民医連新聞

2002年11月21日

意図的に“改憲”強調/ 「憲法会議」川村事務局長に聞く/ 衆院憲法調査会 「中間報告書」の問題点

 11月1日、衆院憲法調査会はこれまで2年半余りの議論を「中間報告書」とし、共産党、社民党が反対するなか議決。綿貫衆院議長に提出しました。この「中間報告書」とは、どのような内容のものなのか、今後のねらいは何かを「憲法会議」の川村俊夫事務局長に聞きました。

(鐙史朗記者) 

「新ガイドライン」が設置の動議
 憲法調査会は、1999年の第145国会で国会法改悪強行により衆参両院に設置されました。「日本国憲法について広範かつ総合的に調査」することを「目 的」とし、調査期間はおおむね五年です。これまで「憲法制定の経過」「21世紀の日本のあるべき姿」について全体で議論し、いまは「基本的人権」「国際問 題」「国の政治機構」「地方自治」の4つの分科会で論議されています。しかし、調査会を設置する時には、「憲法と現実のへだたり」を問題にしていました が、その実態と原因の調査は、ほとんど行われていません。
 99年の国会運営は、自民・自由・公明による異常なもので、「戦争法(新ガイドライン関連法)」「盗聴法」「日の丸・君が代法」「省庁再編法」「地方分 権化一括法」「住民基本台帳法」など、平和と民主主義の根幹にかかわる重大な悪法が強行されました。
 憲法調査会の発足は、なかでも「新ガイドライン法」が大きな動機でした。
 国民を総動員して「アメリカの戦争」に参加するためには、憲法の平和的条項や民主的条項との矛盾がギリギリのところにきているため、その改悪に道を開くことが目的なのです。

調査内容を厚生に反映せず
 憲法調査会設置法案の採決当初は、憲法改悪に反対する国民の世論を恐れた結果「議案提案権をもたない」とされ、調査会が直接改憲案を作成することはでき ません。しかし、今回の「中間報告書」は、意図的に改憲論議に道筋をつけるような構成になっており、軽視できません。
 憲法前文から第10章までの条文(第11章補則以前の第九九条まで)ごとに、改憲の対象になりそうないくつかの項目を恣意的に立て、委員や参考人の発言 から「関係する部分だけを意図的に切り取って」並べたのです。調査会の委員や参考人は改憲派が多数を占めていますから、全体を読めば、必然的に改憲を強調 したものになります。
 とくに、多くのページが割かれたのは、第九条の平和主義のところです。「独立国が軍隊をもつのは当然」とか、「経済大国にふさわしい国際貢献が必要」など、「公然と戦争できる」ように九条を改悪する主張が展開されています。
 民主的条項についても、現在の有事法制論議と連動して「国を守る義務」の主張があったり、国民の生存権や国の社会保障義務をタナ上げし、「国民どうしが助け合うことを書くべきだ」などの意見もあります。
 実際の調査会の場では、こうした改憲論に対し、堂どうと反論が行われています。さらに重要なことは、この間調査会がおこなった五回の地方公聴会では、 「必要なのは憲法を変えることではなく、憲法を政治や社会に生かすこと」という意見が多数を占めたということです。調査会の議論は国民の中では多数派では ないのです。

改憲キャンペーンはねかえす運動に
 衆院憲法調査会の中山太郎会長は、2005年に最終報告をまとめる時点で意見が分かれた場合について、「両論併記ではなく、多数決で決める」と言っています。マスコミをまきこんだ改憲キャンペーンも強まるでしょう。
 改憲を許さないたたかいが重要になってきます。そのためには、私たちが憲法の内容、価値を知り、それをあらゆるたたかいで生かしていくことが重要です。
 いま民医連の皆さんは、お金がなくて受診できない患者さんの問題を解決するとりくみの最前線にいます。生存権や憲法第25条の大切さを身にしみて感じていると思います。憲法改悪許さないたたかいをさらに強めていきましょう。

(民医連新聞2002年11月21日/1293号)

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