副作用モニター情報〈550〉 トラマールOD(トラマドール)錠を服用後、傾眠となった症例
トラマールOD錠は、WHO3段階除痛ラダーで「ステップ2」に位置づけられた弱オピオイド鎮痛薬です。μオピオイド受容体に対する弱い親和性とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を併せ持つことで発揮されると考えられており、神経障害性疼痛に効果的であるといわれています。
今回、高齢者にトラマールOD錠が使用され、傾眠となった症例が報告されたので紹介します。
症例)90代女性。下行結腸がん緩和ケア目的で入院。トラマールOD錠25mg1回1錠1日3回、ノバミン錠5mg1回1錠1日2回を処方される。服用開始4日目に傾眠傾向が認められたため、トラマールOD錠25mg1日2回に減量し、ノバミン錠は中止。服用開始6日目に傾眠傾向の改善が認められないことから、トラマールOD錠中止の指示あり。中止翌日の昼食時に覚醒状態に改善が見られた。
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トラマールOD錠は、添付文書の重要な基本的注意において「眠気、めまい、意識消失が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と記載があり、当モニターにも、トラマドールとして過去12件(眠気9件、傾眠3件)の報告があります。12件中9件は70代以上と高齢でした。腎機能が低下していた可能性があるにもかかわらず、初回から75mg以上で投与されていた症例が10件ありました。今回の患者も高齢であり、かつ体重35kgと小柄であったため、腎機能は低下していたことが予想されます。腎機能が低下した患者では、血清中トラマドールのt1/2β相およびAUCは、健康成人に比べ、それぞれ最大で1.5倍および2倍であったことから、投与間隔を延長するなど慎重に投与することとなっています。投与前に腎機能の確認を行うことが必要ですので、注意してください。
(民医連新聞 第1732号 2021年3月1日)
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