副作用モニター情報〈519〉 SGLT2阻害薬による正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス(eDKA:euglycemic DKA)
SGLT2阻害薬は近年、心不全予後改善効果や腎保護作用に注目が集まり、今後使用量の増加が見込まれる糖尿病治療薬です。今回、SGLT2阻害薬を内服中に正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス(eDKA:euglycemic DKA)を発症した症例が報告されたので紹介します。
症例)70代男性。血糖コントロール不良のためジャヌビア(DPP-4阻害薬)→ジャディアンス錠10mg/日(エンパグリフロジン:SGLT2阻害薬)に変更。変更後、頻尿・嘔吐・胃のむかつきの自覚あり、徐々に食事がとれなくなった。内服開始後1週間ほどで救急受診し、入院となった。入院時採血で、血糖値157mg/dL、ケトン体(4+)、尿糖(4+)であった。ジャディアンスによるeDKAと推察され、ジャディアンスは中止、メイロン+補液で加療しアシドーシスは改善している。
一般的に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)はインスリン依存的に発生することから、主に1型糖尿病患者で見られますが、2型糖尿病患者でも異常な生理的ストレス下で発症するケースがあります。一方、SGLT2阻害薬は1型・2型両糖尿病患者にDKAを発症させる薬剤として知られています。SGLT2阻害薬によるDKAの大きな特徴は、異常高血糖を伴わない(正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス:eDKA)点です。
作用機序は未だ不明で、(1)必要な糖までが尿中に強制排泄され、(2)糖に代わる栄養源として脂質の分解が促進し、(3)血中ケトン体が増加しアシドーシス発生と、非インスリン依存的に起きると推察されます。
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治療方法は被疑薬の中止と必要に応じた補液、高血糖がある場合はインスリン投与です。脱水や過度な糖質制限がリスク因子となるためeDKA予防には水分の積極摂取や生活指導を十分に行うことが重要です。
SGLT2阻害薬は最も古いものでも2015年の発売であり、十分な使用経験・データが集まっているとは言えません。今後も未知の有害事象が発生する可能性は十分にあるので、特に新規導入、他剤からの切り替え時などでは患者の変化に十分注意してください。
(民医連新聞 第1694号 2019年6月17日)
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