民医連新聞

2013年12月2日

難病患者の命脅かす見直しが- 厚労省「新制度案」

 四〇年ぶりに難病対策の見直しが行われています。しかしこのほど厚生労働省が示した新制度案は、対象疾患を拡大する一方、患者の自己負担増などを盛り込んだものでした。「命を脅かす」との声が。来年の通常国会への法案提出が狙われています。(木下直子記者)

 一〇月二九日の難病対策委員会に厚労省が難病対策の新制度案を示しました。
 医療費助成の対象疾患は、約三〇〇に増える見込みです。しかし重症度の認定を行い、医療費助成対象を「一定程度(日常生活又は社会生活に支障)以上」の重症者に限定、軽症に認定された患者は原則対象外に。
 医療費負担はぐんと重くなります。世帯収入ごとの負担限度額が設定されましたが(表)、家計に占める医療費負担額の割合が五倍になる場合も(年収一六〇万円の夫婦のみ世帯‥約二%→約一〇・六%に)。
 患者が世帯の生計を主に担っている場合、負担限度額を五〇%としていた軽減措置はなくなります。また、重症患者は「自己負担なし、入院時の食費・生活療 養に係る費用は免除」という現行の例外規定も解除。自己負担が発生します。
 また小児慢性特定疾患も負担増の見込み。二〇歳を迎えたとたん、助成がなくなる移行の問題(トランジション)は手つかずです。

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難病が抱えてきた問題

 原因不明で治療方法が確立していない難病は、五〇〇〇~七〇〇〇疾患。患者総数は推定で全人口の三~五%とみられ、誰が発症してもおかしくありません。
 療養が長期に及び、就労や日常生活にも支障があるため、患者や家族には経済的負担や介護の負担が重くのしかかっています。
 しかしこのうち国や自治体が医療費を助成している「特定疾患」はわずか五六。難病対策の基本法はつくられないまま、医療費助成の予算は「治療研究事業」として出ていました。
 患者らは、対象疾患の拡大や治療法の研究、すべての難病への医療費軽減策、生活援助など、総合的な支援制度を求めてきました。
 患者が難病対策の議論に参加し、今年一月に合意した改革「提言」は「難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社 会の実現を目指す」という基本理念を掲げました。新制度案は、これとはほど遠い内容。対象疾患を広げるが予算は抑制、「難病患者どうしが負担せよ」という 方向性です。

患者の不安つのる

 「負担増なら在宅療養は難しい。子どもたちと生活するため人工呼吸器をつけて生きる道を選 んだことを後悔しています」。二人の小学生を持つALSの女性のメッセージを患者会の仲間が紹介しました。「制度の基本理念は素晴らしい。しかし法案は 『公平性』の言葉で患者の命を脅かす」。
 一一月九日に四〇〇人で開かれた難病・慢性疾患全国フォーラム二〇一三(主催:同実行委員会)。難病患者の実態を発信し、制度改善や社会的な理解につな ごうと疾患別や地域を超えた患者団体が集い、二〇一〇年から毎年開いています。
 厚労省担当者や各党議員を前に、新制度への不安が次々と出ました。参加者で確認した特別決議は、厚労省案の問題点を指摘し、すべての難病患者・家族により良い制度になるよう「強く要望」するものでした。

(民医連新聞 第1561号 2013年12月2日)

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