第44期第3回評議員会方針
2021年8月22日全日本民医連第44期第3回評議員会
はじめに |
はじめに
6月7日、全日本民医連は結成68年を迎えました。第45期には結成70年を迎えます。拡大し続けている貧困と格差をコロナ禍が直撃するなかにあって、無差別・平等の医療と福祉の実現を一貫してめざす組織として、存在意義を増しています。
第45回総会は、44回総会が打ち出した民医連綱領改定からの10年を踏まえた、2020年代の4つの課題実践の到達点を確認し、次の発展方向を議論する大切な総会となります。
秋に行われる衆議院議員選挙は、政権を選ぶ選挙です。第2回評議員会では、コロナ禍の教訓を踏まえ、医療と介護、社会保障の抜本的拡充と平和な日本への転換、いのちの平等を実現していくことが決定的に重要、と位置づけました。総選挙で希望に満ちた社会への一歩をすすめましょう。
第3回評議員会は、全会一致で第3回評議員会方針を決定、2021年1月から6月の決算報告、45期役員選考理事会方針を承認しました。
全県連で大いに実践をすすめましょう。
第1章 新型コロナウイルス感染症へのこの間のとりくみと今後の感染対策
(1)感染再拡大の局面と危機的な政府のコロナ対策
新型コロナウイルス感染症の収束のめどは立っていません。世界の感染者数は2億1000万6573人、死者440万3645人、国内の感染者数は125万7816人、死者1万5581人となりました(8月21日現在)。
政府は、第4波の猛威のなかで発出された3度目の緊急事態宣言を6月21日に解除、沖縄県を除きまん延防止等重点措置に移行しましたが、東京を中心に感染再拡大がすすみ、わずか3週間で東京都に緊急事態宣言を発出しました。まさに菅政権の大失政と言えます。国内の感染者のうち68%、死亡者の74%が第3波以降に発生しています。
感染の波が拡大するたびに、前回以上の犠牲者が生まれています。これはGOTOトラベル、イートを昨年末まで継続、年明けも2月末に緊急事態宣言を近畿で前倒し解除、4月、6月にリバウンド傾向にあるにもかかわらず同様に宣言を関東で解除し、検査体制の強化を怠ったことによりウイルスの変異株への置き換わりがすすむなど、すべて過去の経験を踏まえず、経済優先政策に固執した結果でした。
今日、変異株の増加、感染再拡大のなかで東京オリンピック強行という矛盾したメッセージが出されるなか、歯止めがかからず増加している人出に加え、ワクチンの接種計画の大幅な変更と遅れ、日本は、「制御不能」と評されている第5波の渦中にあり、深刻で危機的な局面を迎えています。
(2)第2回評議員会以後の感染状況と全日本民医連のとりくみの特徴
①第4波の特徴~急速な感染拡大と医療崩壊の進行
第4波では、近畿圏、とりわけ大阪府では、一気に医療がひっ迫しました。2回目の緊急事態宣言解除の前からすでに感染が拡大、4月11日に62%だった病床使用率は、2週間後には93%と急激に増加、重症病床は5月15日の段階で108%、もともと大阪府が病床確保計画で確保した重症病床数に照らすと150%と完全に医療崩壊が起こりました。あふれた重症患者が軽症中等症の医療機関や介護施設に留め置かれ、保健所のフォローアップ機能や救急搬送体制も破綻し、自宅療養者は1万5000人を超え、必要な入院治療の中止・延期が発生しました。こうした医療崩壊のもとで、各地で「いのちの選別」を迫られる事態が頻発しました。医療崩壊による、適切に医療が受けられない事態が死者数の増加の一因です。二度とくり返してはならない事態です。
宿泊療養施設での急変、死亡例も発生しました。保健所業務のひっ迫のなか、医療管理体制の不備、劣悪な食事などの実態も明らかになりました。
都市部からの人の移動により、例外なく全国に感染が広がったことも第4波の特徴でした。
②改正感染症法にもとづく病床確保要請
病床ひっ迫の地域で、改正された感染症法にもとづく知事からの病床拡大の要請が頻繁に行われました。大阪では、知事名で200床以上の病院に一律に、「軽症中等症病床総数10床以上」「休日・夜間においても確実に受け入れ体制を確保すること」が緊急要請され、「正当な理由なく当該協力に応じなかったときは、感染症法第16条の2(協力要請等)に定める措置に協力するよう『勧告』を行う場合があります」との通達が出されました。個別の医療機関の状況を無視した要請の根拠となる改正感染症法16条の2については廃止し、行政・医療機関が協力しあい体制をつくり上げるよう求めていきます。
また多くの感染症対策にかかわる団体が、患者の人権尊重の立場から行政罰の導入に反対しました。あらためて民医連は、感染症法の行政罰の廃止を求めます。
③1年半を超える緊張、深刻な医療・介護従事者の現状
感染しない・させないのリスク、行動制限、生活制限が長期間におよび、強いストレスが続いています。
労働政策研究・研修機構は、エッセンシャルワーカーを対象とした「新型コロナウイルス感染症の感染拡大における労働者の働き方の実態に関する調査」結果を、7月9日に発表しました。
職場で感染リスクを感じた労働者は、医療で8割弱、福祉・介護で7割弱、精神的負担の増加は、福祉・介護は7割強、医療7割弱、緊張度増加は、介護・福祉、医療とも6割強と高い比率となっています。自身が、誹謗(ひぼう)・中傷を受けた割合は、エッセンシャルワーカー全体で4・2%ですが、医療7・4%、福祉・介護5・4%と他の業種より相対的に高い結果が示されました。
感染拡大とその長期化が、心身に対して大きな負荷となっている実態を示しています。
④緊急事態宣言下で東京オリンピック・パラリンピックの開催は認められない
全日本民医連は、感染拡大、くり返される医療崩壊のもとで、2月以降5度にわたり、東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める声明を出してきました。
7月8日、日本政府、東京都、組織委員会などは感染が再拡大し、4回目の緊急事態宣言が東京に発令されるなか、東京オリンピック・パラリンピックの開催を決定しました。
緊急事態宣言は、「政府が、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす事態が発生していると認識したために発出」し、目的は、感染を抑止し国民のいのちと暮らしを守るためのものです。
国民にあらゆる面で自粛を要請しながら、オリンピックだけ開催を強行するのは、完全に矛盾したメッセージであり、国民の感染対策への協力は得られません。世界的にデルタ株が猛威を振るっているさなかに、海外から数万人の外国人が来日し開催すれば、東京を起点としたさらなる感染拡大のリスクは高まります。
入国する選手を周辺と隔離する「バブル方式」は内部で感染者を出し、また、感染者がバブルの外で移動していることも明らかとなりました。無観客でも7月1日から8月18日の期間で、オリンピック544人、パラリンピック58人、計602人の感染が確認されています。
全日本民医連は、東京パラリンピック中止の決断を日本政府、東京都、組織委員会などが行うことを求めます。
⑤生活困窮のさらなる拡大と増え続ける大企業の内部留保
感染対策の効果が不十分なもと、経済活動の停滞、後退が長引き、生活困窮は深刻さを増しています。
2月の生活保護の申請件数は、1万7000件余りと前年同月より1309件増え、6カ月連続で増加しました。前年と比較した増加率では、ことし2月は8・1%と大きくなっています。2月に生活保護の受給を新たに始めた世帯は1万6518世帯と、前年同月と比べて1475世帯、9・8%増。生活保護受給世帯は全国で163万7143世帯と、前年同月より0・3%増加しています。新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、再就職が難しいことなどから追い詰められる人が増え、感染拡大、経済活動の抑制のなかで、さらに生活苦が深刻化するおそれがあります。
全日本民医連が先に発表した「2020年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」では、20県連から40事例が報告されました。いずれも経済的に困窮し、高額な保険料が支払えず、保険証がない、あるいは保険証を所持していても医療費の窓口負担の支払いが困難で、受診を我慢した結果、手遅れとなり死亡に至った事例です。今回の調査では、コロナ禍の影響を受けて手遅れ死亡となった事例が8件(20%)報告され、その主な原因は、「就労収入の減少」4件、「失業」3件などです。もともと経済的にぎりぎりの生活を送っていた人が、コロナ禍により就労収入が減少、あるいは絶たれ、いっそうの経済困窮に陥り、治療の中断や受診控えなどにより死亡に至っています。
2021年5月の完全失業者数は211万人となり、前年同月に比べ13万人増加、16カ月連続の増加となりました。完全失業率(季節調整値)は、前月から0・2ポイント上昇し3%となりました(労働力調査2021年5月分結果)。雇用悪化傾向は続いています。
国民生活の苦難が続く一方、大企業の内部留保は、増え続けています。2021年1月から3月期における資本金10億円以上の大企業の内部留保は469兆円と過去最高額を更新しました。経常利益は12・7兆円と、比較可能な09年以後では二番目の高水準となっています。一方で売上高は減少しており、利益と内部留保の増加の主な要因は、労働者の解雇、雇い止めなどが大きく影響しています。
⑥全日本民医連のとりくみ
全日本民医連は、昨年2月に新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、毎月対策本部会議を開催し、四役会議や理事会と連携しながら、全国的な状況の把握、専門家との連携や情報の発信、政府・厚労省から発信された情報の集約と分析、県連・事業所への情報発信などを行うことなどを役割としてとりくみました。
