副作用モニター情報〈563〉 シベンゾリンによる心室細動
シベンゾリンコハク酸塩錠(先発名:シベノール錠)はVaughan-Williams分類でIa群に分類される抗不整脈薬です。当モニターにも、これまで尿閉や低血糖、催不整脈作用による心不全など、重篤な副作用が報告されています。今回は致死的不整脈の心室細動に至った症例が報告されました。
症例) 90代女性、体重43kg
慢性心房細動などで近医よりシベンゾリンコハク酸塩錠300mg/日が処方されていたが、胸苦や呼吸苦を訴えて救急搬送された。入院時の心電図でQRS幅の増大、心室調律の波形あり、気管挿管実施、ドパミン投与開始。薬剤の副作用によるうっ血性心不全が疑われたため、シベンゾリンの血中濃度を測定したところ、2928ng/mLと治療域(基準値70~250ng/mL)を大きく
上回っていた。重度腎機能障害(Ccr:6.4mL/min)による血中濃度上昇が考えられたため、ラシックス注投与で排泄促進をはかったところ、中止後1日目には正常波形に戻った。
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本剤では、高齢の腎機能障害患者において血中濃度上昇を伴う心停止が発現し、致命的な経過をたどった症例が報告されています。添付文書には、腎障害に応じて投与量を減じること、高齢者では少量(例えば1日150mg)から開始すること、投与中は臨床検査を定期的に行い、必要に応じて適宜血中濃度を測定することと記載されていますが、目安になる用量設定がされていません。投与量の設定には十分注意が必要ですので、適量であるかを確認するために定期的な血中濃度測定を実施しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1747号 2021年10月18日)
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