副作用モニター情報〈565〉 新型コロナウイルス感染症予防薬、治療薬の早期承認、特例承認について
新型コロナウイルス感染症予防薬・治療薬の承認は日本の「条件付き早期承認制度」(2017年10月施行)、「特例承認」にもとづいて行われています。条件付き早期承認制度にもとづいて臨床試験を行っているファビピラビル(アビガン)はいまだ承認には至っていません。
新型コロナワクチン、レムデシビル、カシリビマブ/イムデビマブなどは、「特例承認(国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品)」扱いです。(薬機法第14条3)によって承認され使用されています。
米国にも代替エンドポイントにもとづく医薬品の承認制度である「迅速承認制度」があり、重篤疾患における新薬の速やかな入手を可能にする一方で、問題が生じてきています。
制度開始から約20年経過した2010年に、迅速承認により市販されていた医薬品がFDA(米国食品医薬品局)により承認取り消しとなる初めての事例がでています。2021年にはアルツハイマー病治療薬・米Biogen社の「Aduhelm」(アデュカヌマブ)に関して、諮問委員会は有効性が不確かであり副作用のリスクを考慮すると、「健康上、有益性をもたらすというエビデンスが不十分」と指摘しました。「アミロイドβ(Aβ)を減少させる」という代替的な評価項目で迅速承認をしたことについてFDA長官代理が審査プロセスを明らかにするよう文書を公表する事態になっています。
日本で特例承認された新型コロナウイルス感染症予防薬・治療薬の多くは、現時点では有用と考えられています。ただ、国外で承認されている医薬品を、そのまま早期承認、特例承認で使うことは、上記のような問題が生じる可能性は十分にあり得ます。
医薬品は、製薬企業が利潤を追求して販売する商品である以上、私たちは患者の立場に立って厳しく医薬品評価を続けていくことが必要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1749号 2021年11月15日)
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