第2回評議員会以降の活動では、年末からの第3波、そして3月以降の第4波の感染拡大のなかで、2月には「新型コロナウイルスの院内クラスター対策について」の全国学習会、特に感染が広がった大阪、兵庫の事業所への支援、開始されたワクチン接種にかかわる情報収集と交流などにとりくみました。
2月14日、政府はファイザー社の新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン「コミナティ」を特例承認しました。5月21日には、武田/モデルナ社製とアストラゼネカ(AZ)製の新型コロナワクチンについて、特例承認しました。民医連は第2回評議員会の時点では、職員への情報提供を十分に行うこと、任意の接種であり、職員自身の意思を尊重すること、接種後の副反応などに十分注意することなどの方針を確認しました。
3月中旬からは高齢者への接種も開始されましたが、急きょ開始された職域接種などのなかで、中小零細企業、64歳以下の基礎疾患のある方や65歳以上の地域住民が接種できない状況や、在宅患者や一人暮らしの高齢者などで取り残されるケースも生まれています。
政府のワクチン需要と供給の見通しが甘く、供給ができない事態を招き、自治体、医療機関では、大混乱を来たしています。必要なワクチンを現場の体制に合わせて供給することに万全を尽くすのが政府の責任です。供給の正確な情報の公開を強く求めていきます。
ワクチン接種の混乱のなかで、歯科医師によるワクチン接種について4月26日に厚労省の事務連絡が出されました。ワクチン接種が必要な人に速やかに行われることの重要性を受け止め、歯科部では歯科医師のワクチン接種へのかかわりについての見解を出しました。また、内閣総理大臣、厚生労働大臣宛に要望書を提出しました。
今回の新型コロナウイルスに対するワクチンはいずれも新しい作用機序のワクチンで、効果や安全性について明らかになっていないこともあります。接種がすすむなかで、厚労省の検討会にワクチン接種後の死亡例も報告されていますが、ほとんどが死亡とワクチン接種との因果関係は不明とされています。ひきつづき、因果関係の解明を求めると同時に、広く被害の救済が行われるようとりくみをすすめます。民医連事業所で把握した重篤な副反応などは副作用モニター制度「新型コロナワクチン職員投与後調査」など活用し、報告をすすめていきます。
(3)今後のとりくみの方向
①第5波を最小限の被害にとどめる運動を強めよう
東京オリンピック・パラリンピックが強行されることで、関東圏を中心とした人出の増加に伴う感染再拡大が全国各地へ広がり、緊迫した事態となっています。
医療が届かず、いのちが失われる事態を出さないよう、今できることをする、希望者全員へのすみやかなワクチン接種、検査の充実、生業(なりわい)と生活が成り立つ万全の補償、たった一度で終了した持続化給付金、家賃支援給付金の再給付は急務です。すべての医療・介護事業所への財政支援・減収補てんの実行をひきつづき求めていきます。
「いのちの相談所」、食糧支援、学生支援、女性のための相談会など、多彩な支援活動が各地ですすめられています。コロナ禍による環境変化のなかで子どもたちの権利を守る運動も必要です。個人、団体、自治体、共同組織などと連携して、困難を抱える人すべてを対象としたとりくみとして発展させましょう。
医療にかかれない「格差」が広がるなか、すべての医師、医療関係者に呼びかけ、実態の告発など、いのちの差別を許さない行動を起こしましょう。
②各地域、事業所の連携をさらに強め、体制の整備を県連として行いましょう
地域の感染状況を冷静に分析し、県連、法人、事業所でBCP(事業継続計画)作成などにとりくみましょう。小規模事業者や介護事業所へのICT(感染防止チーム)、ICN(同看護師)の派遣などの支援体制を、県連的に明確にしておきましょう。
関連して、MMATで災害対応の基礎と、この間の各地災害対応の経験などをまとめた冊子の発行と、災害対応の基礎知識、事業所でのBCPの作成にとりくむための研修を行います。災害対策とあわせ全県から参加し、学びあいましょう。
市中感染が広がるなか、事業所内で感染対策を強化してもなお、家庭内も含めどこでも職員が感染者、濃厚接触者になり得る状況になっています。感染を早期に発見し、対策を講じクラスター化を防ぐことが重要です。この間の事例からは、出退勤時の更衣、休憩、食事などの際のマスクを外した会話や、仕事を離れた飲食の場での濃厚接触が原因として指摘されています。流行地では、PCR検査の定期的実施も行政に要望していきましょう。
医系学生の実習受け入れ時は、本人の意思を尊重したワクチン接種やPCR検査実施などで学ぶ権利を補償しつつ、感染をひろげないとりくみをすすめましょう。
新型コロナウイルスの後遺症についての報告が蓄積されています。今後、民医連としても対応が必要になると予想されます。
③すべての事業所で職員のいのちと健康を守るために
6月5日に開催された「コロナ禍での職員のヘルスケア交流集会」は約300人の参加で成功しました。尼崎医療生協のケース・スタディの教訓として、メンタルヘルスケアサポートチームの迅速な設置、各地で運用された職場復帰の書式を活用した職員の健康状態の評価、全国からの支援の発揮などが共有されました。各県連・事業所のとりくみも交流し、日頃からの職場づくりの大切さ、疲労の原因の教訓化、災害時に職員の健康を守りぬくとりくみが文化として定着していることが確認されました。ひきつづき、職員のいのちと健康を守る活動を第一義的課題とし、『新型コロナウイルス感染症(COVID―19)に関する職員のヘルスケア指針』にそった体制づくりと、セルフケア、ピアサポート、適度な休息を呼びかけ、トップ管理者の職員を守るとりくみと、管理者集団も団結しお互いをささえあいましょう。
第2章 いのちと暮らし優先の日本をめざして~情勢の特徴
(1)菅自公政権の3つの危険性
①コロナ禍の反省・総括なしの社会保障解体~全世代型社会保障改革・骨太方針2021
骨太方針2021は、主要課題として「感染症の克服」を打ち出し、「国、自治体が医療機関に感染症患者受け入れ、スタッフ確保を要請・指示できるように法整備する」「都道府県を超えての広域的連携」「国産ワクチンの開発・生産体制の強化、承認手続きの迅速化」などを掲げています。ここには、新型コロナウイルスの感染を拡大し、医療崩壊を招いたのは、国が医療費を削減し、感染症への病床など体制整備を怠り、人材育成をしてこなかったことへの反省はありません。保健所の体制強化は一言も触れられず、感染症対策にあたる職員体制不足の改善もなく、コロナの感染拡大前に策定された公立・公的病院再編の方針の修正も明示されていません。コロナ患者を積極的に受け入れてきた公立病院の実績と役割をみれば、この方針は撤回しかありません。2009年の新型インフルエンザの流行後に厚生労働省の専門家会議が提言した内容(医療体制の拡充、PCR検査の体制整備、保健所などの感染症対策を担う専門機関の強化など)を政府が実行してこなかったことが、新型コロナウイルスの対応を後手に回らせました。同じ失敗をくり返すことは明白です。
さらに、菅政権は、新型コロナウイルス感染症により、本来ゆとりがあるべき医療や公衆衛生がいかにぜい弱な状況になっているのか明らかになったにもかかわらず、先の国会で、コロナの教訓を生かすどころか医療を壊す2つの法律、消費税を財源に病床削減を推進する法律、75歳以上の高齢者の窓口負担を2倍に引き上げる法律の採決を強行しました。
介護報酬2021年改定は、プラス改定が実現したとはいえ(プラス0・7%、うちコロナ対策分プラス0・05%)、現場の困難を打開する上ではまったく不十分なものとなりました。抜本的な処遇改善をはかるにはほど遠い内容です。一方で、人手不足をICT機器の導入などによる「効率化」で対応する方針や、「自立」支援型介護(政府が掲げる介護保険制度からの「卒業=自立」をめざす介護)のさらなる追求、利用者のデータ提出・活用を求める「科学的介護」の推進など、重大な内容が盛り込まれています。介護の本質や専門性に対する一面的な評価、事業所の管理・統制の強化につながりかねない危険性があることに注意を払う必要があります。
第8期(2021~2023年度)の介護保険料の全国平均(基準額)は6014円となり、初の6000円台となりました。医療費などと合わせ、高齢者の負担がいっそう増大しています。
8月より、補足給付(低所得者を対象とした施設・ショートステイの居住費・食費負担軽減制度)の見直しがはじまりました。資産要件の見直し(預金額基準の引き下げ)によって補足給付の対象から外されれば月額7~8万円の負担増になります。さらに所得段階によっては施設で月額で2万2000円の食費の引き上げが実施されます。見直しによって入所、ショートステイの利用が困難になる事態が生じることは明らかです。低所得者(本人・世帯とも住民税非課税)をターゲットに、しかも国民全体がさまざまな困難を強いられているコロナ禍のもとで実施することに道理はありません。
財務省(財政審)は、次期の制度の見直しに向けて、利用料の原則2割負担化やケアプランの有料化、施設多床室での居住費徴収の拡大など、さらなる改悪を提言しました。一方で、コロナ禍での介護事業所の減収補てんについてはいっさい言及されていません。
②立憲主義・民主主義の破壊と人権軽視
政府は、コロナ禍で、感染再拡大が起こるなか、感染者が急増し確実に死者が広がるとわかっているなか、新型コロナウイルス対策の専門家の度重なる指摘を受け止めず、「中止」か「延期」とはっきり民意が示されても、東京オリンピック・パラリンピックを強行しました。「森友、加計、桜を見る会」に続き菅首相の長男による総務省との癒着、その追及から逃れるために、公文書改ざん、破棄、虚偽答弁などで行政をゆがめ、民主主義にとって大切な行政の公平性や透明性を破壊しています。
