副作用モニター情報〈521〉 芍薬甘草湯の副作用 投与量に注意
甘草含有の漢方製剤に関する副作用記事は、2015年9月以来となります。今回、芍薬甘草湯に絞って過去3年間の報告症例の分析を報告します。
全80例(女性51例)、104件の報告があり、主な症状は浮腫26件、低K(カリウム)血症18件(重篤度2以上12件)、血圧上昇17件(重篤度2以上8件)、これらの症状をまとめて偽アルドステロン症としての報告が8件ありました。75歳以上の高齢者が7割を占めています。
副作用の発現時期は、全体の6割強が2カ月以内ですが、特に血圧上昇は半数以上が1週間以内、浮腫も1週間以内が10件でした。
使用目的の多くは筋肉のけいれん、つり、こむら返りでしたが、帯状疱疹後神経痛での使用も報告されています。
投与量については、症例の55%は1日常用量以下の服用であり、甘草含有製剤の副作用を認識した減薬処方も多く見られました。一方で、保険薬局で副作用症状の説明と用量調節の指導がなされていたにもかかわらず、こむら返りの症状がつらく「一生懸命服用」し、血圧上昇に至った例、常用量で服薬2週目に浮腫があり、受診したものの「問題ない」とされ、その後血圧が240を超えた例、常用量で服用し、血清K値1.9mEq/Lに低下し四肢筋力も低下して自宅で倒れていた90代女性の症例、などが報告されています。
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芍薬甘草湯は、芍薬のペオニフロリンと、甘草のグリチルリチンとの相乗作用により、鎮痙・鎮痛作用が増強します。多くの漢方製剤の発展処方のもととなる組み合わせですが、含有量の多いグリチルリチンの影響で、尿細管におけるNaイオン、CIイオンの再吸収とKイオンの排泄が促進され、一連の副作用症状の発現につながります。
特に高齢者では、屯用服用を含む用量調節、漫然使用の回避、手足のしびれ感、脱力感などの初期症状への注意を再度呼びかけます。
(民医連新聞 第1696号 2019年7月15日)
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