民医連新聞

2014年7月21日

変革の先頭に立とう 地域包括ケア時代に向けトップが交流 14年度診療報酬改定 病院・院長検討会

 六月一四日、全日本民医連は「二〇一四年度診療報酬改定病院・院長検討会」を東京都内で開きました。病院長、総看護師長、事務長 など病院のトップ幹部二九四人が参加しました。会議の目的は「二〇二五年医療・介護サービス提供体制改革」を見通し、民医連病院の経営ビジョン、中長期方 針、戦略などの具体案や実践をもちより、変革と創造に踏み出していく交流・議論を行うことです。(田口大喜記者)

 二〇一四年度診療報酬改定は、実質マイナス改定です。さらに七対一入院基本料の施設基準に「在宅復帰率七五%以上」が加わったことが大きな特徴。算定要件を厳しくすることで、医療費の高い七対一病床を減らし、医療費削減をしようという政府の狙いが反映しています。
 全日本民医連の吉中丈志副会長が問題提起、今回の診療報酬改定の特徴や、現場への影響、対応の動向などにふれました。そして、「今回の診療報酬改定は、 政府の『二〇二五年医療・介護サービス提供体制改革』の本格的な第一歩となった。大きく動きだしている地域医療の中で、民医連病院の存在意義と役割を確認 し、地域包括ケア時代に住民本位の医療・介護をリードするために、変革と創造に踏み出すときだ」と呼びかけました。

四人が指定報告

 全体会では四病院から指定報告がありました。
 京都民医連中央病院(四一一床)の内田寛事務長は、自院のポジショニングに地域包括ケア時代に対応する視点を加え、「京都市北西部の地域医療を担い、 “包括ケアを支援する”民医連立の急性期・教育病院」と掲げたことを紹介しました。その上で、二〇二五年を見据えた病棟再編をどうすすめようとしているか について報告しました。
 愛知・千秋病院(二九四床)の朝井哲二院長は「二〇一四年度診療報酬改定とケアミックス病院の選択」と題して報告。高齢者施設を運営するグループ内の社 会福祉法人などとともに、地域の後方支援病院として役割を果たしています。三月から毎週、法人と病院管理者が中長期計画の検討会を重ねていると紹介しまし た。
 島根・松江生協病院(三一一床)の高濱顕弘院長は、高齢化する地域で安心して住みつづけるためのまちづくりビジョンを、事業所、医療生協組合、地域とともにうち立てようとしている視点を語りました。
 東京・中野共立病院(一二〇床)院長の山田智医師(全日本民医連・介護福祉部長)は、入院患者を多角的に分析した結果を示しながら、地域包括ケア病床の 新たな役割について報告。「民医連中小病院の活路は機能分化と連携、質向上、法人内外の地域連携です」と語りました。また地域包括ケア病床にかかわる報酬 と現場の乖離を検証し、再改定を求める運動を行おうと呼びかけました。

課題出し合う

 午後からは機能別・職種別の七グループで分科会。次のような討議がありました。
 急性期病院では新入院の確保でどの病院も苦戦しています。専門医の確保と育成についても共通課題として出されました。在宅復帰率のクリアを意識した退院 支援は院内連携が重要で、特に看護分野では急性期から在宅を見据えることができる看護師養成が必要だとの意見もありました。
 材料費低減の課題は、全国的な検討が急がれるとの問題提起もありました。五二七床の福岡・大手町病院は、消費税増税分で年間一億円もの負担増となり、影響が深刻だと訴えました。
 一般・ケアミックス病院では七対一看護体制の維持が厳しく、一〇対一、一三対一への変更を検討している病院が多数でした。病棟転換することでスタッフの モチベーション低下を懸念する声も出ていて、これには、「病棟の呼び方が変わろうとも患者を第一に考え、民医連の医療・看護に確信を持つことが大切」との 視点が示されていました。病棟・看護管理は目まぐるしく変化する情勢をスタッフに伝えることも重要だが、中長期を見据えた病院のビジョンを明示し、理解を すすめることが第一課題だと話し合いました。

 転換が求められているいま、各地域でどのような連携が求められているのか、それぞれが掴むことが必要で、変革のリーダーを生み出す時代であることが共有 されました。民医連病院は「守るもの、捨てるもの」をはっきりさせたうえでポジショニングを明確にし、新たな連携と協同を地域の中で実現していくことが求 められている―と確認する場となりました。

(民医連新聞 第1576号 2014年7月21日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