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副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

【新連載】46.抗真菌剤の副作用 

  ミコナゾール(商品名フロリードゲル経口用) イトラコナゾール(商品名イトリゾール) テルビナフィン(商品名ラミシール)フルコナゾール(商品名ジフルカン)

 2016年までの5年間での副作用報告は、内服製剤がすべてでした。薬剤別の内訳は
 塩酸テルビナフィン27件、フロリードゲル経口用7件、イトラコナゾール8件、フルコナゾール2件でした。

 ワーファリンとフロリードゲル経口用は、重篤な相互作用報告が続いたため2016年10月併用禁忌となりました。
 医薬品・医療機器等安全性情報 No.338
 https://www.pmda.go.jp/files/000214870.pdf#page=3
 では下記の4点について注意を喚起しています。

(1)ミコナゾール及び他のアゾール系抗真菌薬を処方する際は,予めワルファリン服用の有無を確認してください。
(2)ワルファリンを服用している場合はワルファリンの治療を優先し,ミコナゾールを処方しないでください。
(3)ワルファリンを服用している患者に,ミコナゾール以外のアゾール系抗真菌薬を投与する場合は,プロトロンビン時間測定,トロンボテストの実施回数を増やすなど,血液凝固能のモニターを強化してください。また,出血関連の副作用に注意して患者を観察するとともに,患者に対しても出血関連の副作用が疑われた場合は直ちに主治医に連絡するよう指導してください。
(4)ワルファリンを服用している患者に,アゾール系抗真菌薬を投与する場合は,循環器専門医やワルファリン処方医に連絡をとるなど,慎重に投与してください。

 フロリードゲル経口用の副作用報告では、ワーファリンとの相互作用による出血・PT-INR異常値6件、味覚異常1件でした。相互作用による重篤な副作用報告が多い背景には、ワーファリンとフロリードゲル経口用の処方は異なる医師からでるケースが多いことや、消化器領域のPPIの長期投与や呼吸器領域の吸入ステロイド剤によるカンジダ症の併発が背景にあります。相互作用による副作用報告の特徴としては、60代1例70代3例80代1例90代2例ですべて高齢者であることと併用について医療機関へ患者から報告されていないことがあげられます。フロリードゲル経口用の投与期間は1~2週間で投与中止後1ヶ月以内に、出血・PT―INRの異常値がモニターされています。
 また、フルコナゾールとワ-ファリンとの相互作用による出血もモニターされています。

 症例)60代後半男性。ワーファリンを数年間内服。食道カンジダに対してフルコナゾールカプセル100mg15日間投与。歯肉出血・皮下出血のため受診。INR6.05のためケイツー静注。翌日、INR1.70へ。フルコナゾール中止。

副作用モニター情報〈402〉 ワーファリンとフロリードゲル経口用併用でPT-INR上昇、皮下出血、歯肉出血

 副作用モニター情報No.287(2008年5月5日付)でも紹介しましたが、ワルファリン(商品名:ワーファリン)とミコナゾール(商品名:フロリードゲル経口用)の相互作用と思われる症例が報告されたので、再度注意喚起します。

症例) 80代前半、男性、糖尿病あり。
 発作性心房細動にてワルファリン3mg投与中。INR1.5~1.8でコントロール良好。舌腫瘍手術のため、手術2日前より、ワルファリン中止。手術後9日目退院。
 手術3週間後に口腔カンジダを発症し、ミコナゾール15g分3で5日間処方。3週間後、ワルファリン3mgにて服用再開の指示(INR測定なし)。ワル ファリン再開指示後2~3日目より下腿皮下出血、四肢を中心に皮下出血が広がっていたが、受診せず。9日目に口腔内出血にて近くの歯科を受診したが、出血 がとまらず、内科受診。INR7.0と上昇していたため入院し、メナテトレノン注射液(商品名:ケイツーN静注)10mg投与で、INR1.64と症状回復。
 持参薬の確認やその後の聞き取りで、舌腫瘍手術施行退院後、ワルファリン再開指示がでるまで、自己判断で家に残っていたワルファリンを2mgずつ服用していたことが判明。ワルファリン中止のまま翌日退院し、退院2週間後INR1.13。ダビガトラン(商品名:プラザキサ)に変更した。

