民医連新聞

2014年9月15日

第1回 評議員会の発言から

 全日本民医連第一回評議員会(八月二三、二四日)での発言要旨を一部、紹介します(敬称略)。

県知事選について

沖縄・座波政美

 一一月一六日に県知事選挙があります。辺野古で二〇〇〇人を予定していた基地移設反対集会は三七〇〇人が集まり大成功でした。私たちは、知事選挙に立候補の意志を表明した翁長雄志那覇市長を基地移設反対の一点で応援します。
 翁長氏は仲井眞知事の辺野古承認を厳しく批判し、昨年、東京で開かれたオール沖縄の集会で「沖縄県民は目覚めました。もう元には戻れません」とスピーチ しました。県内の経済界の一部も支援し、保守・革新入り乱れた選挙戦です。
 沖縄民医連も八月一日、六八〇人という過去最大規模で決起集会を行いました。支援をお願いし、経験を持ち帰ってほしいと思います。

憲法学び守る

鳥取・斎藤基

 憲法を学び、改憲策動の本質を見抜く目を養い、何をしなければならないか、認識を一致させようと七月三一日午後、病院を一斉休診にして、東北大学の日野秀逸名誉教授を講師に招き大規模学習会を開催。職員三五三人が参加しました。
 学習会に先立ち職員に実施した憲法アンケートには五九六人が回答。憲法全文を読んだことのある人が六%、「一部」は七一%、「読んだことがない」が二 一%。憲法を「国の権力者を規制する」と回答したのが四八%、「国民を規制する」が三四%、未記入は一八%でしたが、二九歳以下の五一%が「国民を規制」 と回答しており、年代で認識の差がはっきり出ました。
 過去最高を超える署名対話を行う構えで、集団的自衛権行使容認閣議決定の撤回署名に七万筆の目標でとりくむ準備をしています。

無低診で命守る

栃木・天谷静雄

 全日本民医連の経済的事由による手遅れ死亡事例は「昨年度二二県連から五六例」とのことですが、集約県連が少ないと思います。栃木もかつて未集約県でしたが、無低診を始め専任相談員を置き、今回三人の事例を報告しました。
 無低診の実績は毎月数例で、持ち出しは年約一〇〇万円。最近こんな事例がありました。▼兄と二人暮らしの五〇代男性は家業の帽子屋がうまくいかず二階に 閉じこもり、衰弱して動けなくなったが医療費がなくそのままにされていた。過去に一番上の兄が部屋で死んだため、それだけは避けたいと、同居の兄が市に相 談し協立診療所に救急搬送された▼うつ病の妻と子どもの四人暮らしで失業した六〇代男性のケース。体調不良に三カ月耐え、意識低下で済生会病院に搬送され 肺ガンの肝転移と判明。退院後、協立診が在宅管理し、六日後に死去。
 他病院との連携、市からの相談など、小規模事業所でも民医連の役割が高まり、確信にしています。
 中長期計画では相談員増員と地域ネットワークづくりも展望。人権のアンテナの感度を高め、職場ぐるみで気になる事例の追跡と援助を行いたいと思います。

診療報酬改定の影響

北海道・加地尋美

 今年度の診療報酬改定で七対一病床の算定要件に「自宅等退院患者割合七五%」という高い復帰率が新設され、患者や看護師に影響が強く出ています。
 とくにDPC病院では、主病名にかかわらない治療や積極治療にならない患者に「即退院」をすすめる状況を生んでいます。急性期病院二カ所と連携する西区 病院では、昨年一一月から、がん終末期の一二人の患者が簡単な手紙一つで受診し、三日~三カ月で亡くなりました。手紙は共通して「診断はついたが手術不適 応、化学療法・放射線治療も希望せず、緩和目的」とあり、四人は病名告知もされていませんでした。家族は説明を受けたが今後の具体的な療養も考えられない 状況。病名と積極的治療がないことと「あとは他の病院へ」と告げられ、大きな不安を抱えていました。一二人全員が新患でした。
 七対一の算定要件に合わない患者の受け入れ制限や無理な早期退院の促進で重症患者が増え、看護師は疲弊します。事実を明らかにし運動につなげます。