民医連の行った調査でも、女性への多面的な被害や困難さが浮き彫りとなりました。ところが、個人の尊厳を守りジェンダー平等を求める声が広がるなかでも、自民党はJOCの森元会長の女性蔑視発言を許し、戦前の家制度の名残である夫婦同姓の強制に固執し、選択的夫婦別姓制度の導入さえ拒んでいます。またLGBT理解増進法案の議論で、自民党は「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」と言う文言を追加することについて「差別の内容がわからない」「訴訟が多発する」など反対し、党内会合では「道徳的にLGBTは認められない」「LGBTは種の保存に背く」などの発言も報道されています。すべての人が個人として尊重され、法の下において平等であることは、日本国憲法においても保障されているものであって、性的指向や性自認による差別が許されないことは当然のことです。
先の国会では、個人情報保護を壊すデジタル監視法、国民を監視し財産権を侵害する憲法違反の土地利用規制法の採決強行をし、基本的人権の制限にも踏み込んでいます。
③戦争する国づくりの具体化・憲法改正への固執
菅首相は5月3日の憲法記念日に、憲法を変えるとのメッセージを発しました。コロナ感染拡大は「緊急事態」にあたるとし、これに対応して憲法に「緊急事態条項」を盛り込む必要があるとしています。しかし大規模災害や感染症のまん延など非常事態への対応については、すでに十分な法律が整備されており、憲法に緊急事態条項を創設する必要はありません。これは自らのコロナ対応の失政を、改憲論議にすり替えるごまかしです。
また、今国会での「憲法改正国民投票法」の改定を機に、菅首相は、憲法9条に自衛隊を明記することで、アメリカとともに自衛隊が海外で戦争できる内容を盛り込んだ、自民党改憲4項目の改憲論議をすすめる決意を公言しました。自民党の改憲案では、「必要な自衛の措置」と書き込むことで、日本がアメリカとともに海外での武力行使を自由にできることをねらっています。4月の日米首脳会談では、台湾海峡などでの紛争に対して自衛隊がかかわることを宣言し、政府はその際、「集団的自衛権」の行使を認めた安保法制=戦争法を適用できると答弁しました。日本が海外で武力行使に乗り出す危険性が大きくなっています。
多くの国民は、平和の憲法、憲法9条を変えることを望んでいません。5月1日の共同通信の世論調査では、日本が戦後75年間海外で武力行使しなかったのは「9条の存在があったから」と肯定的に受け止めている国民が67%と多数です。中国の領海侵犯などには軍事的対応ではなく、国際法にもとづいて平和的な話しあいで解決をめざすことが求められます。
(2)平和と人権・公正を求める国内外の運動の前進
コロナ禍であっても自己責任を強いられるなか、菅政権の危険な政治に、「おかしい」と気づき、さまざまな声を上げる人たちが増えています。
検察庁法改定案に続き入管法改定案が止まりました。3月17日、札幌地方裁判所は同性婚を認めないのは、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると判断を下しました。
世界でも、コロナ禍で貧富の格差が拡大するなか、「より良い社会を後世に残すため、私たち富裕層に課税しなければ」と富裕層による団体が創設されました。また、アメリカ、イギリスなど先進国で法人税率の引き上げや、富裕層への課税で再分配機能の転換をめざす政策が広がっています。自由と民主主義を暴力と弾圧をもって壊す暴挙がミャンマー、香港で起こっています。「クーデターによる軍事政権は認めず、選挙で選ばれた政権を認めろ」という国際的な連帯、非暴力のたたかいが不屈に続いています。
安倍政権、菅政権がすすめてきた安保法制=戦争法強行など立憲主義の破壊から日本を憲法が生きる社会へ転換することをめざす「市民と野党の共闘」は前進し、4月には3つの国政補欠選挙、再選挙すべてで野党統一候補が勝利。7月4日投開票された東京都議会議員選挙の結果は、自民党は過去二番目に少ない議席となり、自民党と公明党の国政与党の合計議席も過半数に届きませんでした。一方で東京オリンピック・パラリンピックの中止を求めた野党共闘をすすめた議席は、自民党を上回る結果となりました。
第3章 連帯を強め、45期へ向けて前進を
私たちは、過去にない試練と厳しさのなかで、連帯し、団結して奮闘してきました。ときどきの場面で地域の要求から出発し、地域とともに歩み、地域にささえられるなかで、民医連の役割と存在意
義を深め踏ん張ってきました。44期のこれまでの互いの奮闘をたたえあい、これからの半年間、確信を持って実践し、展望を切り開く第45回総会にしましょう。
コロナ禍のさまざまな変化は、3つのスローガン(○綱領改定10年のあゆみを確信に、「医療・介護活動の2つの柱」(以下、「2つの柱」)を深化させ、医師確保と経営改善でかならず前進を ○共同組織とともに地域の福祉力を育み、人権としての社保運動を旺盛にすすめ、健康格差にタックルしよう ○共同の力で、安倍政権による9条改憲ストップ! 核兵器廃絶、地球環境保全運動の飛躍を)の実践をいっそう切実に求めてきました。
45期へ向け、医師分野と経営分野の前進をつくり出していくことは、さらにいっそう重要性を増しています。コロナ禍があぶりだした社会保障費削減をもくろんで効率優先でつきすすんできた日本の医療、介護、社会保障のぜい弱さ、深刻な格差と貧困の広がり、ジェンダー問題の現実など、私たちのとりくみをいっそう前進させていくことが必要です。
コロナ禍はいとも簡単に「いのちの選別」をつくり出しました。高い倫理観と変革の視点を持つ職員の育成が、民医連の展望をつくり出すうえでいっそう重要です。人権Cafeのとりくみや日常の医療・介護活動のなかで「2つの柱」の深化、共同のいとなみとしての医療と介護を通じ、人権を大切にした職場、民医連へと前進していきましょう。
45回総会までの半年間、第15回学術・運動交流集会など全国的な会議・交流会が多数予定されています。学びあい、知恵と経験を寄せあい45期の方針をつくり上げていく半年間です。継続する新型コロナウイルス感染症へのとりくみ(第1章)とともに、第1に、「いのちを優先し、憲法を生かす社会をめざす運動」、第2に「健康格差にタックルし『2つの柱』の深
化。受療権を守るたたかいと経営」、第3に高い倫理観と変革の視点を養う職員育成、「医師の確保と養成の前進」をすすめていきます。
(1)「いのち」優先、憲法を生かす社会をめざして
①主権者、医療・介護・福祉の従事者としていのちの現場から、総選挙に参加しよう
1)政治を変えて医療・介護を充実させる要求の実現を
コロナ禍の1年半、私たちは不安と我慢の日々を送りながら、患者の受療権、利用者の生活、仲間の健康を必死で守ってきました。そのなか日々の医療・介護に政治が深く影響し、安全・安心の医療・介護を提供するためには、それを保障する政治に変える必要があると痛感してきました。
総選挙は、日本の政治を担う政権を私たちが選択できる選挙です。第2回評議員会では、「今回の総選挙をコロナ禍の教訓を踏まえ、医療と介護、社会保障の抜本的充実と平和な日本への転換、いのちの平等を実現していく決定的に重要な機会」として全日本民医連の立場と方針を明らかにし、①新型ウイルス感染症、自然災害にも備えられるなど危機に対応できるゆとりある医療・介護の提供体制をつくること、②国民に必要で十分な医療・介護を充足できる提供体制とすること、③財源は国民負担ではなく国と大企業が応分に負担すること、④感染症の病床を充実させ、専門家や検査体制を十分に確保すること、⑤公立・公的病院を充実させること、⑥公衆衛生の拠点である保健所数、保健師数を抜本的に増やすこと、などを最低限の課題として求めました。これらを実現する大きな機会が、秋の総選挙です。
第16回理事会で、「総選挙へ向けた全日本民医連の医療・介護の要求=実現したい政策」を決定し、「2021年総選挙にあたっての全日本民医連の要求」を「民医連新聞」号外として発行しました。市民連合の掲げる15項目の要求とともに、私たちが掲げた政策が実現される政治を求めます。
この間の私たちの運動を通じて、「いのち」「暮らし」「生業(なりわい)」で多くの団体や個人との連帯が広がっています。医療機関や介護事業所を守れの運動、エッセンシャルワーカーの処遇改善など、民医連の社会的な発信は地域の中で共感を広げてきました。共同をさらに広げていくことは私たちの大切な役割です。
予定候補者との懇談、選挙政策への反映の申し入れなどをしていきましょう。予定候補者や政党へのアンケートなどにとりくみ、職員や共同組織に結果を知らせましょう。
2)学習と話しあいを通じてひとりひとりの「思い」を行動に
今回の総選挙の持つ重要性を理解していきながら、それぞれの判断で投票に行くとともに、よりよい医療・福祉・介護と平和な日本を実現するため、周囲の人にも伝えていきましょう。
すべての職場、共同組織で学習し、地域の医療・介護関係者、フードバンクや相談活動などでつながりができた団体などとも話しあい、共同の力を強めていきましょう。
地域の中で市民と野党が力を合わせることが決定的に重要です。民医連への期待も高いものがあります。県連を中心に創意工夫し、力を出しましょう。
「民医連新聞」号外の学習と合わせて、すべての職場、職種で国への要望、願いを可視化しましょう。事例をもとにした学習、人権Cafeなどと結び現場から声を上げましょう。
②改憲ノー、辺野古新基地建設ストップ、日本の核兵器禁止条約の批准を
1)改憲発議を許さない世論と運動を
菅政権は、憲法改正国民投票法改正を強行し、緊急事態条項、自衛隊の憲法9条への明記など、戦争する国づくりをめざす自民党憲法改正案の審議をねらっています。
