【新連載】21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
抗甲状腺薬のチアマゾール(商品名:メルカゾール)による顆粒球減少症の重症例(無顆粒球症=顆粒球数が500個/μL以下に減少)
症例)バセドウ病に処方され、服用開始1ヶ月で咽頭痛、発熱(38℃以上)などの症状が出現、白血球1,210個/μL、好中球12.8%のため入院。メルカゾールの服用中止後、9日で軽快、ヨウ化カリウムの治療へ切り替えた。
チアマゾールによる顆粒球減少症の発症は、免疫学的機序によるものと考えられており、その発現頻度は0.2%と低いものの、重篤な副作用として既知のものです。顆粒球減少症の発症は本症例のように患者からの初期症状(他に悪寒、口内炎、倦怠感など)の訴えにより確認できる場合と、症状のないまま定期的な血液検査で確認される場合があります。発症は突発的で予測は困難ですが、薬剤の中止、早期治療などで回復します。副作用の重篤化を防ぐためにも、患者への十分な説明と定期的な白血球数(血液分画も含めて)の測定が望ましいといえます。また、抗甲状腺薬による顆粒球減少症はチアマゾールとプロピルチオウラシルの交差アレルギーが確認されているため、副作用発現後の薬剤の切り替えには注意が必要です。
(民医連新聞 第1199号 2000年1月21日)
2015年末までには、白血球減少症として7件、好中球減少症(顆粒球減少症と同義語)として5件、無顆粒球症に至った症例は本症例を含む2件の報告が寄せられています。
2016年7月現在の当モニターへの報告は、メルカゾール全体としては、発疹、薬疹などの皮膚障害が圧倒的に多く65件、薬剤性肝障害が46件、痒み33件、白血球減少13件、好中球減少5件、脱毛6件、発熱4件と続きます。
もう一つの抗甲状腺剤のプロピルチオウラシルでは、発疹などの皮膚障害が11件、薬剤性肝障害が5件、白血球減少が4件、脱毛、苦みが各3件、という状況で、頻発する副作用については同じ傾向のようです。滅多に使う機会はないとは思いますが、ヨウ化カリウムでは薬剤性肝障害2件、発疹1件でした。
画像提供 東京民医連 (株)城南医薬保健協働
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**新連載ご案内【薬の副作用から見える医療課題】**
全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。
(下記、全日本民医連ホームページで過去掲載履歴ご覧になれます)
https://www.min-iren.gr.jp/?cat=28
<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>
2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
4.睡眠剤の注意すべき副作用
5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
8.抗パーキンソン薬の副作用
9.抗精神薬などの注意すべき副作用
10.抗うつ薬の注意すべき副作用
11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
12.点眼剤の副作用
13.消化器系薬剤の様々な副作用
14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
15.抗不整脈薬の副作用
16.降圧剤の副作用の注意点
17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
18.脂質異常症治療薬の副作用について
19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
21.抗甲状腺ホルモン薬の副作用
<【薬の副作用から見える医療課題】続報〔予告〕>
22.排尿障害治療薬の注意すべき副作用
23.産婦人科用剤の副作用
24.輸液の副作用
25.鉄剤の注意すべき副作用
以下、60まで連載予定です。
★医薬品副作用被害救済制度について
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◎民医連副作用モニター情報一覧
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/k02_fukusayou/
◎「いつでも元気」連載〔くすりの話し〕一覧
https://www.min-iren.gr.jp/ikei-gakusei/yakugaku/zy1/k01_kusuri/index.html
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