民医連新聞

2002年12月21日

歯科診療所と地域をつなぐ 愛知・北生協歯科/ 歯みがきセミプロ講座/愛知・北生協歯科

 これまでは、少し離れた感じを持っていた歯科診療所が、医科診療所と同じくらい身近に思えてきました」。愛知・北医療生協の北生協歯科で は、6年前から始めた歯みがきの連続講座を通し、地域との距離を近づけています。秋の第3回歯科院所代表者会議でも同医療生協の理事がこのことを発言、反 響を呼びました。北生協歯科を取材しました。

(木下直子記者)

☆セミプロ講座とは?

<歯みがきセミプロ養成講座の内容>
内容
入学式 歯周病の話・歯みがきについてプラークコントロールレコード記入
歯周病の検査(レントゲン、型どり、歯周基本検査)
~北生協歯科で上記の検査をします~
☆通常の健診と同様、負担金が別途必要
歯みがきチェック、しっかり磨けるまで歯みがき
プラークコントロールレコード記入
歯みがきチェック、しっかり磨けるまで歯みがき
プラークコントロールレコード記入
口腔内写真、歯周基本検査
卒業式
1~4までの講座の振り返り・まとめ
☆セミプロ認定証の授与☆

 「歯みがきセミプロ講座」は歯みがきの方法を学ぶ連続講座です。愛知・北生協歯科で6年前にスタートし、毎年開かれています。
 毎回、歯科衛生士から正しい歯みがきを教わりつつ、歯並びの特徴や歯周病の有無など自分の口の中を知ること、歯周病の知識を深めること、歯を染色し、みがき具合を確かめる、などを行い、修了時「セミプロ」として認定される、という内容(右項)です。
 これまでで67人が受講してきました。「歯みがきセミプロ」として認定されると自分が所属する以外の班にも行き、話をする、といった役割を果たせるよう になります。認定者の多くは歯みがきのレベルアップだけでなく、歯科検診も積極的に受けるなど、口の健康づくりについての意識も 明確に高くなっています(下項)

「講座」を受けてこんなに変わった
~アンケートより~
*講座終了後、歯科受診(検診)をしたか?→ した・・・78% しない22%
*他の人に歯科検診をすすめたかどうか?→ すすめた・・・94% すすめない6%
*まわりの人に磨き方を教えたか?→ 教えた・・・78% 教えない・・・22%
*他の人にもセミプロ講座をすすめたいか?→ 思う・・・89% 思わない・・・11%

 

セミプロと一般の患者さんの(PCR)比較
  セミプロ 患者さん
平均PCR値 17.6% 38%
最低値 43.3% 79.8%
最良値 4.3% 12%
PCR値20%以下 15人中11人 20人中1人
※PCR=プラークコントロールレコード
・・・歯を染め出し、汚れの部分を数字化。数値が高くなるほど、汚れが残されていることになる

 北生協歯科では、開設当初から「歯みがき重視」を打ち出してきましたが、ここ1、2年は、半年に一度の検診が増え、最近では3カ月ごと、1カ月ごと、と患者が望んで検診を行うことが増えてきましました。
 患者数は増え、経営も安定してきました。

    ◇ 

 「10年かけて地元に建設した医科の診療所には、ゴミ一つ落ちていても、放っておけないほどの愛着があるのに、 歯科ではお客さんのような気分だった。セミプロになって、歯科が身近になった」というのは北医療生協理事の麻蒔(あさまき)美佐子さん。3年前に「セミプ ロ」になりました。
 最初は「理事として義務に近いような気持ち」で受講したものの、口の健康や歯磨きの大切さを知る驚きの連続でした。またその驚きは、歯科医療にとりくむ職員の姿にも向けられました。「こんなに患者のことを考えてくれていたのね」。

    ◇

 講座の発端になったのは「受診した患者さんにせっかく歯磨き指導をしても、身につけてもらえない、どうしたらい いだろうか?」という歯科スタッフの悩みからでした。セミプロ講座のとりくみの中心を担ってきた衛生士長の水野雅代さんは、「口の健康づくりの情報をこち らが流し、受けてもらうだけでは、テレビや雑誌とかわりがない。『自分たちが健康づくりの中心だ』と組合員さんたちに実感してもらうために『実践』をして ほしくて、講座を提案しました」と、話します。
 また「歯科医療全体は従来の治療中心から、予防中心へと変わりつつありますが、まだ『生き残りのため』という、医療側の都合が先行していないか、と思う ことがある。患者さん一人ひとりが、自分から積極的に口の健康管理をしてくれるようになるか、という点もねらいなんですが」とも。
 今年、北医療生協の保健活動のテーマに「歯と健康」が決まりました。職員は衛生士を中心に、積極的に支部や班の集まりに出向いています。「25ある支部 の、すべての総会で、衛生士が参加して、発言してこよう」と努力し、実際に発言してきました。
 歯科の外でなら、質問や話したいことをいっぱいぶつけてくる患者さんや組合員さんが多いことも分かってきました。「若いスタッフが多いなか、こういうと りくみを通じて学び、患者さんや組合員さんの生活感を少しでも汲み取れる視点が育てば」と水野さん。
 いま同歯科では、月に1度「院所利用委員会」が開かれ、患者の声から発信された日常医療の振り返りや、快適な治療環境づくりへの話し合いが活発にすすんでいます。

(民医連新聞2002年12月21日/1296号)

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