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2019年3月5日

相談室日誌 連載459 公立病院から当院につながり 無低診で視力と家族を守れた(愛知)

 当院では昨年11月から無料低額診療事業を開始しました。開始から間もなく、公立病院から当院につながったケースがあります。
 30代前半の女性Aさんは、高校生のころ糖尿病の診断を受けましたが、受診中断をしていました。第一子妊娠を機に通院し始めた公立病院でも糖尿病・糖尿病性網膜症を指摘され、治療が必要でした。しかし、定期受診を促されても、「お金がないから」と受診は途絶えがちで、インスリンの管理もおざなりだったようです。派遣で働く夫の収入と本人のバイト代では生活に余裕がなく、同居の義母などとの不和もあり、経済的支援も受けられない状況でした。
 5年後に出産した第二子は障害を抱え、吸引などのケアが必要でした。ケアでかかわる訪問看護師や公立病院の看護師、MSWは、Aさんの体調も気にかけ、公立病院の医療費未納があることも認識した上で受診を促し、複数の関係者がAさん家族を見守っていました。
 ところが、Aさん家族は国保料も未納であったため役所の納税課が督促をしました。このことから、公立病院と行政が一体のものと感じたAさんは、公立病院に対し「お金がないから行けません」と、受診拒否の姿勢を強めました。
 その後、夫が別の派遣の仕事に転職しましたが、就労開始時期が不透明で収入の見通しが立たなかったため、生活困窮者相談窓口が介入し、そこから当院の受診へとつながりました。
 当院には通い始めたばかりですが、予約通りに受診しています。視力低下と楽観的な性格から、日々の自己管理には不安がありますが、糖尿病は徐々に改善しています。予約日以外に別症状で自ら受診に来たこともありました。
 Aさんは金銭的な問題や国保料を払えない状況から「受診に行けない」という姿勢を強め、二児の母であるAさんの健康と視力が奪われるところでした。無低診の利用で受療権は守られましたが、Aさんの人生はこれからです。病状が改善し生活が安定するまで、長期的な視点での支援が必要だと考えています。

(民医連新聞 第1687号 2019年3月4日)

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