いつでも元気

2014年8月1日

元気スペシャル/大飯再稼働に“待った”/福井地裁が住民側勝訴の判決

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福井の中心街をデモ行進。福井地裁(背景)では「感謝のアピール」をすることも

「生命最優先に」の訴え認める

 福井地裁は五月二一日、“大飯原発(関西電力)三・四号機の再稼働を認めない”とする画期的な判決を言い渡しました。この裁判は東日本大震災後、国民の反対を押し切って再稼働された大飯原発三・四号機の運転差し止めを求め、福井県などの周辺住民らが関西電力を訴えたもの。
 同原発は、昨年九月から再び定期検査のために停止しています。今回の判決は、政府や電力会社などがねらう“再・再稼働”の動きに「待った」をかけるものとなりました。

 「判決を傍聴席で聞いていて、涙があふれた」
 こう語るのは、原告の一人で原発問題住民運動福井県連絡会の奥出春行さん(福井県民医連元事務局長)です。
 二〇一一年に起きた福島第一原発事故で、奥出さんは「認識を根底から揺さぶられる」ほどの衝撃を受け、「日本の原発の二六%が集中する福井県でこそ」との思いで、脱原発運動と裁判闘争に力を尽くしてきました。
 「判決は『生存を基礎とする人格権が、すべての法分野において最高の価値を持つ』として、運転差し止めを認める根拠にしました。私たちが『生命より大切 なものはない』と訴えてきたことが認められたわけで、とても感動しました」
 “原発を再稼働させないと電力のコストが上昇し、国富が流出する”などの主張に対しても、判決は「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活しているこ とが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失」だと明確に反論しています。
 奥出さんは「生命や安全よりも経済やコストを優先する勢力を明確に批判した。『国家や国土は誰のためにあるのか』ということを正面から問いかけた、普遍的な価値を持つ判決です」と指摘します。

運動と理論の力に確信

 判決当日に関西電力は控訴しましたが、“地裁判決の裏には、運動の力があった”との確信が広がっています。
 六月一三日、福井県庁前ではさまざまな人たちが入れ替わり立ち替わり「脱原発」を訴えていました。“ランチタイムアピール”をしていた石森修一郎さんは 「(判決は)私たちの運動や理論がないところで、裁判官が急に思いついたものではない。裁判官を納得させた運動と理論の力に確信を持ちたい」と。
 石森さんは「原発から住民の命と安全を守る連絡会」のメンバー。昨年の八月一五日から宣伝をはじめ、「雨の日も雪の日も、平日は毎日続けてきた」と言い ます。この日で宣伝は、二〇三回目を数えました。「次世代に安心して住める社会を手渡すため、『原発ゼロ』(注)の状態を継続させたい」と石森さんは力を 込めます。
 同じ日、一七時からは「再稼働反対」の横断幕を掲げたデモ隊が県庁前を出発。デモに参加した岩国英子さんは、原告の一人で、越前市から車で一時間かけて来たのだとか。
 「フェイスブックで友人・知人に行動のようすを伝えています。簡単ではありませんが、共感は広がっている気がします。判決は私たちの訴えてきたことが正しいと言ってくれて、力になった」
 一八時からおこなわれた「金曜行動」は、この日で一〇〇回目。二〇〇人超が参加しました。車いすで来た初参加の山内敬一郎さんは「原発事故が起きれば、 容易に避難できない障害者がもっとも犠牲になる。原発はいやです」と。同じく初参加の前田祐朋さんは「こんなにたくさんの人が声をあげているんですね。裁 判闘争は続きますが、力を合わせて勝ちたい」と話してくれました。

生命を大切にする経済へ

 一方で、原告一八九人のなかに、大飯原発の立地自治体・おおい町の住民が一人もいないという課題もあります。「原発が集中する若狭湾周辺の住民も数えるほどです」と奥出さん。
 二〇一二年、原発問題住民運動福井県連絡会がおおい町でとりくんだ全戸訪問では、「原発がなくなったら、どうやって生きていけばいいんだ」との声が圧倒 的で、「再稼働反対」に共感を示す住民は全体の一割にすぎませんでした。
 奥出さんは「原発は廃炉が決まっても、廃炉作業自体に四〇~五〇年かかるため、雇用を生み出す。そのことがまだ知られていない。代替エネルギーを普及さ せれば、さらに雇用は創出されるし、地域経済を活性化することができる。今回の判決の中身を多くの住民に広げて、人間の生命を何よりも大切にする新しい経 済の展望を、説得力を持って語らなければ」と前を向きました。

文・武田力記者/写真・酒井猛


川内原発も再稼働させない!

鹿児島県庁前に1000人超

 川内原発の再稼働に必要な“地元同意”のカギを握る鹿児島県議会が開会した6月13日、県庁前で「川内原発再稼働反対集会」が開かれました。主催は「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会」実行委員会。
 同県薩摩川内市の川内原発1・2号機は、全国の原発再稼働“一番手”に位置づけられており、この日1000人の参加者が県庁前で「再稼働するな」の声をあげました。

「知事、再稼働をやめて」

 集会は午前9時に約700人が参加して開会。10時からは、参加者のうち約100人が県議会本会議を傍聴しました。伊藤祐一郎知事は、県政全般について 淡々と説明するだけで、焦点になっている原発再稼働や避難計画について、「国が安全性を保証し、住民に説明をおこなう」との従来通りの見解を述べるにとど まりました。
 しかし、川内原発の避難計画は30キロ圏内しか策定されておらず、障害者などの「要援護者」の避難は想定されていないなど、大変ずさんで無責任なもので す。本会議終了後、傍聴席から「知事、再稼働をやめて」と声があがり、たまりかねた他の傍聴人からも拍手がわきおこりました。
 11時からは、知事と県議会各会派に対する要請行動。代表団が知事に再稼働反対署名12万3364人分を直接手渡そうとしましたが、知事は面会を拒否。 このことが午後の集会の中で報告されると、参加者から怒りの声があがりました。

原発はいのちの問題

 集会では、「原発をなくす全国連絡会」を代表して、長瀬文雄・全日本民医連副会長もあいさつ。福島第一原発から6キロ地点に住んでいた義父母のことを紹 介しながら、「今も福島県では13万人が避難し、東京23区の2倍に相当する範囲に人が住んでいない。原発はエネルギーや経済の問題ではなく、いのちの問 題。原発と人間は共存できない。さらに声を大きく広げよう」と訴えました。
 その他、全国各地のとりくみの紹介や連帯・激励のあいさつに、共感の涙・笑い・怒りが広がりました。途中、「参加者が1000人を超えた」と報告されると、会場はさらに盛り上がりました。
 終了後、九州電力鹿児島支社に向かってデモ行進し、再稼働をやめるよう申し入れをおこないました。

(鹿児島民医連事務局長・井上勇治)

いつでも元気 2014.8 No.274

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