同法は3000万署名を軸とした市民の強い反対の声、立憲野党のがんばりにより、実に8国会にわたって継続審議を余儀なくされてきたものです。菅内閣のなりふり構わぬ策動で改憲手続法改正は強行されましたが、自民党改憲案の危険性を知らせ、総選挙で改憲をもくろむ議員が少なくとも3分の2未満にすれば、参議院に続き衆議院も改憲発議ができません。かならず実現しましょう。
この数年間、改憲案審議を阻み続けてきた私たちの運動の力を確信に、菅政権による9条改憲の動きを許さず、改憲策動を断ち切るため、ひきつづき「改憲発議NO!」署名のとりくみを強め、市民と野党の共闘、総選挙で立憲野党の勝利をめざしましょう。
2)辺野古新基地建設ストップ、米軍・自衛隊強化に反対を
玉城沖縄県知事は、辺野古新基地建設の設計変更申請に対して、不許可の判断を検討しています。現時点の政府試算でも9000億円もの莫大(ばくだい)な税金が使われるだけでなく、環境破壊と基地機能の恒久化につながるものであり、全日本民医連は、設計変更不許可とする判断を支持し、辺野古新基地建設の即時断念を求めます。政府は基地建設に戦没者の遺骨が混ざる土砂の使用を検討していますが、戦争犠牲者を冒涜(ぼうとく)する行為は許されません。
2022年1月にたたかわれる名護市長選挙に、オール沖縄の立場に立ち、辺野古の新基地建設には反対するとして、岸本洋平氏(現名護市議)が、出馬を表明しました。全国の民医連の仲間が勝利へ向けて沖縄民医連と連帯することを呼びかけます。
憲法違反の安保法制=戦争法の具体化がすすむなか、アメリカの戦争への協力体制の進行、日米両政府による基地増強の押しつけがすすみ、オスプレイ配備など軍備の増強が全国で広がっています。鹿児島県西之表市馬毛島には米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練基地建設が計画され、これに反対する市民の運動は基地建設反対の市長再選へと発展しました。全国各地の米軍基地自衛隊基地増強、強化に反対する運動を他の団体、住民と共同してすすめましょう。
3)核のない世界をめざして、核兵器禁止条約へ日本政府の批准を
2021年原水爆禁止世界大会は2021年1月核兵器禁止条約が発効し初めての大会となりました。テーマは「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を―人類と地球の未来のために」です。オンラインの条件を生かし、民医連は全国から3145人が参加しました。
核兵器禁止条約の発効で人類は核兵器のない世界に大きな一歩を踏み出しました。条約を力に世界では運動が広がっています。一方、被爆国でありながらこの条約に背を向ける日本政府に対し、署名・批准を求める署名運動が広がっています。民医連の目標は100万筆で、現在11万筆の到達です。署名・批准を求める意見書決議をした自治体は588自治体(2021年7月20日現在)に達しています。核兵器禁止条約に参加する政府をつくり、非核・平和の未来を実現するため、幅広い人びとと共闘の輪をひろげましょう。
7月14日、広島高裁は「黒い雨」訴訟で国と広島県、広島市の控訴を棄却し、被爆者勝訴の判決を下しました。国と県、市は上告を断念し、7月29日、判決は確定しました。判決は「黒い雨」に打たれたと訴えた84人全員を被爆者だと認め被爆者健康手帳の交付を命じました。また直接打たれていなくても放射性微粒子が混入した水、食物を摂取して内部被曝による健康障害を受けた人も認定。原爆被害者だけでなく、核実験による被爆者の救済にもつながるものです。
反核医師の会への参加、医師の入会をあらためてすすめます。
③東京電力福島第一原発事故から10年、原発を廃止し、再生可能エネルギーに転換する原発ゼロ法案実現と福島の真の復興へ
3月5日に原子力規制庁の発表で、原子炉収納容器の上部蓋(シールドプラグ)に2011年3月の原発事故で陸上に降った23・4倍もの桁違いのセシウムが付着していることも明らかになるなどアンダーコントロールとは程遠い現実です。4月13日、菅内閣はトリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出を福島県民への説明も合意もないまま、閣議決定しました。トリチウム以外の放射性物質が2次処理でどれだけ除去できるかは不明です。5月25日の住民登録数でみると、2011年3月11日との比較で、8万3285人がふるさとに戻ることができていません。私たちは福島の現実を学び、忘れることなく原発ゼロをめざします。
1)汚染水海洋放出の中止を
福島県民の合意もなく、安全確認もできない汚染水海洋放出の中止をめざし、世論と連帯を強めます。
2)原発ゼロ法案成立、真の福島の復興へ連帯を
署名を軸とした原発ゼロ基本法案の成立をめざす大運動をひきつづき推進していきます。12月18日には「東京電力福島第一原発事故から10年、今こそ福島の真の復興と原発ゼロの未来へ! 12・18全国大集会@オンライン」が開催されます。全国から参加し原発ゼロ法案成立、真の福島の復興へ連帯を強めましょう。
3)気候危機打開・再生可能エネルギーへの転換を
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第6次評価報告書を公表し、「地球温暖化が速まっており、『パリ協定』、IPCC『1・5度特別報告』の目標達成の緊急性が増している」「地球温暖化の原因は、地球環境を犠牲にして突きすすんできた利潤追求・経済活動」「人間の活動が主要な要因であった可能性が極めて高い」と強く指摘しました。
気温は産業革命前から仮に1・5度上昇すると、熱波8・6倍、豪雨1・5倍とさらに高まり、異常気象の頻発によりいのちの危機が広がります。報告書は1・5度以下に抑えるために2050年ころまでに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとし、大気中の二酸化炭素をさらに削減することが必要としました。
世界の多くの先進国ではそこへ向けた目標設定がすすんでいますが、日本政府が7月に公表した次期エネルギー基本計画案は、「石炭火力発電」「原子力発電の存続」のふたつに依存するものとなっています。石炭火力発電の全廃は気候危機打開にとって不可欠です。いのちと共存できない原発への固執は亡国の道です。気候危機打開へ向けて、省エネ、自然破壊・乱開発を許さない規制を定めた再生可能エネルギーへの飛躍的な転換で、脱炭素の日本へ踏み出し、温室効果ガスの削減目標を抜本的に引き上げる運動を強めていきます。
(2)健康格差にタックルし、「2つの柱」の深化、受療権を守るたたかいと経営
①コロナ禍の医療への影響と今後の課題
1)コロナ禍の医療への影響
44期は新型コロナウイルス感染症の感染拡大のなかで、感染対策の強化や日常生活でのさまざまな制限などの著しいストレスをうけ、医療・介護従事者、民医連の職員としての使命感から必死にその役割を果たしてきた期間でした。
各地の民医連事業所はいち早く発熱患者の受療権を守るために奮闘しました。これは、人権を重視し無差別・平等を貫く民医連綱領の実践です。「2つの柱」、「多職種協働」、「共同のいとなみ」など、それらをあらためて考え、実践を通じ深めてきました。その意味ではこの1年間、私たちは民医連職員として大いに鍛えられたとも言えます。
地域の諸団体との連携も強まり、民医連内外の病院間でコロナ患者の受け入れのため定期的に協議する仕組みをつくった事例、地域の病院が連携して行政と交渉にあたった事例、医師会との協力がすすんだ事例などが報告されています。
新型コロナウイルス感染症への対応は、行政や経済界も含めたさまざまな利害関係を持つ諸団体との連携が欠かせません。その際に、医療や介護の実情だけでなく、地域の人びとの暮らしにも通じている民医連の存在は、大きなものがあります。また共同組織や地域の人びととの連携を深め、支援し、支援される関係を築くことが、私たち自身の力になり、地域の健康を守ることにもつながることを、多くの場面で経験しました。民医連内外の団体や地域の人びとと連携し、より良い社会の実現をめざすことは民医連綱領の立場です。
「2つの柱」の実践、多職種協働、地域連携をキーワードにコロナ禍に立ち向かっていきましょう。
一方、新型コロナウイルス感染症に対応するため、感染対策や人的体制、施設面での制約などからやむを得ず、他の診療が制限されたり、さまざまな人権や倫理にかかわる問題にも直面しました。医療資源の限界による、高齢や認知症であることを理由とした治療機会・選択肢の制限、面会制限とそれによる病状説明、意思決定に影響が出るケース、最期の時間の過ごし方など工夫し対応してきましたが、それらを倫理的にふり返る余裕はほとんどないのが実情です。民医連の掲げる人権が尊重された「共同のいとなみ」としての医療・介護の実践がどうであったかふり返りの機会が必要です。減少しがちな職員間のコミュニケーションの改善も求められています。
また、共同組織の対応や地域でのさまざまな活動も、一部制限せざるを得ない面もありました。各地で諸団体との連携も得て、コロナに関する相談会など地域活動が行われましたが、対象となる人たちの数からするとまだまだ不十分であり、困窮して声を上げられない人たちには支援が届いていない可能性があります。
2)コロナ後の医療活動を見据えて
コロナ禍で、患者・医療機関は、「外来患者数やウオークイン患者は減少」「小児科などでは大幅に外来数が減少」「HbA1cも悪化している印象、アルコール依存症やアルコール性肝障害が増加」「高齢者のフレイルなどが危惧される」「市の健診や組合員健診も減少、健診時期が大幅に遅れている」など多岐にわたる影響を受けています。公益財団法人日本対がん協会は、5つのがん検診(胃、肺、大腸、乳、子宮頚)の状況を調査し、「2020年1年間で受診者が、前年比30・5%減となり、この減少者数に2018年度のがん発見率から推計すると約2100件のがんが未発見になっている可能性がある」と発表しました。受診控えの中から、手遅れのガンを出さない対策をはじめとして、疾患の悪化を防ぐためのアプローチを強めるとともに、アウトリーチをさらに強化し、患者・住民の受診行動の変化をとらえた対策も検討しましょう。
