副作用モニター情報〈482〉 糖尿病治療薬DPP-4阻害剤による類天疱瘡
2型糖尿病の治療薬、DPP-4阻害剤テネリグリプチン(商品名:テネリア錠)による水泡性類天疱瘡の報告がありました。これは、主に皮膚の細胞膜に存在する自己抗原のBP180に、血液中に存在する自己抗体が反応して、皮膚に水疱ができる病気です。
症例)70代男性。糖尿病でグリメピリド錠、インスリン併用。テネリア錠20mgを追加した約5カ月後、陰嚢に水疱ができた。体幹、背部、臀部、腋窩には紅斑が出現。抗BP180抗体値110(基準値9U/ml未満)となり、水泡性類天疱瘡と診断。プレドニゾロン処方。数カ月後、「DPP-4阻害薬による類天疱瘡」が添付文書に追加され、被疑薬はテネリグリプチンと判断し中止。プレドニゾロン漸減し、新たな水泡形成なし。
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発売後に症例が集積し、2016年に各製剤の添付文書が改訂、類天疱瘡が追記されました。2016年度、PMDA(医薬品医療機器総合機構)に集まったDPP-4阻害剤による類天疱瘡の症例は、シタグリプチン33件、ビルダグリプチン135件、テネリグリプチン12件、リナグリプチン17件、アログリプチン11件でした。ビルダグリプチンの報告数が多い理由は分かっていません。当モニターには今回の症例の他、シタグリプチンによる副作用報告が1例あります。
発症する仕組みは詳しく分かっていませんが、同剤の標的分子であるDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)は、インスリン分泌を促すインクレチンの分解酵素として以外に、生体内で広範囲に発現する細胞表面抗原のCD26と同一物質であることが分かっています。CD26は、免疫機能を調節するT細胞にも発現しているため、同剤は免疫系へ何らかの影響を及ぼすと考えられていました。
投与期間中は水疱・びらんなど皮膚症状の発現に注意する必要があります。
なお、2016年7月4日付の当モニターでは、CD26阻害も関与していると考えられるシタグリプチンによるRS3P症候群について報告しました(全日本民医連ホームページに掲載)。
(民医連新聞 第1648号 2017年7月17日)
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