民医連新聞

2014年8月18日

フォーカス 私たちの実践 集団で歩行・立位練習 福岡・介護老人保健施設 くろさき苑 一緒に練習「1、2、3」 利用者同士で励まし合って

 デイケアでのフリータイムを有効に使えないか…。福岡・介護老人保健施設くろさき苑では、それまで、利用者ごとに個別に行ってい た歩行や立ち上がりの練習を集団で行うことにしました。参加者には、とりくみを記録するノートも発行。利用者同士が声を掛け合うなど交流もすすみ、意欲の 向上にもつながっています。

 大牟田市にあるくろさき苑の通所リハビリ(デイケア)の利用者は、平均で五五人前後。平均要介護度は2・3です。
 午前中は四肢体操などにとりくみますが、昼食後から午後二時半までのフリータイムは、ずっとテレビを見ていたり、何もせずに過ごす利用者の姿が目立ちま した。個別に歩行練習を行っていましたが、スタッフの手が足りず、待ち時間も長いため、参加する利用者は少なく、リハビリ機器が空いていることもありまし た。
 そんな中、リハビリスタッフから「個別での練習には限界がある。集団でとりくめば目も届くし、孤立しがちな男性利用者の交流にもなるのでは?」と提案があり、とりくむことにしました。

「あんたにゃ負けんばい」

 利用者が自宅で快適に生活するためには、「両足での立位保持」「歩行」「移乗」「立ち上が り」「起き上がり」「足をつかない座位保持」などが重要です。そこで集団での練習内容は、平行棒を囲んで利用者が並び、立ち上がりと足踏みをすることにし ました。同法人内の病棟で使っている「自主練ノート」からヒントを得た「わくわくノート」を作り、利用者に配布。その日のとりくみを記入し、「がんばった ね」「この調子」とスタンプを押すようにしました。
 集団練習を始めた二日後には、もともと社交的で積極的な利用者が周りの人に声をかけたり、「今日は足踏み一〇〇回にしよう」と音頭をとってくれるように なりました。練習はトータルで二〇分ほど。「テレビばっかり見らんで一緒にすっばい」とほかの人を誘ったり、「あんたにゃ負けんばい」「がんばれ、がんば れ、あと五回!」と利用者同士で声をかけ、励まし合うようになりました。
 個別に練習していた時は「私はいい」「ほかの人が待っているし…」と遠慮していた人も、みんなの様子に誘われ、次第に参加者が増えてきました。普段は気 の合うグループのメンバーで話したり行動したりすることが多いのですが、この練習を通じてグループを超えて交流が広がっています。

自宅でも身体を動かすように

 「わくわくノート」は利用者の意欲を引き出すと同時に、家族からも「デイケアでの様子がよく分かった」と好評です。
 家族から「デイケアのない日は廊下で歩行練習をするようになった」「ベッドに座って足踏み練習をしている」「家に帰ると横になることが多かったが、起き 上がったり座ったりしている時間が長くなった」との報告も増えました。デイケアでの練習が、在宅生活でも意欲的に身体を動かす動機になっています。
 認知症があり、ぼんやりしていることも多い男性の利用者さんが、ある日、送迎の車を待っている時に突然、自ら平行棒で体操を始める、ということが起きま した。介護福祉士の堀上直樹さんは、「皆さんでやっていることが刺激になったのでしょうか。スタッフ一同、驚き、嬉しかったです」と話します。
 堀上さんは、「引き続き、利用者や家族の要望も取り入れ、在宅生活の維持・向上に向けた活動をすすめたい」と話しています。

(民医連新聞 第1578号 2014年8月18日)

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