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副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

副作用モニター情報〈437〉 鉄の投与は計画的に

 鉄剤は、鉄不足による貧血などに対し用います。長期服用により、鉄が肝臓へ過剰に沈着する副作用が報告されました。
 症例)70歳代男性。クエン酸第一鉄製剤(鉄として50mg)を毎日、少なくとも7年以上服用していました。肝細胞癌を疑われて受診すると、MRIの画像診断では肝臓の半分が真っ黒(鉄は黒く描画される)、血液検査ではフェリチンが大幅に基準値を超えていました。鉄の過剰摂取を指摘され、鉄剤の服用を中止。幸運にも肝細胞癌は一部だけで、3カ月後に切除。その他の病変は慢性肝炎の再生結節で、肝硬変の原因特定は困難と診断されました。

 消化管から吸収された鉄は、ヘモシデリンと結合して肝細胞に蓄えられます。門脈周囲で増殖した肝細胞はゆっくりと肝中心静脈に向かって移動し、その周囲で一生を終えます。その時、肝臓内のマクロファージであるクッパー(Kupffer)細胞が、肝細胞の崩壊で放出されたヘモシデリン‐鉄結合物を貪食します。そのため、鉄は肝中心静脈周囲に集中します。肝硬変やC型肝炎の場合、なぜか肝臓に鉄の過剰沈着が起き、肝機能の悪化を招きます。
 注射剤では鉄の過剰投与を防ぐため、必要量を計算して投与計画を立てますが、内服の場合は総投与量が決められません。適時、フェリチンでの確認が必要です。たかが「鉄」ですが、病態を考慮し、漫然と投与しないよう、注意が必要です。

*   *

 ちなみに、肝臓に良いと宣伝されているウコンには、製品による違いはありますが、100gあたり20~30mgの鉄が含有されています。摂取量と期間によっては、かえって肝臓に悪影響を与えますので、サプリメントでの鉄分摂取にも注意を払いましょう。

(民医連新聞 第1596号 2015年5月18日)