副作用モニター情報〈538〉 アリピプラゾールによる不随意運動(遅発性ジスキネジア)
アリピプラゾールは非定型抗精神病薬の1つで、「統合失調症」「双極性障害における躁症状の改善」「うつ病・うつ状態」「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」を適応症に持つ薬剤です。
当副作用モニターに報告されたアリピプラゾールによる副作用件数は2018年11月時点(副作用モニター情報343号)で38件、その後約1年半の間に20件の報告が寄せられ、2020年6月時点で58件と増加傾向にあります。
今回、アリピプラゾールによる不随意運動(遅発性ジスキネジア)の副作用が報告されたので紹介します。
症例)50代男性
開始日:アリピプラゾール6mg/日開始
約8年後:6mg/日→12mg/日へ増量
約9年後:調子が良いため12mg/日→9mg/日へ減量
約9年3カ月後:9mg/日→6mg/日へ減量
約9年11カ月後:1カ月ほど前から「腰が踊るような感じで痛い」「以前もリスペリドンで同様の症状の発現あり、寝たきりになったことがある」と訴えあり。アリピプラゾールによる副作用を疑い、6mg/日→3mg/日へ減量
約10年後:「腰の症状は気にならなくなった」とのこと。その後も3mg/日で継続服用中
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本症例は抗精神病薬の長期投与症例であり、痛みもあるが「腰が踊る」感じは不随意運動の一種(遅発性ジスキネジア)と考えられます。この遅発性ジスキネジアの発症機序は明確ではありませんが、黒質線条体路ドパミンD2受容体の長期的な遮断の結果、ドパミンD2受容体の感受性が亢進し、ドパミンD2受容体のバランスが崩れることによって引き起こされると考えられています。
一般的に、定型抗精神病薬に比べて錐体外路症状の発現が少ないとされる非定型抗精神病薬でも、本症例のように遅発性ジスキネジアを含めた錐体外路症状が出現する可能性があります。
遅発性ジスキネジアのリスクファクターとされる「高齢者」「糖尿病合併例」「脳に何らかの器質的病変を持つ患者」では、非定型抗精神病薬を少量から開始し、最小限での治療が推奨されます。
(民医連新聞 第1719号 2020年8月3日)
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