民医連新聞

2014年6月16日

フォーカス 私たちの実践 介護便利グッズ 岡山・玉島協同病院 医療療養型病棟 介護職のアイデアで手作り 安価で便利、患者さんにも好評

 岡山県倉敷市の玉島協同病院は三病棟五四床の医療療養型病棟です。入院患者は九〇代から一〇〇歳と超高齢の方も多く、意思疎通が 困難だったり、胃ろうの人も増えています。五感に刺激をと離床やレクリエーションも試みていますが、高齢であるために些細なことで傷ができ、移動そのもの が困難など悩みも少なくありません。そんな日常業務の中から、職員の声とアイデアを集めて数々の「便利グッズ」を生み出しました。第一一回看護介護活動研 究交流集会で発表した介護福祉士の閑野昌司さんによる、その後の報告です。

皮膚守る「腕&足カバー」

 一〇〇歳を超えるAさんは自立度C2の寝たきり状態で全介助です。車椅子への移乗はスタッ フが二人で抱えて行っていました。ところが、皮膚が弱く手すりに触れるだけで皮膚剥離を起こしてしまう問題が。レッグウォーマーを着けてみましたが、材質 のナイロン布に擦れた部分がただれてしまいます。タオルを巻く、毛布のまま移動するなど、色々試してみましたが改善しませんでした。
 その後考え出されたのが、やわらかく、肌に優しいキルティング生地を使った「腕カバー&足カバー」です。簡単に着脱できるよう、マジックテープを使い、 着衣の上から装着します。このカバーを巻いて移乗することで皮膚剥離はなくなり、さらに介護する側にも視覚的注意を促す結果が出ました。

拘縮した手に「にぎにぎ」

 八〇代のBさんは手足の拘縮が強く、指を握りしめています。そのため、手のひらに皮膚疾患 があります。手のひらの悪臭や皮膚疾患を少しでも解消するため、乾燥させたティーバックを握ってもらうことにしていました。効果はあるものの、使用頻度が 高く乾燥にも時間がかかるため、バックが足りなくなりました。
 そこで、網状の布で小袋を作成。その中にストローを小さく切って入れ、ソフトガーゼで巻いて握ってもらうことに。通気性が良く、皮膚状態は悪くなりませ ん。洗っても短時間で乾き、すぐ使えるのがスタッフにも好評です。コストパフォーマンスも良く、一個あたり三五円で作れる点も良い。同様の商品も市販され ていますが、一個一〇〇〇円前後します。

胃ろうに「ちょこっと腹巻」

 Cさん(当時九九歳)をきっかけに考案。脳梗塞後遺症の自立度C2、麻痺はあるが右手はよ く動かせる状態でした。胃ろうはつけていますが嚥下は可能で食事は口から食べられます。胃ろうボタンが気になるらしく、よく触って出血やただれを起こして いました。バスタオルを巻いたり、手袋を着けたり、ぬいぐるみを持ってもらうなど試みましたが、認知症もあって効果がありませんでした。
 そこで、抑制するのではなく、胃ろう部をカバーする腹巻を作りました。その名も「ちょこっと腹巻」。Cさんは胃ろうボタンを気にしなくなり、動いても、胃ろう部に触れても問題ない環境をつくることができました。

「いないいないカバー」

 「ハルンバッグカバー(通称:いないいないカバー)」は、尿を溜めるハルンバッグが、ベッ ドサイドにそのまま吊り下げられている状態を見て考案しました。ナイロン製でハルンバッグをそのまま収納できます。格段に見栄えが良くなり、患者さん本人 にも、お見舞いの人にも好評です。

*   *

 これらの介護用品は、介護職員のいる療養病棟だからこそ、患者側の視点で気づき、作ることができたと考えています。
 現場はいま、業務に追われる毎日です。忙しさのあまり患者さんの気持ちを置き去りにした手前勝手な業務を行ってしまいがちです。そんな時こそ介護の基本 を今一度見つめ直し、患者さんに寄り添う優しさと、ちょっとした気遣いを忘れず、努力していきたいと思っています。

(民医連新聞 第1574号 2014年6月16日)

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