副作用モニター情報〈510〉 くりかえされるバラシクロビルの重篤な副作用~添付文書の記載は適正か?
帯状疱疹治療薬バラシクロビルによる有害事象の報告は、いまだに後を絶ちません。バラシクロビルの添付文書には腎機能別に投与量が設定されていますが、それ以前に用量設定そのものが過量であること(副作
用モニター情報No.235/本紙2005年
11月21日付、No.415/本紙2014年5月19日付、全日本民医連【薬の副作用から見える医療課題】43参照)が最大の原因でしょう。また、高齢者に処方される場合が多いこと、帯状疱疹は腎機能検査の結果を待って薬剤を投与する猶予がないという事情があるため、皮膚科など普段かかっていない科で腎機能検査がなされないまま処方されることなども考えられます。
当モニターに寄せられた109件もの報告には、高齢でも減量されず投与され、急性腎不全や意識障害で緊急入院した事例が多数存在します。今回紹介するのは透析患者で注意深く処方したにもかかわらず意識障害を呈した事例です。
症例)70代男性、体重40kg台、糖尿病、慢性腎不全で週3回透析施行中。
開始日:前日から皮疹あり、帯状疱疹の診断。バラシクロビル250mg/日で開始。
3日目:意識レベル低下、ろれつ困難。頭部CT確認により、明らかな出血なく脳卒中再発は否定的。帯状疱疹は改善傾向。バラシクロビル継続の指示。
4日目:透析中に意識レベル低下、眼球上転、眼振、まつげ反射あり。バラシクロビル中止。随時血糖122mg/mL。食事量低下。糖注10%500mL補液。
中止1日目:食事量低下継続、意識レベル改善傾向。
中止2日目:意識レベル不安定。
中止3日目:意識レベルほぼ回復。
* * *
バラシクロビルの処方には、患者の状況に応じた細やかな用量の調整が必要であることを再度訴えます。調剤時、腎機能が不明の場合は、疑義照会でクレアチニンクリアランスを確認しましょう。同時に、比較的副作用報告が少ない(おそらく用量設定が適切な)ファムシクロビルに切り替える、腎不全の場合はアシクロビルへの変更も考慮すべきです。
(民医連新聞 第1685号 2019年2月4日)
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