた」という福村さん。運転シミュレーターはあるものの、実際に運転するのとでは感覚が異なるため、実車評価は欠かせません。
 しかし自動車教習所では疾患のことを知らない教官が対応するため、高次脳機能障害の影響を評価できません。リハビリ職員は、疾患についてわかっていても、自動車運転の教官資格はありません。そこで「院内で安全に実車と同様に評価できたら」と考えて、電動カートを使った教習所のアイデアにたどり着きました。
 「飯田市は坂が多いこともあり、自転車の運転は大変。電動カートを運転してみたら、車の感覚に近かった」と福村さん。「リハビリの訓練室でも試したが、人もいて危ない。屋上の広さならできるだろうと、図面を起こすところから始めました」。

実車に似たコースを安全に

 屋上の教習所には信号機や横断歩道、S字、クランクなどもあります。道や横断歩道は、職員の手づくり。作業療法士の野尻一寿さんは「8人で3日間ペイントして完成した。患者も手伝ってくれた」と話します。信号機6台と標識は購入。100万円ほどしましたが、ほかはすべて手づくりです。
 広さは実際の教習所の10分の1、道幅は3分の1。電動カートは最大時速6kmで、自動車の10分の1の速さとなるため、実際の自動車と同じ体感で運転できます。職員も歩いて追いつける速さなので、実際の車体間隔や注意力も確認でき、安心です。

どの病院でも設置できるように

 手づくりの教習所で昨年12月現在3人の患者が電動カートによる評価を受けたほか、6人の患者が運転を試しました。野尻さんは「シミュレーターよりも患者の反応がよく、受け入れがいい」と言います。福村さんは「自動車運転評価を実施している医師から『うちでもつくりたい』と言ってもらっている」など、他の医療従事者からの反応も良好です。
 課題もあります。自動車教習所とも連携しながら、どの部分なら病院が評価を担えるか、基準をつくっていく必要があります。また、シミュレーターは運転技能を点数化するため数字で判断ができますが、電動カートによる運転は数値化できないため、判断基準をつくり、どの病院でも教習所を設置できるようにデータを集めていくことも重要です。

*   *   *

 交通の便が豊かではない地域だからこそ、自動車の需要は高くなっています。運転が不安になっても第二の交通手段として、電動カートの利用を考えるきっかけになるかもしれません。(代田夏未、事務)

(民医連新聞 第1751号 2022年1月3日)

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