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民医連新聞

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【新連載】27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用

【最終更新日:2024年10月2日】

アロプリノール(ザイロリック錠など) による重症型の薬疹、骨髄抑制(汎血球減少症,再生不良性貧血),薬剤性肝障害、薬剤性腎障害等。
 高尿酸血症治療薬では、尿酸合成阻害薬のアロプリノール、フェブキソスタット、尿酸排泄促進剤としてベンズブロマロンなどが主に使用されています。
 これまで、モニター情報309「アロプリノールの副作用のまとめと腎機能低下時の投与」(2009年5月)、モニター情報357「アロプリノールによる薬剤過敏症症候群」(2011年8月)、モニター情報438「フェブリクの注意すべき副作用」(2015年6月)などの注意喚起をおこなってきました。
 今回、上記3製剤について2013年~2017年までの5年間に報告された副作用症例を検討し、注意すべき副作用についてまとめました。

 

1、アロプリノールの副作用について
アロプリノールによる重症型の薬疹に注意
 アロプリノールの過去5年間の副作用報告件数130件のうち半分以上の73件が過敏による皮膚症状が占めています。その内重篤度グレード3で報告された症例は、薬剤過敏症症候群5例、スティーブンジョンソン症候群1例、剥離性皮膚炎1件の7件でした。薬剤過敏症症候群疑いの症例はグレード2も含めると7件となります。
 薬剤過敏症症候群(DIHS)は、通常の薬疹とは異なり原因医薬品の投与後2週間以上経過してから発症することが多い高熱と臓器障害を伴う薬疹で、医薬品中止後も進行し、軽快するまで1カ月以上の経過を要することが多く、発症後2~3週後にヒトヘルペスウイルス-6(HHV-6)の再活性化を認める副作用です。原因医薬品は比較的限られアロプリノールは抗てんかん薬のカルバマゼピンなどとともに報告の上位をしめます。
 薬剤過敏症症候群疑いの7症例のうち、未回復のまま直接の死因ではなかったものの死亡に至った症例は80歳代後半の患者で2例ありました。皮疹の消退など回復に至った症例のうち17日で回復した1例をのぞき3例が1カ月以上の治癒期間を要しています。HHV-6抗体陽性が確認された症例は4例でした。
 また、スティーブンジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症など重篤な薬疹の原因物質の上位にアロプリノールが挙げられています。アロプリノール服用後の発熱・咽頭痛、紅斑、発疹などの症状があらわれたら、直ちに服用を中止し受診をうながすことが大切です。
 とくに腎機能障害があると、アロプリノールの活性代謝物であるオキシプリノールが体内に過剰に蓄積し、重篤な副作用の頻度が高まるといわれています。腎機能に応じた用量調節が推奨されています。
 長期服用の場合、加齢や合併症などで腎機能が低下してくることがあるので、血液検査は定期的に行い投与量を見直すべきです。アロプリノールの投与量の目安は、Ccr>50mL/分では100~300mg/日、30mL/分<Ccr≦50mL/分では100mg/日、Ccr≦30mL/分(腹膜透析を含むでは50mg/日、透析施行例では透析終了時に100mgとなっています。

アロプリノールのその他の副作用
 アロプリノールの重篤な副作用として皮膚過敏反応とともに骨髄抑制(汎血球減少症,再生不良性貧血),薬剤性肝障害、薬剤性腎障害等があります。キサンチンオキシダーゼ阻害作用が他の核酸合成も阻害するためと考えられており、とくに腎機能低下時に認められることが多く、注意が必要です。
今回検討した130件のうち、皮膚障害以外のグレード2および3の重篤な副作用として、肝機能障害が7件、血液障害が4件、腎障害が4件、呼吸器障害が2件報告されていました。
 また、アザチオプリンとの併用で目に後遺症を残した副作用が報告されています。
 アロプリノールはアザチオプリンの代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害する作用を持つため、両者を併用する場合はアザチオプリンを1/3~1/4に減量することとなっています。また、同効薬のフェブキソスタット、トピロキソスタットは併用禁忌です。

症例)50代男性 好酸球性胃腸炎(適応外使用)にてアザチオプリン50mg服用中。尿酸値が高く、アロプリノール300mg/日が追加となった。保険薬局から用量について疑義照会をした結果、アザチオプリンは12.5mgに減量、アロプリノールは変更なく300mg/日のまま開始。
10日目:口の中と目のただれあり、眼科受診。
11日目:発熱37.5度、のどの痛み、痰(たん)の症状でクリニック受診。
12日目:目が痛くて開けられず、処方元の医療機関を受診、アロプリノールによるスティーブンス・ジョンソン症候群の診断で入院加療となる。入院中の経過は(民医連の病院でないため)詳細不明。
中止42日:視力は戻ったが、まだかすんでいる。
中止65日:目の充血、口の中のただれはよくなってきたが、目のかすみ、ドライアイは残る。
中止75日:ドライアイは改善傾向。
中止105日:目のかゆみ改善。ドライアイは残る。プレドニゾロン13mgまで漸減。

 この症例はアロプリノールの過量が原因かと思われます。アロプリノールの開始初期は1日100mgでの投与が望ましいとあり、アザチオプリンとの併用のため、慎重に開始したかった症例です。 

(民医連新聞 第1798号 2024年1月22日号)

