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2019年10月22日

非正規の外国人にも 健康な暮らしを AMIGOS外国人健康相談会in東葛病院

 健康保険がない、言葉が通じないなどの理由で医療から遠ざかっている外国人が、ギリギリまで我慢した末、無料低額診療事業を行う医療機関に駆け込む事例が増加しています。「そんな外国人が相談できる窓口になりたい」と、9月29日、東京・東葛病院(千葉県流山市)で、アミーゴス(北関東医療相談会)が54回目の外国人無料健康相談会を行いました。(丸山いぶき記者)

 朝9時、東葛病院の前にはすでに10人ほどの外国人が、健康相談会の開始を待っていました。2階整形外科外来の待合は、職員やアミーゴスのスタッフを含むボランティア総勢130人でいっぱい。通訳ボランティアも11カ国語に対応できるメンバーが集結。10時、相談会が始まりました。
 受診者は受付後、健診センターで採尿、身長・体重の計測、心電図、採血、問診とすすみます。女性には産婦人科検診もすすめます。診察、レントゲン撮影を終え、健診は終了。後日、東葛病院で健診結果を説明する予定です。
 希望者は弁護士やMSWによる法律・医療相談も受けられます。支援品として米5kgと衣類なども提供。全て無料です。往復交通費もアミーゴスが負担します。

■職員が温かく迎え入れ

 受診者の多くは在留資格を持たない非正規滞在者で、難民申請中や仮放免中の外国人です。仮放免中は入国管理局の収容所を出られますが、就労できず健康保険もなく、生活保護も受けられません。全額自費となるため、普段めったに病院にかかれない人たちです。
 「緊張の連続です。でもみなさん案外、日本語がわかるみたいで安心した」と話すのは、採血を担当した竹上里奈子さん(看護師)。受付では、東葛歯科の古田素子さん(歯科衛生士)が、ゆっくりやさしい日本語で受診者に話しかけていました。「心臓が痛いと訴える人が多い。いっしょに来ていた子どもたちのことも心配」と話します。入職5年目という職員(薬剤師)は「出身国がわかっても何語を使うかわからない。でもなかなかできない経験」と、自前の翻訳機を片手に笑顔でした。

■「助けて」と悲痛な叫び

 この日の受診者は、アジア圏出身で、千葉県に住む人を中心に、48人でした。
 同郷の友人に紹介され相談会を知ったというバングラデシュ人男性(38歳)は、日本で出会ったカンボジア人の妻と2歳の娘を連れて相談会を訪れました。宗教対立で国を追われ、15年前に来日。「同じ仏教国だから、助けてもらえると思って来たけど…」と、難民申請を認めない日本の入国管理行政に憤ります。「証拠を全部出したのに認められない。調べてもくれない。私、人生どうすればいい? 妻も子どももいて、働き盛りに働くことも許されない」と訴えます。妻には就労ビザがあり、健康保険にも入っていますが、「彼は病院にかかれない。ここがよく痛むようで心配」と、夫の右腹部をさすります。
 ナイジェリアとミャンマー出身の通訳ボランティアの女性たちから、非正規滞在の外国人が置かれる実態を聞きました。「収容所の医者は台湾人だった。薬は『命の母』と痛み止めだけ」「今年も収容所の中で何人も亡くなるよ。病気、自殺…、収容所は今まで何人も殺した」「日本人はやさしい人が多いけど、『大変ね』と言いながら、差し出すべき手は後ろ手に回る」「アベの悪い政治、法律を、日本人が変えて」と、堰(せき)を切ったように怒りがあふれます。

■継続したとりくみに

 「日本人でもひどい働き方や、経済的理由で病院にかかれない人がいるのだから、外国人はなおさらですよね」と話すのは東京民医連の奨学生(6年生)。「見えていない問題がもっとあるはず。政府はグローバル化にきちんと向き合うべき」と話していました。
 ネパール出身のスレスタ・サントス医師は終了後のあいさつで、「感無量で胸がいっぱいです」と感謝をのべました。以前、東葛病院でネパール人を対象に無料の健康相談会を行ったことがあるからです。「これほど大きな相談会は、東葛はもちろん千葉県内でも初めて。職員の協力が得られるか不安でした」と話すのは実行委員会の柳田月美さん(同院SW)。しかし当日は、54人の職員がボランティアとして参加。「また来年も」との声も複数あがりました。
 23年にわたり活動を続けているアミーゴスの長澤正隆事務局長は「価値ある54回目になりました」と、さらなる連携に期待を寄せていました。


特定非営利活動法人 北関東医療相談会(AMIGOS)
 すべての人が健康と平和な生活ができる共生社会の実現をめざし、特に外国籍・生活困窮者のための保健、医療、福祉の増進をはかることを目的に活動を続けるボランティア団体。1997年から活動を開始。多くの医師、看護師、通訳者、ボランティア、医療機関の協力で、無料の健康診断会を実施。埼玉協同病院や茨城・あおぞら診療所も協力している。

(民医連新聞 第1702号 2019年10月21日)

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