副作用モニター情報〈513〉 慢性疼痛治療剤 トラムセット配合錠の副作用
オピオイド鎮痛薬トラムセット(トラマドール37.5mg・アセトアミノフェン325mg配合剤)は民医連の副作用モニターだけでも、この7年間で135例が報告されました。
症例)80歳女性 腰痛で、トラムセット1錠から開始。
3日目に2錠/日へ増量すると、嘔気発生。
12日目3錠/日。服用中にせん妄と思われる副作用が発生。幻視・幻聴もみられた。
「悪心・嘔吐」の発生が圧倒的に多く、副作用報告の50%以上を占めます。この副作用には発売当初から「制吐剤の併用」や「低用量からの服用開始」が勧められていましたが、制吐剤を併用した場合や、1日2錠から開始した場合でも、中止・中断するケースが報告されています。トラマドールの推奨開始用量は25mgなのに対し、トラムセットではアセトアミノフェンの用量制限との関係で37.5mgと高用量なことも原因と考えられます。
精神神経系の副作用の報告も多くなっています。めまい、ふらつき17例、眠気10例、全身の震え6例、本症例で発症した幻覚については6例ありました。これはトラマドールのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用に起因する、と考えられます。中枢神経のセロトニン蓄積によるセロトニン症候群やけいれん発作を引き起こす可能性もあります。けいれん発作の素因を持つ患者では、発作の増悪を引き起こす可能性もあり、注意が必要です。
オピオイド(麻薬)の作用としての眠気による「自動車の運転や危険を伴う機械の操作、高所での作業などには注意が必要です。
配合されているアセトアミノフェンでは、重篤な肝障害に注意が必要です。1日4000mgまで投与可能な鎮痛剤ですが、1日総量が1500mgを超えて長期服用する場合は定期的に肝機能をチェックする必要があります。
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これらの副作用は服薬開始初期に発生するケースが多くなっていますが、遅発性の報告もあり、使用に関して注意が必要です。
(民医連新聞 第1688号 2019年3月18日)
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