民医連新聞

2013年12月16日

介護保険見直し  影響深刻 全日本民医連が予測調査

  全日本民医連介護福祉部が介護現場に呼びかけて行った「予防給付見直しによる影響予測調査」のあらましが明らかになりました。社会保障・税一体改革に沿っ て政府がすすめようとしている制度見直しが、高齢者に深刻な影響を与えることを示す内容。民医連ではこの結果を年内に発表し、二〇一四年の通常国会に向け た運動につなげてゆくことにしています。林泰則理事に聞きました。(木下直子記者)

 厚生労働省が社会保障審議会・介護保険部会に示した見直し案は「要支援」に認定された高齢 者が使う介護予防サービス(予防給付)のうち、訪問介護と通所介護を、市町村の「地域包括推進事業(仮)」として移行させると打ち出しました。費用(単 価)を低く抑え、介護内容や運営基準、利用者負担などはすべて市町村まかせ、介護の質の低下や自治体間格差が懸念されます。しかもボランティアの対応でも 可能としています。
 また通所介護(デイサービス)を重度化予防に絞る、訪問介護から生活援助を削る「効率化・重点化」も盛り込んでいます。
 これらの見直しの影響が要支援の人たちにどう及ぶか、民医連の事業所が関わる実際のケースから予測したのが今回の調査です。最終的に一〇〇〇件規模にな る見込みですが、一二月六日段階で七五四件を分析。介護予防サービス(予防給付)の利用者全員と、「通所介護のみの利用者」「訪問介護のみの利用者」にそ れぞれ絞って検討しました。

■「閉じこもり」「状態悪化」

 予防給付を利用する人の傾向は平均年齢八一歳。男性が二八・一%、世帯構成の最多は「独居」で五三・一%でした。また認知症は八五・五%にみられました。最も使われているサービスは訪問介護(六二・三%)、その次は通所介護(四三・二%)でした。
 制度の見直しが利用者にどう影響するか、「本人の状態や病状」「生活全般」の二点で予測しました(複数回答)。状態や病状に関しては「外出などの機会が 減り、閉じこもりぎみになる」がトップで六七・四%、次いで「日常生活ができなくなり、介護度が重くなる」が五九・九%でした。
 生活面では、「会話・コミュニケーションの機会が減る」(六三・五%)、「状態・病態悪化または悪化の恐れ」(六三%)。そして、これに続き「生活全般 への意欲の低下」が六二・七%だったことも注目です。予防給付の目的の一つ「意欲を引き出す」ことと正反対の結果を招く恐れがあるのです。
 重大な問題がもう一つ。要介護認定の結果が、実際より軽く出ているというケースが三五・六%にも。認定結果をもとにした機械的な介護保障の切り分けがいかに危険かを示しています。

【訪問介護のみ利用者…家事に支障】

 訪問介護サービスだけを利用している人に絞り込むと、男性の割合が三二・五%、独居世帯が六六・九%と、予防給付の人全体と比べ高めでした。制度見直しで予測される影響として最も多く出されたのは「日常の家事に様々な支障が出る」でした(七五・三%)。

【通所のみ利用者…家族介護の負担増】

 通所介護だけを利用している層の特徴は、認知症がある人が九〇%超で全体よりやや高 く、家族同居の割合が五四・二%と圧倒的に高いことです。通所が家族介護をささえていることが分かります。 「介護離職」などの言葉もあります。通所介護 を重度予防に絞る見直しは、介護する家族をますます追い込み、介護殺人や介護心中などの事件を増やしかねません。

■介護は一体改革の先発分野

 介護保険制度の見直しは、二〇一五年実施が目指されています。
 介護は一体改革の中でも先行して見直しがすすめられている分野です。介護の改悪を食い止めることができれば、一体改革の流れそのものにもブレーキをかけ られる。介護保険改悪を許さない署名は、年末までに二〇万筆をめざして各地でとりくんでいます。

[予測される影響上位]
(状態・病状)
 閉じこもり気味になる 67.4%
 日常生活ができなくなり介護度が重くなる 59.9%
(生活全体への影響)
 会話、コミュニケーションの機会が減る 63.5%
 状態・病態が悪化する、または悪化の恐れあり 63.0%

(民医連新聞 第1562号 2013年12月16日)

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