Medi-WIng

2000年1月1日

医療研究室 早期癌は切らないで治す

北海道民医連 内沢政英医師
【北海道勤医協中央病院 内科】

 

medi-wing02_01 medi-wing02_02 medi-wing02_03
第1段階:診断の再確認 第2段階:マーキング 第3段階:HSE局注
medi-wing02_04 medi-wing02_05 medi-wing02_06
第4段階:全周性の切開 第5段階:切除 第6段階:回収および
切除後の胃内観察

「胃を切除しないで治すことができないのでしょうか」切実な患者さんの声にこたえたERHSE。最新技術を患者の立場にたち、生かしてきた北海道民医連のとりくみをご紹介します。

***

 日本の早期胃癌治療は外科手術が確立している。しかし、胃を切除した人々の六割は社会復帰できない。なんとか胃を切 除しないで治すことができないのかという声が患者から寄せられた。そこで、我々の先輩である外科の平尾雅紀医師(現中央病院副院長)を中心として研究が進 められた。
 その結果、粘膜内癌で病変内に消化性潰瘍がなく、分化型線癌であれは内視鏡を用いて病巣を完全に切除すれば、外科治療と同等の効果が期待できる方法が開 発された。その方法がERHSE(HSE局注を併用した胃粘膜切除術)である。一九八五年五月よりこの方法で治療が開始された(図を参照)。現在では、胃 癌の内視鏡治療の代表的な治療法の一つとして、消化器内視鏡学会でも認められている。
 また北海道勤医協では、内視鏡が普及しつつあった一九六〇年代より10数カ所ある診療所で内視鏡による胃癌検診がすでに開始されていた。(これだけでも 画期的なことである)。胃癌を早期に発見し治療しようというものであった。この検診には、科をとわず多くの医師が参加した。現在も消化器の医師を中心に、 研修医も参加し続けている。この努力の結果、また日常診療のなかで内視鏡治療の適応となる症例が多数発見された。一九九四年四月までに約一二〇〇人にこの 治療が施行された。全胃癌の約二〇%、粘膜内癌の約五〇%以上がこの方法で治療された。この数値は驚くべき成果である。
 さて、これがなぜ達成できたかということであるが、民医連であったからということにつきる。患者の立場にたつ民主的集団医療の成果なのである。技術も一 人歩きすることなく生かしてきた成果である。そして北海道民医連だけではなく、全国の民医連からこの技術を修得するためにたくさんの医師が研修にきてい る。
 我々の今回の紹介は民医連医療のごく一部である。民医連医療の成果に確信し、ぜひ多くの医学生の参加を期待します。

Medi-Wing 第2号より

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