特養入所要件の改悪

岡山・井場哲也

 民医連が「無差別・平等の地域包括ケアシステム」の構築を呼びかける一方で、厚生労働省がすすめる地域包括ケアの一つのあらわれが、特別養護老人ホームの入所要件を要介護度3以上に原則限定する問題です。
 要介護1、2の軽度でも、実際はサ高住などに入れない低所得、認知症、単身者など特養入所が必要な人は多くいます。入所者のうち要介護度1、2の割合は 一割程度ですが、厚労省調査では、待機者五二万人の三四%が要介護度1、2。ニーズは多いが入所できていないのです。これをさらに厳格化すると、軽度者を 「地域に拘束するケアシステム」になります。
 同時に特養入所者の重度化がすすみます。私のいる岡山中央福祉会の特養二施設でも平均が要介護度4以上。ところが特養の基準は医師配置は週一回半日、看 護師は八〇人定員で四人、二九人未満は一人、夜間はゼロ。このままでは介護職が疲弊し、民医連の掲げる「人間的な発達ができる職場づくり」にも影響しま す。

経営再建について

高知・今井好一

 二〇一一年六月に高知医療生協の専務理事になりました。当時の年間収益は二四億円で、累積 欠損七億円、年度末までに四人の医師が退職し、三〇年以上続いた診療所を年度末に閉鎖。「このままでは一年以内に資金ショート」という深刻な事態でした。 全日本民医連に高知医療生協経営対策委員会の設置を依頼したのが二年三カ月前です。
 経営危機の要因は、(1)経営構造の転換ができなかった(2)多額の資金流出(退職金が多くを占める)を止められなかった(3)民医連統一会計基準に基 づく会計処理をしていなかった(4)中長期の資金計画が未作成だった(5)我流から脱却できなかったことなどです。担当者に運営を任せきりで、経営責任を 負う幹部集団の自覚や全国の方針に真摯に学ぶ姿勢の弱さなどがあります。
 経営再建のスタートラインに立てたのは、まず経営幹部と理事会が経営実態を認識し、潰さない覚悟をしたこと。そして経営再建の中長期計画をつくり、目標 を明確にし全職員が奮闘したこと。全日本民医連に結集し、対策委員会や公認会計士の指摘事項を率直に受けとめたことにあります。

医師養成と現状

福島・北條徹

 福島市のわたり病院には、これまで医師八五人、看護師六四人、リハ六人、臨床工学士三人の全国支援をいただいています。郡山市の桑野協立病院にも、月一回の日当直支援、いわき市の小名浜生協病院では、一〇対一看護体制の維持に支援してもらいました。
 臨床研修病院わたり病院での初期研修の来年の決意者が四人になりました。五人枠で四人は県連史上最高です。また昨年入った初期研修医が、当院での後期研 修を決意。他県から支援医師が一人入ることで、医局の研修医を育てる雰囲気が高まりました。オール民医連の力です。医局の半数が六〇歳以上、研修医以外 は、二〇代で三〇代がいませんが、被曝地福島の民医連医療の担い手を全力で育てねばと思っています。
 昨年度は七一の民医連、医療生協の福島視察団(二一六〇人)を受け入れました。評議員会方針に「鍵は福島の現実を見続けること」とあるように県連と全日本民医連との共同視察などをできる限り続けます。
 県内外には一二万五〇〇〇人の避難者がいます。今年三月、八九人の子どもに甲状腺がんやその疑いが確認されました。事態を監視し、ひとりひとりに寄り添い、医療・介護と健康を守りたい。
 皆さんの協力で導入したホールボディーカウンターが二月から稼働、三〇〇人が検査しました。FTFや食品線量計も使っています。安倍内閣は原発の再稼働 を狙っていますがこれほど福島県民の心を傷つけることはなく、福島の不幸が全国に広がる可能性もあります。一〇月に行われる県知事選挙では、オール福島の 願いを国に対してはっきり言える県政確立が重要で、一一月の沖縄知事選に先立つ重要な政治戦です。

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