声明・見解

2003年4月18日

【声明2003.04.18】国庫負担を増やさない「医療改革」は改革の名に値しない―「医療保険制度体系および診療報酬体系に関する基本方針」への民医連の見解―

2003年4月18日
全日本民主医療機関連合会
会長  肥田 泰

 3月28日、政府は「医療保険制度体系および診療報酬体系に関する基本方針」を閣議決定しました。この「基本方針」は、「制度の改革を総合的に推進す る」としていますが、そもそも医療制度を困難にしている原因は、国庫補助を削減してきたことにあり、医療への国庫負担を増やさない改革は「改革」には値し ません。
 80年代以来のあいつぐ医療改悪で、国民皆保険制度はすでに空洞化がはじまっています。保険証が取り上げられたり、保険証が渡されない人が多数うまれて います。自己負担の増加が病気でも医療機関にかかれない人をつくっています。また、保険給付も特定療養費の拡大で限定・縮小化されています。医療制度の改 革で求められるのは、この空洞化をなくし、いつでもどこでもだれでもが安心して医療が受けられる皆保険制度を再構築することです。
 政府・厚労省による「基本方針」のめざす方向は、医療への国の責任を放棄し、国民負担増を基本に公的医療保険の縮小と私的保険の拡大・営利化を進める方 向です。
 私たちは皆保険制度を守り改善させる立場から、この「基本方針」の撤回と見直しを強く求めます。

 現在の医療保険制度の主な問題点は、
 第1には、高齢者も現役世代もその負担能力を超える患者窓口負担と保険料の増大です。
 第2には、欧米諸国と比して異常に高い薬などの「医療費のムダ」があります。
 第3には、いきすぎた医療費抑制が患者の受療権を奪っていることです。
 第4には、安全・安心の医療をもとめる、国民や医療従事者の要望が反映されていないことです
 今回の「基本方針」はこうした課題の改善を進めるものではありません。

 「基本方針」では、

  1. 国保・政管健保と組合健保の一部を、都道府県単位の保険者に一元化することをめざしています。これは、 国の財政責任を大きく削減する事を企図していることは明らかであり、都道府県ごとに保険料負担の増加や保険給付・医療サービスの縮小など、大きな格差をも たらすことが懸念されます。
  2. 新たに高齢者医療保険制度を創設するとともに、65歳以上の高齢者は保険料が徴収されます。
    また、75才未満は2割負担、現役世代も保険料負担が増えるなど、国民への大幅な負担増を求める内容です。
     とくに、高齢者の保険料は当面1割程度としていますが、厚労省試算では月額7250円と試算されており、介護保険料と合わせて月額1万を超える負担とな り、高齢者の生活を一層深刻なものにします。また、高齢者医療保険の5割は公費負担としていますが、新たな財源として消費税増税が浮上してきています。
  3. 診療報酬体系の見直しでは、特定療養費制度の拡大をすすめ、保険給付をさらに縮小限定化します。また、包括化・定額制拡大による点数引き下げと医療機関の機能別再編成を推進する方向が強く示されています。
     さらに、「安全・安心の医療」のためには、医療機関の経営の安定と医療への人的な体制を強化・充実が不可欠です。しかし、基本方針ではこうした視点が欠 けており、改善への逆行ともなりかねません。

 私たちは、国民のいのちと健康を守る立場から、憲法25条に示された基本的人権、生存権を保障し、安心して受けられる国民皆保険制度の改善と拡充を強く 求めるものです。

以上

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