副作用モニター情報〈414〉 スタチン系薬剤による脱毛
このテーマについては、本欄232回(2005年10月3日付)で報告しています。その後、17症例が寄せられたので、改めてまとめてみました。 プラバスタチン9例、アトルバスタチン8例、フルバスタチン2例、男性は年齢不明の1例だけ、女性は50代4例、60代7例、70代以上6例、不明1例で した。
スタチンの標的であるHMG-CoA還元酵素は、皮膚線維芽細胞で発見されました。皮膚の付属器官である毛髪は発生や生育について未解明な部分が多いの ですが、皮膚の生育と共通点が多く、栄養となるコレステロールの供給は、血管から受け取らなくてもスタチンの影響を受ける可能性があります。
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ここ十数年でスタチンの体内動態に関する研究がすすみ、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP family)がほとんどのスタチンに関与していることが判明しています。中でも肝臓に発現するOATP1B1が大きな役割を果たしていて、添付文書で は、ピタバスタチンとロスバスタチンは血中濃度の上昇を理由にOATP1B1阻害剤の代表であるシクロスポリンと併用禁忌になっています。OATP1B1 が阻害されて肝臓に取り込まれるスタチンの量が低下するとスタチンの血中濃度が上昇、それに伴い、皮膚のHMG-CoA還元酵素阻害作用が強くなり、栄養 となるべきコレステロールの不足によって毛質が変化、脱毛するのでしょう。
しかし、すべての症例でOATP1B1を阻害する薬物群の併用はありませんでした。232回の考察では閉経後の女性が多いのでは? との製薬企業の情報 を紹介しましたが、当モニターでも傾向は同じでした。女性ホルモンの代謝物でOATP1B1阻害作用のあるエストラジオール17βグルクロニドの影響で しょうか。
閉経後はアロマターゼの活性が高まり、脂肪組織由来の卵胞ホルモン産生が増えます。その結果、その代謝物であるのエストラジオール17βグルクロニド(生成に個人差あり)の影響でスタチンの血中濃度が上昇したのかもしれません。
(民医連新聞 第1571号 2014年5月5日)