パンデミックの収束後、医療活動そのものが変化を強いられる場合もあります。例えば、感染症を中心とした小児科外来のあり方、長期処方の常態化、電話やオンライン診療の拡大、処方せん枚数の減少、フレイルの進行、歯科医療の役割などです。何が変わって何ができなくなったのか、新しい分野は何なのか、旧来の方法論にとらわれることなく、情報収集や経験交流をすすめて今後の方針を立てる必要があります。医療活動をすすめる際に地域を意識することは、治療や予防の面からも社会的処方の面からもますます重要であり、そのためにはHPH(健康増進活動拠点病院)が有効なツールです。
県連医療活動委員長会議を12月に開催します。この間のコロナ禍での民医連の実践を「2つの柱」の視点でふり返り、くみ取るべき教訓や課題を整理、コロナ後の社会を展望しつつ医療・介護活動のあり方を検討し、45期に向けた経験交流を重視したいと思います。
地域包括ケアのなかで中小病院の役割は極めて重要です。基幹型の臨床研修病院ではない中小病院での医師の確保と養成、リニューアルや経営の課題、SDH(健康の社会的決定要因)やまちづくりなど医療と経営の好循環の課題などをテーマに、中小病院院長会議を病院委員会で準備します。
5月17日、最高裁判所第1小法廷は、「建設アスベスト東京・神奈川・京都・大阪の第1陣訴訟」に対し、国と建材メーカーの責任を認める判決を出し、「一人親方」も労働安全衛生法上の国の救済対象となるとし、判決が確定しました。屋外作業の原告は救済の対象外とし、労働実態を見ない大きな問題は残りました。アスベストによる中皮腫などの疾患は、発症後急激に病状が悪化し、これまで約7割の原告1200人が亡くなっています。被害者救済、飛散防止対策強化などを国に求めるとともに、診療の現場での患者支援などにひきつづき奮闘しましょう。
3)オンライン診療への私たちの立場
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にオンライン診療が注目され、時限的・特例的な取り扱いが行われています。政府は、これに乗じてオンライン診療の初診を含めた解禁に向けての動きを加速しています。5月31日に開催された厚労省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、初診からのオンライン診療を認める場合のルールづくりに向けた議論が始まっており、この秋にも指針に反映するといわれています。
全日本民医連は、オンライン診療の初診の解禁について、反対を表明するとともに、オンライン診療について考え方を整理し、加盟事業所での対応を検討するために3月に見解をまとめました。各事業所での検討に活用しましょう。
4)医薬品の安定供給について
パンデミックのなか、世界的に医薬品の供給が不安定となり、加えて2005年改正薬事法による規制緩和を背景に、大手後発医薬品メーカーの法令違反が露呈し、国内の医薬品提供に大きな支障が出ています。
感染症や大規模災害などを想定した医薬品の安定供給の仕組みを確立するためには、個々の企業努力だけでは限界があり、国の責任で基本的な薬剤の生産、確保体制の整備、供給継続が可能な適切な薬価設定など必要な対応をとることを求めます。
②歯科分野のとりくみ
1)切り開いてきた医療・経営・運動の到達点
「コロナ虫歯」やオーラルフレイルの進行など、コロナ禍で顕著になった口腔内の疾患が増加しています。これまでなんとか生活をしてきた人びとが失業や収入の減少により歯科受診を控え、痛みの限界から無料低額診療事業を行っている事業所を探し受診する事例の報告が増えています。他方、痛みを我慢し受診できていない多くの人がいることも想定されます。歯科医療を諦めている人びとへの対応と支援(人権としての歯科医療)は重要なとりくみとなります。たたかいとしての社会的困難事例(『歯科酷書第4弾』)の告発とともに、対応としてのソーシャルワーク機能を発揮する歯科事業所への進化を、医科・歯科・介護の連携と地域の共同組織とともに大きく広げていきましょう。
2020年度歯科経営実態調査では、黒字事業所比率は67・8%となり、利益額は6億7000万円余り(収益比4%)の黒字、事業所合計では10年連続の黒字となりました。上半期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、自粛要請や感染への不安などから、患者数が減少し大幅な減収となり、経常利益は一時、マイナス2・8億円の赤字になるなど、歯科経営は深刻な状態となりました。しかし、6月以降は職員のメンタルケア、感染症対策、診療制限を行いながら奮闘し、コロナ禍の大変困難な状況のなかで前年度を上回る利益を確保しました。なお、多くの事業所で事業外収益が前年比を上回っており、感染拡大防止支援事業費補助金などの影響となっています。
「保険で良い歯科医療を」全国連絡会(以下、全国連絡会)は、4月22日に歯科技工士の確保と養成、低賃金の問題についての集会を行い、技工士養成学校、技工士会からも集会への参加やメッセージが寄せられました。集会に参加する国会議員も増え、運動がひろがっています。
2)民医連綱領と「2つの柱」を実践する歯科の重点課題
口腔内の健康は全身の健康につながることへのさまざまな報告が出され認識が広がっています。少子高齢化がすすんだ日本においては、口腔機能の発達や維持、向上、回復など、歯科医療は重要な役割があります。保険でより良い歯科医療を求める請願署名は、歯科治療が必要な人が医療費窓口負担を気にすることなく受診ができることを目標に、①必要な歯科医療への保険適用を拡大すること、②歯科医療にかかる国の予算を拡大すること(総枠拡大)を求めています。
全国連絡会では署名50万の目標、民医連では20万(2017年達成)の目標達成に向けて、6・3民医連大行動(動画配信中)を出発点に、コロナ禍のなかで各地の工夫した署名のとりくみを交流しすすめていきます。今後も新興感染症への対策は続き、従来の患者数で経営を成り立たせることには限界があります。「三密」を避ける対策として、同時に治療を行う患者数は減少せざるを得ません。歯科医療を継続するためには、コロナ後の新興感染症の対応を含んだ診療報酬の抜本的改善が必要となっています。
医科・歯科・介護の連携協働で質の高い医療・介護活動の実践と外来、病棟、在宅・施設など、日本人のライフコースのそれぞれの場における歯科医療の役割が求められています。施設への歯科往診の際に全身の疾患の悪化を発見し、早期に入院につないだ事例も多数報告されています。口から全身の疾患をみる重要性は増しており、介護事業所での歯科衛生士の役割が位置づけられ、採用もすすんでいます。医科・歯科・介護の連携の成果ととりくみの共有を、いままで以上に積極的にすすめていきましょう。
青年歯科医師と奨学生会議は8月に行い、中堅歯科医師会議を来年1月に開催します。
③介護・福祉分野のとりくみの特徴と課題
各地の介護事業所は、感染対策を必死に講じながら事業を継続し、利用者・家族の生活をささえてきました。感染対策の学習、とりくみは常に更新、確認する必要があり、そのためには医療との連携が不可欠です。専門スタッフとの相談体制の確立や、事業所ラウンドの実施など具体的なとりくみをいっそうすすめましょう。介護事業所の感染を防ぐことは地域医療を守ることにほかなりません。医療の側からの支援を強めることが必要です。
いつ誰が感染してもおかしくない状況が続くなかで、日常の感染対策の目標は、事業所内でいつ陽性者が出たとしても、濃厚接触者の発生を極力抑えるよう、日々努めることです。このことがクラスター化を防ぎ、感染を早期に収束させることにつながります。ただし、こうした事業所・職員の努力だけでは限界もあり、感染防止のためには定期的・頻回の検査、迅速なワクチン接種が重要です。今回の介護報酬改定でBCPの作成が運営基準上義務化されました。実地訓練・シミュレーションを積み重ねて、実際に機能し得る計画として作成することが求められます。一方、介護事業所に対する政府のコロナ対策は依然として不十分なままです。そのことが職員の緊張感や事業継続への不安を、いっそう高める要因にもなっています。感染防護具の安定的な供給、定期・頻回の検査の実施、全介護従事者に対する無条件のワクチン接種、公費による事業所の減収補てん、感染発生時の事業所支援など、コロナ対策の抜本的強化を重ねて求めます。
介護報酬改定への対応を確実にすすめましょう。今回の改定は「質の向上」「医療との連携強化」の視点で対応することがいっそう重要になっています。「リハビリ、口腔ケア、栄養」三位一体の推進やLIFE(「科学的介護」の推進を目的とするデータベース)への対応など、次期2024年改定の方向をしっかり見定めながらとりくむことが必要です。医療・介護を一体的に展開できる民医連の「強み」を存分に生かし、医療・歯科・介護連携の強化、介護の質の向上をはかることを通して経営改善につなげていきましょう。時期を逸することがないよう、法人(法人グループ)の総力を挙げて確実に対応していくことが求められます。
各自治体では第8期介護保険事業計画が動き出しています。計画内容をよく分析し、無差別・平等の地域包括ケアの実現に向けて、医療・介護事業を総合的にすすめる事業計画を検討しましょう。
特養あずみの里「無罪を勝ち取る会」(業務上過失致死事件裁判で無罪を勝ち取る会)が6年7カ月にわたる裁判闘争をまとめた冊子『逆転無罪』を発行しました。広く普及・学習し、あらためて裁判の教訓を生かしていく契機にしていきましょう。
④脅かされる 「受療権」、「 利用者の人権」を断固として守り、社会保障解体をストップさせよう
1)社会保障緊縮政策を転換させるたたかいを強化し、医療・介護を守り抜こう
