副作用モニター情報〈480〉 抗てんかん・抗不安剤 バルプロ酸による 高アンモニア血症
バルプロ酸(商品名:デパケン、バレリンなど)は、抗てんかん薬および抗不安薬として広く使用されている薬剤です。一方で、様々な副作用があります。今回、高アンモニア血症を引き起こした症例が報告されました。
症例)60代女性。特養入所中に食欲不振、嘔吐があり救急受診し入院。持参薬のバレリンの内服は継続していた。入院23日目に意識障害がみられ、検査値より高アンモニア血症と確認。アミノレバン投与開始。入院25日目に内服をすべて中止。翌日、遊離カルニチン値を測定し、36と境界値で高アンモニア血症はカルニチン欠乏によると考えエルカルチン注の投与を開始。27日目で意識レベル、血中アンモニア値ともに改善した。
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バルプロ酸による高アンモニア血症は良く知られた副作用ですが、それにはカルニチン欠乏が関与している可能性があります。実際に『カルニチン欠乏症の診断・治療指針2016』でも、カルニチン欠乏の対象に「バルプロ酸投与患者」と記載があります。バルプロ酸は体内の遊離カルニチンと結合して尿中に排泄され、その結果、カルニチンが欠乏して、β酸化障害発生⇒ミトコンドリア機能障害⇒高アンモニア血症を発症します。
高アンモニア血症は、バルプロ酸の中止で改善すると考えられますが、中止が難しい場合もあります。その際は遊離カルニチン値を測定し、欠乏がある場合、カルニチンを投与すればバルプロ酸を中止せずに改善できる可能性があります。
(民医連新聞 第1645号 2017年6月19日)
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