副作用モニター情報〈478〉 レミニール錠による心ブロック
軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対して処方されることが最近増えているのは、ガランタミン臭化水素酸塩(商品名:レミニール)を含めドネペジルやリバスチグミンといったコリンエステラーゼ阻害剤です。
これらの薬剤は副交感神経を興奮させるため、迷走神経の作用を強め徐脈を助長し、神経心臓性失神に至る場合があることが知られています。関連した重大な副作用には、失神、徐脈、心ブロック、QT延長があります。
当モニターには、過去3年間で16件(複数症状1件含む)の副作用報告がありました。内訳は食欲不振、悪心、嘔気・嘔吐、下痢の消化器症状が8件、発熱、咳嗽、頭痛、傾眠、振戦(ふるえ)、異常行動、易怒性亢進(怒りっぽくなる)が各1件、ふらつき2件、意識消失2件です。
今回、新たに心ブロックの副作用が報告されました。
症例)80代、男性。高血圧、前立腺がん、アルツハイマー型認知症。レミニール錠、ミカルディス錠、ビカルタミド錠を服用中。呼吸困難、食思不振で入院。心臓超音波検査中に左側臥位になると、洞不全症候群となり完全房室ブロックが出現。心拍数が30台まで低下し、呼吸困難が生じた。レミニール錠の副作用を疑い中止。中止4日目、心電図モニター上は変化なし。心音は整、雑音なし。中止18日目、完全房室ブロックの出現なし。心音は整、雑音なし。呼吸困難の訴えも減少。中止32日目、ホルター心電図で左側臥位でも不整脈の出現なし。心拍数70台で経過し、退院した。
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コリンエステラーゼ阻害剤を継続使用する場合には、病態そのものを抑制する薬剤ではないことを念頭に、それらの薬剤による不整脈、特に徐脈が発現する可能性に注意しましょう。
(民医連新聞 第1644号 2017年5月22日)