政府はコロナ禍での医療崩壊の実態を招いた背景に、「地域医療構想や医療費適正化計画がすすまなかったことがある」とし、「病床削減を押しすすめ、低密度の医療から高密度の医療に転換する。そのために2022年度診療報酬改定では医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」とのべています。しかし、医療崩壊を招いた根本は、この間、政府がすすめてきた新自由主義的政策にもとづく社会保障緊縮政策にあり、OECD平均より大幅に少ない医師体制、不足している感染症や集中治療の専門医、余裕のない看護体制、常に病床を目いっぱい埋めても半数以上の病院が赤字となるような診療報酬、削減され続けた保健所体制など、平時からギリギリの医療体制に追い込まれていたことであることは明らかです。
コロナ禍において、日本の医療・介護の窮状も可視化されてきています。社会保障緊縮政策が、ぜい弱な医療・介護体制と経営の困難をつくり出してきたことを世論に訴え、すべての医療機関・介護事業所への財政支援を実施させるとともに、この間の政策を転換させ、患者・利用者負担の軽減、医療・介護の質を高め、職員が生き生きと働き続けられること、医療・介護の経営基盤を根本からささえる診療報酬および介護報酬の大幅な引き上げを勝ち取りましょう。
2)コロナ禍で強行された 医療を壊す2つの法律の実施中止を
菅内閣はコロナ禍で、「高齢者の医療費2割化」「病床削減の推進」の2つの医療を壊す法律を強行しました。成立した2つの法律の実施は来年以降です。秋の総選挙で、声を上げ、中止、見直しを実現しましょう。
「窓口負担を無料に」を掲げ、「75歳以上窓口負担2割化実施するな」の一点での広範な署名運動を提起します。運動のなかで、「2020年経済的事由による手遅れ死亡事例」、5年の歳月をかけて完成した研究調査「健康で文化的な生活とは何か」を学習し、記者発表も行いましょう。
コロナ禍を経てなお、公立・公的病院統廃合、病床削減を推進する地域医療構想をすすめようとしています。今後も起こり得る新興感染症のパンデミックや大規模災害に対して、公立・公的病院が果たす役割、保健所機能の拡充・強化、病床数や医療機能、医療従事者の確保数などの計画を、地域の実情にそって検討し直す運動を強めていきます。地域医療構想、病床削減に対し、「医療・介護・保健所の削減やめて! いのちまもる緊急行動」にとりくみます。9月5日全国一斉アピール行動を節目に、厚労省の「再検証リスト」押し付けによる地域医療構想の見直し、地域の実態に即した病院・病床の拡充、医師、看護師、介護職増やせの運動を広げます。
3)国民健康保険、生活保護、外国人医療の改善へ向けて
市町村に対しコロナ禍で勝ち取ってきた国保保険料(税)減免実施の周知徹底、新型コロナウイルス感染者への傷病手当金支給、国保加入者の出産手当金創設と合わせて、傷病手当金支給の対象拡大と恒久的な制度にすることを要請します。都道府県に対し保険料統一や一般会計からのくり入れ中止凍結、国に対して国庫負担増を求めるよう申し入れます。
コロナ禍でいっそう利用しやすい生活保護制度が求められています。利用を制限する「水際作戦」や不当な扶養照会をやめさせること、ローカルルールによる違法な規制をさせないこと、差別や偏見をひろげないよう制度を周知することなどを要請します。各地で生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)への支援を強めます。
「難民条約や国際人権規約に違反する」との国連からの是正勧告を無視した外国人対応により、無権利状態におかれた外国人も多く、無料低額診療事業のみの対応では限界があります。外国人に対応した医療保障制度の確立と財源の確保を求めて要請を行います。各県連・法人で、自治体からの外国人医療費への助成の要請を行いましょう。
学校健診で治療が必要となった歯科矯正が保険適用されていないことに対して、「子どもの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願」にとりくんできました。6月16日に衆議院厚労委員会にて全会一致で採択されました。歯科矯正の保険適用を実現させましょう。
4)介護ウエーブのとりくみ
この半年間、政府や自治体に対する介護ウエーブのとりくみを通して、重要な成果を勝ち取ってきました。介護報酬2021年改定では、不十分な水準ではあるものの基本報酬のプラス改定を実現させました。コロナ対策では、かかり増し費用の補てんや介護慰労金などの予算措置のほか、「介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第12報)」を廃止させることができました。第8期介護保険料の引き下げを実現させた自治体もありました。これらの経過は、現場や利用者の実態・要求にもとづき声をあげていくことの重要性をあらためて示しています。
補足給付の改悪に対して「実施の中止・凍結」を求める団体署名にとりくみ940筆を厚労省に提出し、記者会見を行いました。
コロナ禍は、経営難、人手不足で疲弊しきっていた介護事業所を直撃しました。感染から1年以上経過しましたが、介護現場は利用者の利用控えなどによる経営的ダメージや職員体制の厳しさを打開できないまま、先を見通せない状況が続いています。コロナに起因する家族の失職・休業で生計が厳しくなるなかで、利用料の支払いに支障を来すケースなど、経済的事情などを理由とする介護困難が新たな広がりをみせています。
政府に対して、介護保険制度の改善、公費による大幅な処遇改善、コロナ対策の強化をひきつづき求めます。6月から新たな介護請願署名が始まりました(目標15万筆)。介護報酬に対して10月以降の特例的評価(コロナ対応)の継続、来年4月の再改定(臨時改定)の実施を要請します。補足給付の見直しの実施中止を重ねて求めます。利用料の引き上げなど、介護保険の次期見直しの審議が来春から開始されます。さらなる改悪を許さない世論を今から広げていきましょう。各自治体に対して、コロナ対策の強化、介護保険料の引き下げや事業計画の改善をひきつづき求めます。
介護保険は施行21年を経過しました。コロナ禍のもとで実施された「介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第12報)」は、応益負担(利用料)や保険給付の上限設定(支給限度額)など、制度の根本問題をあらためて浮き彫りにしています。社保協「介護提言」などの学習をすすめ、介護保険制度の検証と抜本改善を政府に求める世論を広げていきましょう。
⑤事業と経営の維持発展をめざして
1)コロナ関連での財政支援拡大強化の成果と課題
2020年度上半期時点でのコロナ補助金を含まない経常利益の予算達成法人は31法人、30・7%(上半期緊急調査集計101法人)でした。2020年度決算でのコロナ補助金などを含む最終決算では、経常利益予算達成法人は78法人、63・4%(決算緊急調査集計123法人)となっています。財政支援の拡充を求める私たちの多面的活動や多くの医療・介護事業所の経営危機に対する切実な訴えの成果が、2020年度利益確保の一定の成果を勝ち取れた大きな要因となっています。
最終決算での集計法人合計での経常利益率3%(予算1・4%)、コロナ関連補助金を除くとマイナス1・1%です。コロナ関連補助金を確保することで全法人合計では、過去最高の利益率となっています。個別にみると、コロナ関連補助金を含めても経常利益予算に届いていない法人が45法人・36・6%あるなど、法人ごとに大きな差があることには注意が必要です。
重点・協力病院あり法人(集計44法人)の最終決算経常利益予算達成は34法人・77・3%、補助金除くと5法人・11・4%、重点・協力病院なし法人(集計79法人)は、最終決算経常利益予算達成44法人・55・3%、補助金除くと25法人・31・6%です。空床確保料を中心に重点・協力病院への補助金が相対的には手厚く、損益・資金予算を大幅に超過達成している法人もあります。それ以外の事業所に対する補助金は、経費などへの費用補てんに留まっています。コロナ禍の影響による減収補てんが決して十分とは言えないこと、重点・協力病院あり法人はコロナ補助金を除く収支構造は相当に悪化していることなどが特徴です。
コロナ禍の影響は、収益の減少(前年比97・6%)、予算からの大幅乖離(かいり)(予算比95・5%)という形で現れています。収益予算達成法人は12法人・9・8%しかありません。収益の前年差・予算差に対する補助金(収益・経費等総額)の補てん率(補助金/予算差・前年差)は、全体で、予算差補てん率84%、前年差補てん率164・9%、重点・協力病院あり法人では、それぞれ94・5%、194%、重点・協力病院なし法人は46・1%、78・6%となっており、重点・協力病院のない医療機関などへの収益(減収)への財政支援の不十分さが明らかな結果となっています。また、重点・協力病院ありの法人でも、全体としては予算収益未達成分を補てんする補助金とはなっておらず、コロナ禍による経費などの減少も相まって予算利益をして確保している実態です。
コロナ関連補助金の計上額は合計238億7600万円、未計上も含む2020年度補助金総額は、282億9500万円(2020年年収比4・7%)、そのうち2020年度期末時点の入金額は、190億2400万円(入金率平均67・2%・最低11%)でした。
福祉医療機構などからの緊急融資の総額は368億7200万円(年収比6・1%)と、多額の資金借り入れを行っています。2020年度期末現預金残高月商倍率は2・26倍(事業収益の減少が大きい2020年度でなく2019年度実績で計算すると2・2倍)、この緊急融資借り入れを除く期末現預金残高月商倍率は1・52倍(前期末1・46倍)です。資金的にもコロナ補助金の確保によって資金流出を防いだと言えます。全体としては、緊急融資分は使用せず現預金残高を維持していると見て取れます。既存借入金の借り換え原資として活用し、返済負担や金利負担の軽減をはかった法人も見られます。コロナ関連補助金も除いた現預金残高月商倍率は1・14倍となります。
