副作用モニター情報〈507〉 抗インフルエンザウイルス剤 バロキサビル製剤「ゾフルーザ」
インフルエンザのシーズン到来です。インフルエンザワクチンの不足やタミフルの10代投与原則禁忌解除など、心配になる話題が続きます。なかでも関心を集めているのが、革新的新薬として「先駆け審査指定」で承認された抗インフルエンザ剤「ゾフルーザ」でしょう。新薬モニターには3県連から評価結果が寄せられ、報告には至らないものの、各県連・地協でも評価にとりくんでいます。
最も注意が必要と指摘されたのが、65歳以上の高齢者とハイリスクの基礎疾患を有する患者への臨床試験が未実施のため、本来必要な人に対する効果と安全性が未確認ということです。発売から5カ月時点の市販直後調査には、死亡、アナフィラキシーショック、急性腎障害などの生命にかかわる重篤な副作用が報告されています。1回だけの服用で済む反面、薬剤の90%を排泄するのに432時間が必要で、副作用に遭遇すると回復に長い時間がかかります。肝機能障害関連事象は、服用15日以降も発現すること、1回量の1.8倍で発現(実験動物はサル)していること、プロトロンビン時間の延長(ラット)が認められていることから、血液凝固因子の産生が落ち、ワルファリンと相互作用を起こすなどの懸念が出ています。
効果は、オセルタミビルと同様に発熱時間の平均値が約53時間で、偽薬群と比べ約26時間短縮するだけです。発熱時間は、インフルエンザに感染した細胞が炎症性サイトカインのTNF-α・IL-6・IL-1βなどを分泌、いくつもの過程を経て応答を受けたT細胞によって除去されるまでの時間なので、ウイルス量を素早く減少させても発熱期間をこれ以上短縮できないと分析しています。
また、ウイルスが細胞の外に排出される量が減少することで十分に抗体が産生されず、同シーズンに再感染を起こす可能性も指摘しています。耐性ウイルスについても指摘があり、A型は少なく見積もっても2015~16年で0.99%、16~17年で10.6%(12歳未満では17.9%)と、すでに耐性化がすすんでいます。過度な期待は禁物です。
(民医連新聞 第1680号 2018年11月19日)
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