副作用モニター情報〈552〉 β-ブロッカーによる徐脈にあらためて注意を
2003年以降、全日本民医連に報告された徐脈の副作用は、これまでに177件あり、β-ブロッカーが原因の症例は113件でした。そのうちグレード2(脈拍数40~50bpm)が60件で大半を占めますが、中にはグレード3(脈拍数40bpm未満)が18件ありました。
薬理作用から予測ができ、十分に注意喚起されていますが、症例が蓄積されたので報告します。
症例1)80代後半、男性。高血圧症に対し、ビソプロロール2.5mg開始。
開始1年1カ月 脈拍数30bpmの徐脈、II度房室ブロックあり。無痛性心筋梗塞と診断。
ビソプロロール中止。中止3日目に房室ブロック改善。徐脈も改善。
症例2)60代後半、女性。本態性高血圧症に対し、非チアジド系降圧剤(ナトリックス1mg)からアテノロール50mgに変更。
投与11年後 自宅で測定すると脈拍数30bpmになることがあり、25mgに減量。
減量63日後、脈拍数47bpmに軽快。
症例3)70代前半、女性。頻脈性心房細動でアーチスト2.5mgを長期服用中、継続した徐脈の訴え。
脈拍数が30bpm程度になったため、中止。中止17日後に改善傾向、45日後に40~80bpmに回復(70bpmが多い)。
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徐脈の副作用は内服薬だけでなく、貼付剤、点眼薬、吸入薬でも報告されています。
洞性徐脈、徐脈性不整脈は、脳に必要な血液を送ることができなくなり、めまいや失神、ふらつきを生じたり、息切れや倦怠(けんたい)感の自覚症状や、理解力や記憶力の低下など認知症に似た症状が出る場合もあります。
β-ブロッカーはβ1受容体を遮断することにより、血圧を下げたり、頻脈性不整脈の諸症状を改善する働きがあります。また、心臓の仕事量を抑えることで心不全の治療に使われる成分もあります。βブロッカー使用時は、高度徐脈に陥っていないか、常に注意が必要です。(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1736号 2021年5月3日)
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