副作用モニター情報〈556〉 クリンダマイシンによる急性汎発性発疹性膿疱
急性汎発性発疹性膿疱(AGEP)はスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)と並ぶ重症型薬疹です。
主な所見は原因薬剤服用後に、(1)急速に発症する汎発性の紅斑、(2)紅斑上に多発する無菌性の非毛孔性小嚢胞(のうほう)、(3)白血球中の好中球増多(>7000/mm3)、(4)発熱(>38℃)であり、糖尿病や関節リウマチ、白血病などがリスク因子であること、原因薬剤中止後2~3週間程度で治癒することが多いとされています。
他の重症型薬疹との違いはSJS、TENの特徴である「粘膜障害」が多くの場合で見られないこと、遅発性に紅斑が出現し薬剤中止後も症状が遷延(せんえん)することが多いDIHSに対して、「急速に発症し2~3週間で治癒」する点が挙げられます。
今回、クリンダマイシン(CLDM)によりAGEPが発症した症例が報告されましたので紹介します。
症例)50代男性、糖尿病、高血圧、慢性腎不全の既往あり。抜歯後、ダラシンカプセル(CLDM)が3日分処方され服薬開始。2日目より全身に痒み、3日目に発熱、皮疹が出現したため近医受診。ステロイド外用剤等処方されるも改善はなく、38℃台の発熱出現。服用後6日目に39℃の発熱、悪寒戦慄(せんりつ)、倦怠(けんたい)感に伴う体動困難が見られ救急搬送。入院後より、薬疹を疑いプレドニゾロン(PSL)60mg、アタラックスP注による加療開始。服用7日目に皮膚生検を施行。服用後早期の発症であること、皮膚生検の所見から、AGEPの疑いとなった。
服用8日目にPSL80mgに増量、服用9日目には解熱、炎症反応も改善傾向となった。紅斑も改善傾向となり服薬13日目にはほぼ消失。PSL漸減し退院。
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AGEPは他の重症型薬疹に比べ予後は良いのですが、高熱持続による消耗や肝障害が生じる可能性があります。原因薬剤の特定と早期中止が最も重要です。(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1740号 2021年7月5日)
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