アスベスト対策

2005年7月15日

アスベスト被害者の掘り起こしと救済にとりくみ、環境への拡散の防止と予防措置の拡充を求めてたたかおう

2005年7月15日
全日本民医連第18回理事会

 7月1日の石綿障害予防規則の施行を前後して、いくつかの建材メーカーや造船会社でアスベストによって中皮腫、肺がんなどに罹患し死亡した被害者数などが公表され、社会問題となっています。

 アスベストは防熱・耐火性にすぐれ摩耗に強い安価で加工しやす い材料であったため、アスベストを使用した製品は3,000種類に及ぶと言われるように、艦船、機関車、水道管、製鉄・化学工場の断熱・保温、自動車のブ レーキライニング、壁や天井板・瓦などの建材、接着剤など広範囲に使われてきました。70年代から90年代にかけて多くのアスベストが輸入され、多い年は 30万トン以上になりましたが、今後10年間で建設解体現場から4,000万トンの石綿含有廃材の排出が予定されるなど、大きな問題となることが指摘され ていました。8割がアスベストの曝露が原因と言われる中皮腫について、2000年から40年間に10万人の胸膜中皮腫による死亡者がでるという予測もあり ます。今後、解体などによるアスベストの飛散により、職域だけでなく地域的にも被害が広っがていくことに注意を払う必要があります。

 しかし1995年以来、中皮腫で亡くなった方は6,060人に 及びますが、労災認定された方は284人(4.7%)に過ぎません。中皮腫の約8割がアスベストに関する業務と関係があるといわれていることと大きな乖離 があります。この原因は、曝露と発症の時期が大きくずれることや、就業中の労働者に対する教育が不十分であったこと、医療機関での職歴把握が十分行われて いないこと、さらに労災申請の援助活動が不十分なことなどですが、これらが相俟って労災認定をむずかしくしています。さらに家族で労働者の作業衣の洗濯で 曝露して罹患した人、地域の人々などは労災補償の枠に入らないことも大きな問題です。

 この問題を重視して建設関係の労働組合や研究者、いくつかの民 医連事業所などが労災認定など被害者の救済と労働者への教育活動、予防活動を進め、国、企業にアスベストを規制するよう働きかけてきました。しかし、ドイ ツでは1943年にはアスベストに関連する肺がんや中皮腫を労災認定する補償制度が確立していますし、遅くとも1964年ごろにはアスベストの発がん性、 中皮腫との関連は分かっていましたが、国はアスベストの規制を本格的には行ってきませんでした。1995年にやっと有害性の高い茶石綿、青石綿の製造・使 用禁止にしましたが、アスベストを「原則禁止」としたのは昨年、2004年でした。危険であることを承知しながら使用し続けた企業、規制しようとしなかっ た国の責任が問われています。

 アスベスト被害者の掘り起こしと救済にとりくみ、環境への拡散 を防止し予防措置の拡充を求めてたたかうことが求められていますが、九州社会医学研究所が中心になって福岡でアスベスト問題での電話相談活動にとりくむな ど、働く人々、地域の人々の不安や要求に応える活動が始まっています。ある病院ではカルテを調べると中皮腫で亡くなった患者が20人を超えていることが明 らかになっています。この問題では医療機関の役割は大きなものがありますが、国や大企業とたたかい、職域、地域で人々の健康を守ることは、民医連事業所に 期待されている役割であり、まさに民医連の出番です。当面、以下のことにとりくみましょう。

1.患者の掘り起こしや相談活動、健康被害を明らかにする健診や日常診療の中でアスベスト被害を見逃さないとりくみをすすめるための体制を事業所、県連で作りましょう。

2.当面、相談会、電話相談を施行し、地域の人々からの相談窓口を設置しましょう。

3.全国の病院で、中皮腫および肺がんについてアスベストの曝露によるものかどうか、カルテによる調査を一斉に行いましょう。

4.労働組合や地域の相談活動や健診活動等の要望に積極的に答えていきましょう。県や地域段階では、働くもののいのちと健康を守る地方センターや労組、弁護士団体などとともにネットワークを作り、共同したとりくみを前進させましょう。

5.当面、行政の相談窓口を充実させること、健診などの費用を出させることなどを要求し、自治体、企業、国への働きかけを強めましょう。

6.労働災害被災者の救済を進め、地域での被害者の救済とアスベストの拡散を防ぐため、公害としての側面を重視し、多くの団体、住民によびかけ、大気汚染公害でのとりくみのように、国、大企業の責任を問うたたかいを前進させましょう。

7.全日本民医連は対策本部を設置し、とりくみの交流を図るなどして、全国的にたたかいを前進させます。

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