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 ミコナゾールは、CYP3A、2C9を阻害し、これらの酵素で代謝される併用薬剤の血中濃度を上昇させてしまいます。同効薬のアゾール系抗真菌剤のイト ラコナゾール(商品名:イトリゾール)等もCYP3A4を阻害するため注意が必要です。メーカーに報告されている重篤症例では、ミコナゾール中止後1カ月以内でのINR上昇などの副作用症例が最も多く、3~5カ月後での報告例もあり、遷延する場合もあるので注意が必要です。ミコナゾールの形状は軟膏薬に似ているため医療従事者でさえ外用薬と間違いやすく、内服薬との相互作用に気づきにくい場合もあります。電子カルテや電子薬歴等でのチェックが可能か再確認することも重要です。

(民医連新聞 第1556号 2013年9月16日)

 2016年までの5年間のイトラコナゾールの副作用は8件でした。年齢層は、60代2件70代3件80代1件90代2件、副作用報告として、むくみ3件薬剤性肝障害1件喘鳴1件舌炎1件吐気1件薬剤性過敏症症候群1件でした。

 イトリゾールは併用禁忌薬が多く、オーラップ、ベプリコール、硫酸キニジン、ハルシオン、リポバス、カフェルゴット、ジヒデルゴット、レビトラ、セラチオ、アドシルカ、セララ、ロナセン、カルブロック、レザルタス、バイミカード、プラザキサ、イグザレルトなどがあります。

副作用モニター情報〈241〉 イトリゾール(抗真菌剤)とハルシオン(睡眠導入剤)の相互作用による認知症状の憎悪

 イトリゾールとハルシオンの併用で、一過性にもうろう状態を呈した症例が報告されました。
 (症例)肺疾患でイトリゾール200mg/日を長期内服している70代男性。軽度認知症はあるが日常生活に支障はなく、妻と2人暮らし。夫に不眠症状、夜間徘徊行動がみられたため、介護者の妻が他院で処方された自分の服用薬、ハルシオン0.25mgを飲ませた。翌朝から認知症状が憎悪、尿失禁がみられ、自立歩行できなくなり寝たきり状態となる。症状は2日間継続したがその後急速に回復、歩行、排泄とも自立し、会話も正常に戻った。以後、症状の憎悪・再発 はない。CTを撮影したが新たな梗塞はなく、両剤の相互作用による可能性が強く疑われた。

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 臨床試験では、イトリゾール服用中のハルシオン0.25mg内服併用では、単独投与時と比べハルシオンのAUC(血中濃度-時間曲線下面積、area under the blood concentration-time curve)が27倍、最高血中濃度は3倍、消失半減期 は7倍になることが認められています。また、被験者のほとんどで、健忘と翌日までの錯乱等の症状が認められています。イトリゾールは消失半減期が約30時間と長く、肝臓への蓄積性も高い薬剤です。他剤との相互作用は服薬中止後も約3週間持続することが示唆されています。そのため、パルス療法時の休薬期間中も、ハルシオンなどの禁忌薬は服薬しないよう、注意が必要です。また再発防止のため、患者様の併用薬が禁忌薬であるか否かを点検することはもちろん、併用禁忌医薬品名はじめ、具体的な情報を患者様やご家族に確実に提供する事が必要です。

(民医連新聞 第1375号 2006年3月6日)

 塩酸テルビナフィンの2016年までの5年間の副作用報告件数27件でした。年齢は60代以上が23件であり高齢者への投与がほとんどです。副作用の内訳は、薬剤性肝障害が12件、発疹4件、むくみ3件、めまい3件、胃部不快2件、不整脈1件、白血球減少1件、便秘1件、口腔内・上顎のしびれ1件でした。薬剤性肝機能障害については、下記の報告をご覧ください。

