副作用モニター情報〈535〉 メトクロプラミド長期間投与による薬剤性パーキソニズム
近年日本国内でもポリファーマシー問題に強い関心が集まっています。日本のポリファーマシー問題の背景には急激な高齢化や専門性の高い医療の推進、医療保険制度などさまざまな社会的背景があるとされていますが、単純に薬剤数の大小だけの問題ではなく、不適切処方(不必要処方)が放置されていることも問題の中核となっています。
今回、長期間メトクロプラミド(商品名:プリンペラン)を内服した結果、薬剤性パーキソニズムを発症した症例が報告されました。既知の副作用ですが、非常に教訓的な症例のため紹介します。
症例)80代後半女性。約2年前からプリンペラン処方(処方開始理由不明)。服薬開始8カ月後に肺炎で入院。入院時にすくみ足などのパーキンソン症状がみられたが、リハビリのみの対応で軽減しそのまま退院。
服薬開始1年7カ月後、食思不振で入院。両側上肢の筋固縮、すくみ足、後方重心、仮面顔貌などがみられ、薬剤性パーキソニズムを疑いプリンペラン中止。中止3日後から徐々に表情が穏やかになり、食事摂取・運動機能ともに徐々に改善がみられた。
中止1カ月後には以前と同じように歩行可能になるまで改善した。
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メトクロプラミドは薬剤性パーキソニズムを引き起こす代表的な薬剤のひとつです。特に高齢者ではリスクが高いことが知られています。
「日本老年医学会ガイドライン」でも、慢性投与による薬剤性パーキソニズムが指摘されています。特に高齢者は「可能な限り使用を避けるべき」とされています。
今回の症例も、定期的な処方の見直しを行うことで未然に副作用を防げた可能性があります。医師・薬剤師などが連携して処方内容のチェックを行える体制づくりをすることが求められます。
(民医連新聞 第1716号 2020年6月15日)
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