民医連新聞

2015年10月6日

フォーカス 私たちの実践 通所介護での機能維持 石川・有料老人ホームひだまり 個々の利用者に合わせて リハビリを見直して

 石川・有料老人ホームひだまりでは、二〇一二年の介護報酬改定に伴い、通所介護の利用時間を延長しました。利用者が疲労を感じないよう日課表を見直し、一人ひとりの状態や思いに添ったリハビリを行うことに。その結果、利用者だけでなく職員の活気も引き出すことができました。機能訓練指導員の谷口律子さんに聞きました。

 有料老人ホームひだまりでは、三六五日、通所介護を行っています。五〇人弱が利用し、一日二五人程度がリハビリを行います。介護度が高く医療必要度の高い利用者が多いため、リハビリの主な目的は心身の機能維持です。利用者や家族も「一日でも長く今の状態で楽しく過ごしたい」と望んでいます。

■報酬改定を機に

 二〇一二年の介護報酬改定に伴い、通所介護では九時三〇分から一五時四〇分までだった利用時間を一時間延長しました。この延長で利用者の体調に気を配ることがさらに必要になり、日課表も見直しました。
 見直し前は、通所介護に来てから寝ている利用者も少なくなく、体操やレクリエーションなどにはなかなか全員は参加できませんでした。その状況を見ている職員もリハビリに積極的になれません。「高齢だから、仕方がない」という気持ちで、利用者たちの持っている力や思いを理解する姿勢になれませんでした。リハビリの内容も担当職員任せでした。
 そこで、まずは職員が利用者に声をかけ、起きてもらうことから始めました。繰り返し声をかけていると、傾眠がちだった人が変化し、レクリエーションにも参加するようになりました。内容も見直し、午前は体操を午後は脳のトレーニングを主に行うようにしました。体操は統一した資料を作り、基本運動、ストレッチ、筋力アップを歌体操とともに毎日実施しました。レクリエーションは記録をつけ、種類を増やしバランスよく予定を組みました。利用者の参加状況や身体状況、認知症の程度を考慮して補助を行い、全員参加できるようにしました。

■具体的な変化

 要介護3、認知症の八〇代の女性は、引きこもりがちでした。車いす生活ですが、本人には歩ける自信があり、実際に少し歩くこともできましたが、その力を出す場面がありませんでした。そこで、職員が繰り返し声をかけ、レクリエーションに出ることを促し、出歩く機会を作りました。今では、毎回レクリエーションに参加し、笑顔や他の利用者さんたちとの会話も増え、歩行器を使った歩行にも楽しんでとりくんでいます。
 要介護5、脳梗塞後遺症の九〇代女性は、おむつを使うことに屈辱を感じていました。観察すると、立位保持ができている時間がもう少し長く維持できれば、介助でトイレ排泄が可能になると見込まれました。立ち上がり訓練を行って筋力を強化し、変形性膝関節症の状態を本人にも理解してもらって、バランスが保てるようになりトイレでの排泄ができるようになりました。

■利用者も職員も笑顔に

 利用者が積極的になり、できることが増えてくると、職員もやりがいを感じました。「次はこれをやってみよう」「この人はここをささえてあげれば、ゲームにも参加できるのでは?」などと、職員同士が工夫しながら利用者に合ったリハビリを考えるようになりました。利用者も笑顔になり、それを見る職員も笑顔になりました。
 「できないから」と足踏みしていた利用者も、職員が「やってみよう」と声をかけささえることで、積極的にとりくむようになりました。一人ひとりの身体や認知状況に応じて関わり、意欲や自信を引き出すことが重要です。今後も、向き合えば応えてくれる利用者の生きるささえであり続けたいと考えています。

(民医連新聞 第1605号 2015年10月5日)

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