副作用モニター情報〈498〉 リナクロチド(リンゼス錠®) による下痢
便秘型過敏性腸症候群に適応症を持つリンゼス錠の副作用報告が当モニターに寄せられました。
症例)80~84歳の男性患者。体重記載なし。新薬があるという新聞記事を持参し医師にリンゼスを試したいと要望、翌朝からリンゼス錠0.25mgを2T/分1朝食前で服用開始。
開始2日目:「朝から水のような固形物の全然ない便が、ものすごい勢いで出た。1日に何回もトイレに行っていた」。
開始3日目:便は前日と同じような状態。自己判断で1回1錠に減量。
開始4日目:自己判断で服用中止。最初ほどではないが、便は固形物がない状態。
中止3日目:下痢は治まった。
併用薬は、アローゼン顆粒Rを0.5g/寝る前の指示のところ、1.5g/分3毎食後で毎日服用、トリメブチン錠100mgを中止2日目から3T/分3毎食後で服用。
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日本での投与量は0.5mg/日ですが、米国の0.29mg/日より多い設定となっていることが疑問です。本症例は、体重は不明ですが80歳代前半という高齢であり、過量だったかもしれません。けれども、リナクロチドは腸管毒素原性大腸菌やブドウ球菌などの食中毒菌が産生するエンテロトキシンを模倣した薬剤で、作用の本質はエンテロトキシンの毒性そのものです。
審査報告書の「7日齢マウス単回経口投与時の水分補給の影響検討試験」では、成熟ラット無毒性量の1/1000量の0.02mg/kgを投与した時、皮下補液を施した幼若マウスだけが生き残り、補液をしなかった幼若マウスは脱水で死亡、という結果でした。これが示すように、腸管の水分吸収を妨げるという毒性を十分にコントロールできない状態で臨床に提供されたとしか思えません。自然毒を医薬品に応用することはありますが、リナクロチドに関しては、まだ薬剤としては未熟なのでしょう。
薬の情報が患者さんでも簡単に手に入る時代です。安全確保のため、しかるべき情報源には、その本質を隠さずに記載する必要があると思います。
(民医連新聞 第1671号 2018年7月2日)
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