2021年度も継続しているコロナ禍の経営への影響や、そもそもの低診療報酬・介護報酬による経営困難を踏まえて、ひきつづき国民のための医療・介護の安定的確保を可能とする十分な国家的財政支援の強化、自治体や医療・介護事業所の事務負担の簡素化、補助金の簡素化などを求め、地域を巻き込んだ運動の前進が求められます。診療報酬・介護報酬の抜本的見直しや、大幅引き上げを勝ち取るたたかいの強化をすすめましょう。
2)地域の医療・介護の要求に応えた積極果敢なとりくみこそが、 経営改善の重点
コロナ関連補助金、緊急融資による利益改善や現預金残高の増加などに見られる、特殊な状況は、2021年度も継続しています。経営管理をすすめる上で、私たちの主体的力量が、いま以上に問われるとの認識を持つことが必要です。
ポストコロナもにらみながら、補助金などの経営への影響の評価、補助金などを除く経営実態、経営力量の評価など、複眼での適切な管理が求められています。また、全職員参加の経営を貫く立場での経営報告のあり方や、決算書様式の工夫などもすすめましょう。コロナ禍のなかで、補助金などによる一時的経営状況の改善がある法人でも、中長期的視点で経営を描き、経営計画のもとに経営管理をすすめなければ、思わぬ危機に直面することもあり得ます。とりわけ、もともと経営基盤の弱い法人では十分な認識と注意が必要です。
この間、2021年度の予算を中長期経営計画にもとづく予算とすることをあらためて提起してきています。しかし、今日の到達点は、全体的には中長期の経営をきちんと描き、必要利益や資金予算・計画を確立している法人は少数です。2020年度、2021年度の特殊な状況下での中長期経営計画の確立はますます曖昧(あいまい)にできない課題となっています。2021年度中に、こうした弱点にきちんと向き合い、かならず克服しましょう。
当面する最大の経営課題は、収益増です。昨年からのコロナ禍を背景とした患者減少の回復と、患者増の実現を展望しなければなりません。全国的な外来患者減少、新規患者・初診患者の減少、救急車搬送数減少、救急ウオークイン患者減少、新規入院患者数減少、病床稼働率の低下が収益減少の要因となっています。コロナ禍のなかでの受診控え、生活困難、貧困を背景とする受診控えなど、私たちが見えていない、あるいはつかめていない、医療・介護を必要とする人びとの要求に積極的に応え、さらに一歩踏み込んだとりくみを、かつてない規模で思い切ってすすめることが必要です。民医連綱領に掲げる理念の実践こそが、経営改善の鍵です。
今こそ、地域の信頼をさらに高め、患者吸収力を飛躍的に強めるチャンスです。8月7~8日に経営困難打開に向けての展望を探る、2021年度予算と中長期経営計画実践交流集会を開催し、300人を超える経営幹部が参加しました。全国の経営改善に向けた教訓的とりくみ、直面している困難や悩みを出しあい、学び共有し、経営幹部の姿勢や果たすべき役割を確認しあう集会となりました。交流集会を踏まえ、秋の経営委員長会議などを通じて、積極的とりくみの教訓と併せて、民医連経営の抱える困難や悩みの打開方向の検討を深めることとします。
3)経営管理の基礎を固め、組織内の弱点克服のチャンスとしよう
地域に打って出る医療・介護活動を実践し、地域の信頼を勝ち取るとともに、さまざまな情勢変化に対応し得る経営の基礎力を見直し改善するチャンスです。
2019年9月に開始された全日本民医連東信医療生協経営対策委員会は、2020年度末時点で資金ショートの危機は回避されたとして、2021年4月に終了しました。東信医療生協経営対策委員会の総括は、全日本民医連理事会で確認され、全国に発信されています。この総括でも、経営破綻の背景として、県連および当該法人には、基本的な経営管理力量の不足、経営体としての組織運営の基本の未整備や認識不足、会計制度、管理会計制度などの未確立が指摘されています。
東信医療生協が経験した困難は、決して対岸の火事ではありません。民医連経営の共通した弱点の表れと捉える必要があります。土台のないところに改善は生まれません。時に局面として経営がうまくいっていても、困難に直面した時の復元力には大きな差となって現れます。対策委員会総括を自らに引き寄せて自己点検をすすめましょう。
⑥まちづくり
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、これまで私たちが大切にしてきた、集まって、語りあい、対話することですすめてきた活動も大きな影響を受けています。一方コロナ禍で困難を抱えた人びとをささえるとりくみのなかで、地域で活動するさまざまな団体との新しいつながりが生まれました。新たな視点や発想、実践を共有できるだけではなく、地域のネットワークの拡大はそのまま「社会的処方」のメニューの拡大になります。「開かれた民医連」として積極的に地域の諸団体、自治体の職員とも連携しましょう。
民医連職員のやりがいは、職員の専門性を地域で発揮する活動でさらに深まります。まちづくりの活動の窓口の設置、事業活動への位置づけなどにもとりくみ、まちの変化に気づける、そして行動できる仕組みをつくりましょう。
民医連綱領と日本国憲法をよりどころに、住民の要求や地域の変化に真摯(しんし)に向きあい、住民とともに解決をはかることですすむべき道が見えてきます。誰も取り残さない社会の実現を通じて「誰もが安心して住み続けられるまちづくり」の実践をめざしていきましょう。
⑦共同組織とともにコロナ禍を乗り越えよう
いま、民医連運動のすべての分野で、パートナーとしての共同組織の存在意義が輝いています。コロナ禍による人と人との分断、地域での孤立がすすむなか、各地の共同組織は感染対策に留意しながら手探りで活動を再開し、370万の共同組織の仲間、ひとりひとりを大切にする活動をすすめてきました。地域訪問や、集まる企画開催が困難ななかで、つながりを切らさない工夫として、全構成員への電話かけ、可能な地域では訪問、SNSを活用した班会、家でできる健康づくりや屋外での企画、アンケートや困りごと相談なども旺盛にとりくみました。
また、積極的に職員とともに「いのちの相談所」活動やフードバンクなどにもとりくみ、そのなかで地域の困りごとをつかみ、職員と共同して対応、解決をしています。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種をめぐっては、東京をはじめ各地でワクチン接種が困難な人のために、接種の予約や接種会場への移動の援助などにとりくみ、共同組織の真価を発揮しています。感染への不安や配慮から、なかなか活動再開に踏み出せなかったところや、思うように仲間増やしや『いつでも元気』購読のおすすめができない制約もありました。こうした今こそ、感染対策に留意しながらどんな活動ができるか、地域でどんな活動が求められているのか、全国の経験や知恵、工夫の交流が求められています。9月6日には、第15回共同組織交流集会in山梨プレ集会をWEBで開催します。370万共同組織とともに交流し、次の発展へ向けて英知を集めましょう。
共同組織拡大強化月間は、「すべての共同組織の仲間、ひとりひとりを大切にすること」を中心にすえてとりくみます。期間については、地域の感染状況を踏まえてそれぞれ設定し、職員と共同組織が協力しあい、訪問や電話、お手紙などあらゆる手立てを使って、かならずすべての共同組織に声をかけましょう。コロナ禍での困りごと、要望など声を聞きとり、寄せられた声を「安心して住み続けられるまちづくり」につなげていきましょう。
(3)高い倫理観と変革の視点を養う職員育成、医師の確保と養成の前進を
①「人権cafe」学習運動と「職員育成指針2021年版(案)」について
1)「人権cafe」学習運動のとりくみ
5月から開始した 「人権cafe」学習運動は、人権基礎講座をはじめ、「子どもの人権」、「ジェンダーからの自由」、「高齢者の人権」「障害者の人権」を学んできました。現在、学習会2730回、のべ2万9300人(7月末)の到達です。多くの県連では推進体制をとり、朝礼での読みあわせや職場会議での定例学習会、感想カードの掲示・交流、制度研修など活発なとりくみになっています。「人権が尊重されない出来事がたくさんあるなかでタイムリーな学習ができ、人権感覚を麻(ま)痺(ひ)させてはいけないと思った」「患者や利用者にどう向き合うかはもちろん、生活のなかのさまざまな問題を考える上で勉強になる」など、各地で語りあいが広がっています。その特徴は、①身近な問題を世界の人権保障の到達から捉えなおす機会となっていること、②多様性や個人の尊厳への理解を深めていること、③深刻な実態の背景に国の遅れた人権意識と政策があることに、目を向けていることです。ひきつづき、感染対策に留意しながら語りあいを広げ、人権への理解を深め、共同組織とともに社会へ働きかける機会としていきましょう。
2)「全日本民医連職員育成指針2021年版(案)」について
「全日本民医連職員育成指針2021年版(案)」(以下、(案))を全国の討議に付しています。11月12日に意見を踏まえた職員育成活動交流集会を予定しています。第44回総会は、2020年代の民医連運動の重点課題として、「人権と共同のいとなみを価値とする組織文化」をいっそう発展させるために、「高い倫理観と変革の視点を養う職員育成」を前進させることを提起しました。これを踏まえ、(案)は、今日求められる職員育成の基本的考え方を明らかにし、「教育活動指針2012年版」の実践をはじめ、これまでの到達点と教訓を引き継ぎ、2020年代の職員育成の具体的指針を総合的に提起しました。職員育成に責任を持つトップ幹部集団、職場管理者、育成を任務とする委員会や担当者が(案)を討議し大いに深めましょう。