副作用モニター情報〈226〉 ラミシールによる肝機能障害

(症例1) 爪白癬のためラミシール投与を開始。服用後43日目に体の疲れ、黄疸を訴える。AST:251、ALT:228、ALP:1555、TBil:6.1であり、投与を中止し、入院。ヒシファーゲン点滴で様子見るが改善なく、プレドニン、プレコート投与し、徐々に回復。
(症例2) 水虫のためラミシールを開始。服用後36日目にAST:144、ALT:284、ALP:466となる。入院せず、投与中止し、回復。
(症例3) 爪白癬のためラミシールを開始。投与後29日目の検査で異常を認め、AST:153、ALT:231、ALP:1340、γ―GTP:1166、自覚症状なし。43日目に投与中止し、入院安静にて経快。

 3症例ともに1カ月前後で肝機能の異常が出現しています。一般的に重篤な肝障害は投与開始後2カ月以内に現れます。投与開始後2カ月間は月1回の肝機能検査を行うこと、その後も定期的に肝機能検査を行い、十分に観察することが必要です。最初は長期投与はせず、最低2週間ごとに様子をみながら、皮膚掻痒感、食欲不振、悪心、倦怠感などの随伴症状にも十分注意することが重要です。
 4月の副作用モニター委員会報告には上記3症例の他、ラミシールの疑われる肝機能異常1症例、発疹、掻痒感、悪心、胃部不快感など8症例が報告されています。使用する場合は、投与開始前に検査し、開始中の定期検査と十分な観察を行うようにしてください。
 なお、ラミシール、パナルジンなど副作用が発生しやすい危険期間が分かっている医薬品は、観察・検査などのフォローのため、投与と検査のスケジュールを予定し、守ることが必須です。

(民医連新聞 第1359号 2005年7月4日)

副作用モニター情報〈207〉 ラミシール錠による肝障害に再度注意!

 2003年12月に警告が出て「使用上の注意」の記載内容が改定、「投与前の肝機能検査・血液検査の実施」「重篤な肝障害が主に投与開始2カ月以内に現れる、開始後2カ月間は月1回の肝機能検査を行うこと。その後も定期的に検査を行う」など十分な観察の指示が盛り込まれました。

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6290005F1024_3_04/

 投与前・投与1カ月後は正常値でも、投与3カ月後に異常値が出ることもあります。随伴症状(皮膚のかゆみ、発熱、悪心、嘔吐、倦怠感など)への注意深い 観察も重要です。また、肝機能障害の人への投与は、本剤のクリアランスが低下し薬物血中濃度が正常な人の1.8倍になった報告もあり、おすすめできません。

(症例)爪白癬症の56歳女性。マイコスポール液、バラベールクリームとともにラミシール錠を投与。投与1カ月後の検査値はAST20、ALT16と正 常。投与3カ月後にAST88、ALT74、γ-GTP130、LDH213と異常値になり、本剤中止。中止2カ月後もAST96、ALT89、 γ-GTP232、LDH214、ALP567と肝機能障害が持続。中止3カ月後に正常値に戻った。

 本剤は一般的に皮膚科で使われますが、定期的な血液検査に医師・患者側が難色を示す場合も少なくありません。本剤の使用では、一定の取り決めをしておくことが必要です。

(民医連新聞 第1339号 2004年9月6日)

■画像提供 奈良民医連 一般社団法人奈良保健共同企画
http://www.aoba-pharmacy.com/

■副作用モニター情報履歴一覧
http://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/k02_fukusayou/

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■薬学生の部屋
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/index.html

**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>

*タイトルをクリックすると記事に飛びます
  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. アナフィラキシーと薬剤
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用
  42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用
  43.水痘ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス治療剤の副作用
  44.薬剤性肝障害の鑑別
  45.ST合剤の使用をめぐる問題点

■掲載過去履歴一覧
http://www.min-iren.gr.jp/?cat=28