2、フェブキソスタットによる副作用について
 フェブキソスタット(商品名:フェブリク)は、2011年に発売された選択的キサンチンオキシターゼ阻害剤です。アロプリノールと違い、プリン骨格をもたず他の核酸代謝に影響を及ぼさないこと、また肝臓からも排泄されるため中等度の腎障害患者でも服薬量の減量が不要で、1日1回の服用で済み高血圧の合併症がなくとも使用出来ます。

今回調査した過去5年間の副作用報告では、27症例34件の副作用がありました。肝機能障害・急性肝不全などの薬剤性肝障害が7件、乏尿・腎不全など薬剤性腎機能障害が4件、発疹・痒みなどの過敏症が9件、傾眠・眠気など精神神経系が3件、便秘・下痢などの消化器系が6件、その他であり、重篤度分類では、グレード3として、肝機能障害2件、急性腎不全が1件、グレード2として、肝障害が3件、消化器1件でした。年齢別にみると、40歳代1例、50歳代4例、60歳代3例、70歳代10例、80歳代9例と高齢になるにつれ増える傾向です。 過敏症については、アロプリノールにみられた重症型の薬疹の報告はありませんでしたが、使用量の増加に伴う今後の推移に注意が必要です。

*       *

 フェブリクの注意すべき副作用として、添付文書には痛風関節炎、甲状腺関連所見、肝障害などが記載されています。ところが盲点になっている副作用に、乏尿や急性腎不全など腎機能障害が挙げられます。
 PMDA(医薬品医療機器総合機構)の報告副作用一覧でも、2014年度に報告されたフェブリクの副作用70件のうち、尿閉や腎不全など腎機能関連の報告が11件もありました。利尿剤や降圧薬ARBなどを併用している高齢者に多い傾向が見られます。当モニター報告でも、急性腎不全の症例はARBと利尿剤を併用していた60代の患者、尿流出不良の症例は慢性腎不全の合併症があり利尿剤を併用していた70代の患者、乏尿の症例はARBと非ステロイド性抗炎症薬を併用していた80代の患者でした。
 添付文書には、腎および尿路系の副作用の発生は、尿中β2ミクログロブリン増加が1%未満、尿量減少が頻度不明と記載されています。しかし、高齢者や腎機能が低下している患者で、とくにARBや利尿剤、非ステロイド性抗炎症薬など腎機能に負荷がかかる薬剤を併用している場合は、腎機能障害に注意が必要です。(民医連新聞 第1597号 2015年6月1日)

副作用モニター情報〈612〉 フェブキソスタットによる血清甲状腺刺激ホルモンTSH値の上昇
 フェブキソスタットは、痛風および高尿酸血症に対してひろく用いられています。アロプリノールと同様に尿酸の主要な生成酵素であるキサンチンオキシダーゼ(以下、XO)を阻害し、尿酸生成を減少させます。今回は、フェブキソスタットによると思われるTSH値の上昇を認めた症例を紹介します。

症例)60代男性
開始日:アロプリノール100mgからフェブキソスタット20mgへ変更、甲状腺機能に関する検査はなし。
開始4年8カ月後:TSH79.08μIU/mL(基準値:0.500~5.000)、TSH値の上昇を認めたため、フェブキソスタット中止、投与9週後に改善した(表)。

 国内臨床試験では、フェブキソスタット群のTSH上昇割合がプラセボ群およびアロプリノール群と比べて高いことが確認されています。海外臨床試験でも、甲状腺機能に関連する有害事象が報告されています。医薬品リスク管理計画書(RMP)には、「甲状腺機能に関する事象」が重要な潜在的リスクとして記載され、添付文書にも甲状腺関連所見の確認と異常時の検査を実施するよう記載されています。国内市販後調査では「TSH異常」と「F-T3異常」の重篤な症例が各1例報告されています。
 海外の観察研究では、フェブキソスタット服用中の痛風患者約5.5%でTSHが5.5μIU/mL以上に上昇。一方で、対照群のアロプリノール服用者でも同様のTSH上昇が約5.8%確認されています。このメカニズムは不明で、フェブキソスタット特有の作用かXO阻害薬に共通する作用かは明確ではありません。ただし、TSHの上昇はF-T4の値に影響を与えないことが確認されており、臨床的に重要な影響がないかもしれません。本剤投与中は甲状腺機能の変化に注意を払う必要があるでしょう。

(民医連新聞 第1803号 2024年4月1日号)

3、ベンズブロマロンによる副作用について
 尿酸排泄促進剤のベンズブロマロン(商品名:ユリノーム)については、過去5年間で15症例16件と使用量を反映したためかわずかにとどました。発疹・掻痒感などの過敏症6件、肝機能障害2件、嘔吐。胸やけ等の消化器症状3件などが報告されていました。
 重篤度がグレード3で報告されたのは、間質性腎炎、肝機能障害がそれぞれ1件ずつのみでした。いずれも中止により回復しています。またワーファリンとの相互作用でPT-INR値上昇が1件報告されています。

 

画像提供:愛知民医連 (株)ファルマネットみなみ
http://www.wakaba-ph.com/about.php

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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
 
<【薬の副作用から見える医療課題】続報〔予告〕>
  28.糖尿病用薬剤の副作用
  29.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  30. ATP注の注意すべき副作用
  31. 抗癌剤の副作用
  32. 医薬品によるアナフィラキシー

以下、60まで連載予定です。