②医師の確保と養成、働き方改革への対応をすすめよう
1)医学対と初期研修制度
200人の新入医師受け入れと500人の奨学生集団を目標にとりくんだ医学対活動は、2021年4月の新入医師の受け入れが183人、8月理事会時点での奨学生数は、481人となりました。卒業によって減少した奨学生の500人の水準への早期回復をめざしたとりくみがひきつづき行われています。コロナ禍で孤立する医学生のメンタルサポートと、それをささえる医学対担当事務への支援も求められます。6月には新しく奨学生となった医学生などを対象とした、みんフェスもWEBで開催しました。
初期研修制度については、研修医全体の定数の削減、都市部の定員を削減し医師不足地域への研修医の配置、都道府県への権限移譲をすすめるもとで、年間の新規入院患者数が3000に満たない病院の定数の機械的な削減などが進行しています。ひきつづき都市部での定員削減が想定されており、フルマッチすることと研修定員を守ること自体がたたかいのひとつの焦点となっています。都道府県や他臨研病院との日頃の連携を力に、削減提案を撤回させた経験も生まれています。コロナ禍で強まった連携も糧に、理不尽な定員削減を跳ね返す研修病院間での世論形成をすすめましょう。従来方針として掲げてきたJCEP(卒後臨床研修評価機構)の受審を確実にすすめること、中小病院における医師研修の優位性を主張していくことが求められています。
研修定員が削減されるなか、奨学生の着地が、自県連の内部やこれまでの連携先の民医連の研修病院だけではできない県連も出てきており、全日本民医連としても考え方の整理が必要になってきています。
地域枠の規定をより厳格化したりペナルティを課す動きがあり、対応をすすめます。
指導医講習会について、今期中の開催を検討します。
2)新専門医制度への対応と100人の後期研修受け入れ
後期研修の受け入れでは、民医連内で初期研修が終了した研修医162人のうち、民医連内に残る研修医が56人(35%)、民医連外の専門研修プログラムに出てから帰任予定の研修医が26人(16%)でした。外部から後期研修を民医連で開始する経験も増えています。新専門医制度が発足して、初年度の専攻医がどのような進路選択をしたのかについての結果が明らかなる時期に入ってきました。来年度に向けてその実態を把握し、方針を検討していきます。
2021卒研修医のセカンドミーティングを10月に開催します。
新専門医制度は専門医の更新における地域医療従事の義務づけ、2階建ての領域設定、ダブルボード問題、総合診療医の養成数が少ない問題など、ひきつづき混迷しています。現状の制度設計に関する問題点や課題、新専門医制度を官庁統制の道具として利用する動きに対しても、全日本民医連としての見解を明確にしていきます。
3)働き方改革の対応の遅れを県連・法人・事業所管理部の課題として打開を
政府は、医師の働き方改革を含む医療供給体制の改革を、コロナ禍であっても「時計の針を戻すのではなく、すすめることが求められている」としています。この間、医療法・医師法などの改悪により、過労死レベルを超える医師労働が法律により容認されたことは許されるものではなく、ひきつづきたたかいが必要です。一方で、医療現場はこの1年以上、新型コロナウイルスへの対応にふりまわされており、残念ながら、働き方改革への対応がすすんでいるとはいえません。東京をはじめいくつかの県連では、36協定の見直し、宿日直届けの提出などにとりくみはじめていますが、対応すべきことの一部にすぎません。
医師労働をどのように軽減していくか、医師の人権や健康を守る立場から対応することは、民医連においても必須の課題であるとともに、対応を放置しては経営も守れません。医局においても、自分たちの健康を守るために何ができるか、若手も含めた議論を重ねることが必須です。労働環境整備や他職種へのタスクシフティングなど多くの課題を含むことから、県連・法人・事業所管理部の課題として位置づけ、対応をすすめましょう。
2021年7月の厚労省検討会の資料によれば、B・C水準(年1860時間、月100時間未満の時間外労働)を選択する予定の場合、第三者評価を受審すること、受審前までに2024年度以降の時短計画書を作成することが求められています。計画書の必須記載事項として、前年度の労働時間数実績の記載が求められています。該当する事業所においては、今年度の労働時間数実績の確認作業を怠ることなくすすめる必要があります。
医師増員を棚に上げ、働き方改革を医療提供体制の再編に利用する厚労省のやり方は許されるものではありません。同検討会の大学病院を対象にした調査では、医師不足を背景に地域への医師派遣縮小やシフト制勤務の導入が困難との回答が寄せられています。地域医療の維持拡充と真の働き方改革を実現するために、抜本的な医師増員をひきつづき強く求めていきます。
③コロナ禍での職員育成の前進を
1)コロナ禍での職場運営
各地でオンライン研修が開催され始めたものの、部署会議の制限や黙食の励行などで、職員同士の関係づくりが停滞しています。例年にない不安と感染対策のなかで、特に新入職員は同期や同世代とのつながりをつくりにくい状況が続いています。全日本民医連のオンライン新入職員研修(医師、薬剤師など)では、「同期と初めて悩みを交流できた」「またこういう交流の機会がほしい」などの感想が寄せられています。ひきつづき、全職員で新入職員に寄り添った対応をはかりつつ、オンラインも活用した創意工夫での職場運営を追求しましょう。
2)看護分野
コロナ禍の困難な状況下においても、2021年度の看護師確保は目標を達成し、1103人と過去10年間で最大の確保数となりました。また、民医連の看護管理調査の結果において2020年度の看護職員離職率は、9・5%(前年比0・9%減)、卒後1年目は6%(前年比1・3%減)で、退職者数は昨年より181人減少しています。このことは、長期化するコロナ禍の厳しい環境のなかでも、民医連の看護の実践がくり広げられ、共感とともに理念が受け継がれているのだと確信につながります。
後継者対策では、全国各地でWEBを活用した多彩なとりくみが実践され共有でき、ひきつづき確保に向けてとりくんでいきます。学生のなかには「コロナ禍で両親とも失業、自分もバイトがなくなり授業料が払えない」など、学業をあきらめざるを得ない深刻な状況も生まれています。全日本民医連は1月に続き、6月21日に「コロナ禍で看護職を目指す学生への支援緊急給付金の復活と看護師養成校への必要な支援を求める要請書」を国に提出しました。特に3月末に廃止された「学生支援緊急給付金」の復活を訴え、国の教育予算を増やし、学費無償化、補助金の拡充、給付型奨学金の創設を求めました。ひきつづき、国が責任をもって医療従事者を養成するよう、学生の実態と声を届けます。
3)薬剤師分野
2020年度決算などにかかわる「保険薬局」緊急調査の結果、外来患者減少や医薬品購入価格交渉難航による減収・減益傾向に加えて、コロナ禍で保険薬局事業の経営悪化がいっそう顕在化しました。コロナ禍以前からの処方箋減少傾向がコロナの影響であらわになり、客観的な自己評価をする必要があります。医科事業所と連携し、経営状況を立て直すため、減少した収益に見合う費用の調整を早期に行うべき状況です。また、減収補てんを含めた補助金や職員への慰労金について、国や自治体にひきつづき求めていくことも事業を守るために不可欠です。薬局での無料低額診療事業適用を求める活動もひきつづき重要です。地域の中でなくてはならない民医連の保険薬局の役割を捉えなおし、その期待に応えていきましょう。
この間開催した病院薬局長交流集会では、困ったときに相談できる環境やつながりを強化していくことを確認し、20卒・21卒の新入薬剤師研修では同世代の工夫した交流の大切さが共有されました。
4)コロナ禍でこそ人権のアンテナを高め、「今日的な民医連事務集団の3つの役割」を発揮しよう
今期前半にとりくんだ事務育成の現状把握アンケートでは、感染対策上の理由から事務委員会活動が停滞している県連・法人が少なからず見られました。回答数そのものが伸びなかったことも、事務職場における調査類の多さや、疲弊した現場の実態も反映していると思われます。地道にとりくまれているさまざまな工夫や、各地の実践を交流したいという要望も多数ありました。9月29日には事務育成活動交流集会を開催します。全国のとりくみに大いに学び、困難な局面でこそ「今日的な民医連事務集団の3つの役割」を自県連・法人に引き寄せた論議と実践で前にすすめることが重要であると確認し、民医連事務が生き生きと活躍する契機としましょう。
5)ジャンボリーの成功へ県連の支援を強めよう
全国青年ジャンボリーは11月26~27日、オンラインで開催します。記念講演にフォトジャーナリストの安田菜津紀さんを招きます。1000人規模を目標にしています。多くの青年が参加できるよう業務保障とともに、WEB環境の整備など県連をあげて支援しましょう。
おわりに
コロナ禍はまだ進行しています。同時に世界と日本が効率優先の社会から、いのちが何より大切にされ、誰もが安心して人間らしく生きられる社会へ転換してゆけるかどうか、大きな岐路に立っています。
第44回総会で「平和と個人の尊厳が大切にされる2020年代」をめざし、コロナ禍で奮闘してきました。そしてそのなかで、新興感染症の発生、気候危機、女性の健康権など、私たちが民医連綱領の立場からさらに方針を具体化していく分野も生まれています。
第45回総会は、感染状況を踏まえながら、WEB形式の開催を予定します。どういう形態であれ、全国の英知を寄せあい、2020年代中盤へ向け展望を切り開く方針を練り上げていきましょう。そのための重要な半年間の実践となります。
ひとりひとりの職員のいのちと健康を守り、連携し、ささえあい奮闘しましょう。
理事会は団結してその先頭に立ちます。
以 上