副作用モニター情報〈415〉 抗ウイルス剤バラシクロビルによる急性腎不全
ヘルペスウイルスの増殖を抑えるバラシクロビル(製品名:バルトレックス)による急性腎不全が、1年間で3件報告されました。紹介します。
症例)80代、女性、体重36kg ヘルペスのため他院でバルトレックス錠500mg6錠・分3、ロキソプロフェンNa錠60mg3錠・分3で内服開始。SCr(血清クレアチニン):0.69、BUN:9.8。
投与4日目に急激な腎機能低下を起こし、紹介入院されてきた。SCr:6.19、BUN:45.7。尿蛋白(+)。CTで腎委縮なしと確認。内服薬はす べて中止。尿量少しあり。補液増量。受け答えはしっかりできるが、刺激がないとすぐに傾眠傾向となりJCS-IIレベル。
中止翌日、透析施行。終了後も意識レベル大きな変化なし。
中止2日後、促すとムセることなく、含嗽できた。
中止3日後、2回目の透析施行。開眼、意思疎通可能。覚醒も良好。
中止4日後、「はっきりわかります。数日前のことは覚えています。食事も取れます」とのこと。意識レベルかなり改善。透析不要となる。夕より食事再開。SCr2.89に改善。
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バラシクロビルは、体内でアシクロビルに変換されるプロドラッグです。経口ではアシクロビルに比べ吸収率が非常に高く、約54%が体内でアシクロビルに変換されます。
アシクロビルを静脈内投与する場合、体重50kgでは750mg/日となります。バラシクロビル1日3000mgの服用では、変換量50%で換算すると 約930mg/日のアシクロビルを静脈内投与したのと同じになり、そもそもの投与設計が多すぎました。
アシクロビルによる腎障害は、腎尿細管内でアシクロビル濃度が溶解度を超えたときに結晶化することで起こると考えられています。NSAIDsの併用例で は、腎血流量低下も影響している可能性があります。報告された症例3件中2件でロキソプロフェンを併用していました。
当モニターで再三の注意喚起をしていますが、バラシクロビルを処方する場合は、必ず用量を調節してください。特に高齢者では、血清クレアチニンが低くて も体格や年齢を考慮して減量し、鎮痛剤を併用する場合は腎血流低下作用が少ないアセトアミノフェンを使用してください。また、血中濃度の急激な上昇を抑え るために水分摂取を促しましょう。
(民医連新聞 第1572号 2014年5月19日)