Medi-WIng

2000年1月1日

医療研究室 喘息医療に新しい見地を開いた喘息大学のとりくみ

石川民医連 清水 巍
【石川民医連会長・喘息大学学長・城北病院副院長・内科・呼吸器】

 慢性呼吸器疾患の中で最も数の多い気管支喘息。「何とか薬に頼らなくてもいいようにしたい」という患者さんの声に応えて、金沢で発足した『息大学』。一六年間患者さんの要求に応えて、ともに喘息克服のために頑張ってきた清水医師に話をうかがいました。

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 皆さんは喘息発作を見たことがありますか。とても苦しそうな病気です。ヒューヒューゼーゼーと呼吸困難が起こり、咳 や痰を伴うことが普通です。最近の研究では、「白血球中の好酸球などが関係する炎症」が根本にあるとされています。その炎症の結果、気管支収縮、粘膜浮 腫、気道過敏、粘液分泌が起こり、気管支喘息発作になるのです。
 苦しいこの病気が慢性呼吸器疾患の中で最も数が多いのです。世界的に増加傾向にあり、一億人を越えたとWHOは発表しました。医療費の増大のみならず、 職場や学校の欠席日数の増加、生産力の損失、家庭生活を健全に営めないなどの深刻な問題を投げかけています。日本でも人口の三%(三六〇万人)以上が喘息 患者であり、年間六千人が喘息で死亡しています。九〇分に一人のわりあいで死亡している重大な病気です。
 喘息管理の国際指針が発表され、また日本アレルギー学会が喘息治療のガイドラインを決定しました。
 これまでは薬での治療が強調されていました。最近は「患者教育」が第一番目に大切だと強調されるようになりました。この「患者教育」を民医連は一六年前から大切と考え実践してきました。
 喘息大学は四年間喘息患者を経年的、系統的、集団的に教育していくシステムです。一六年前に金沢に設立され、一千人の卒業生を出してきました。卒業生 は、「成人喘息コンサルタント」の称号が授与され、日本の全県に喘息患者会を作る先頭に立ってきました。喘息大学は教育により、重症度を改善し、血液の検 査結果も改善することを実証してきました(図1)。これまでは、良くなると医師の前から患者さんが消えるのが普通でした。喘息大学では、患者さんは四年間 で最大限に改善するとともに、卒業後もほかの患者さんを良くするために手伝ってくれるようになりました。それを通じて一層病状が改善・回復していくことが 分かったのです。
 民医連ならではのこのとりくみは、「喘息治療に新しい見地を開いた」として学会で評価されました。(写真1)喘息の患者さん達は自分が賞をもらったよう なものだと、とても喜んでくれました。この喘息大学は、民医連が生んだ「患者教育」と「共同の営み」の典型の一つなのです。

Medi-Wing 第3号より

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